辛かった過去、今の幸せ

辛かった過去、今の幸せ



私は少し前まで人形だった。昔ドレスローザで人形にされた時のことは今でも鮮明に覚えている。

そうあれは12年前‥‥

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12年前 ドレスローザ

赤髪海賊団はドレスローザを訪れていた。強い剣闘士がいるという噂を聞きつけて一度見てみたいとやってきたのだが、ウタは興味がなかったので町を見てくると集まる時間を決めてひとり別行動をしていた。

しばらく町を散策していると地下へと降りていく階段を見つけた。降りるのは危ないかとも思ったが冒険心を擽られて下へと降りていくとそこは交易所だった。辺りを見ながら進んでいくと人影が見え思わず荷物の陰に隠れて様子を見ていると海賊と取引をしているようだった。

少し話を聞いたがこれ以上首を突っ込むのは危ないと感じ戻ろうとした時、ウタは後ろから声をかけられた。


「何してるのこんなところで?」

「っ!えっと‥ちょっと道に迷っちゃって‥」

「ふ~ん。あなたこの国の子じゃないよね?」


ウタと同い年くらいの女の子が話かけてきた。


「うん。昨日の夜この国に着いたの、それで町を見てたんだけど迷っちゃって。戻る道しらない?」

「知ってるけどあなた、さっきの会話聞いたの?」

「聞いたと言うか聞こえちゃったけど」

「そっか‥‥なら仕方ないね」


ウタは女の子の言葉に寒気がして少し離れたが女の子はウタに近づいてきた。


「若に言われてるんだ、たとえ子供でも取引現場を見られた人をそのままにするなって。だから、ごめんね」

「え!?待って!」

ポンッ


女の子に触れられた途端にウタは自分の体に違和感を覚えて手を見ると人の手ではなく人形の手になっていて視界も低くなっていた。


「え?なにこれ?ねぇ!戻してよ!」

「五月蠅いな~。下手に喋られると面倒だから”喋るの禁止”」

キィ!‥‥キィ?”ちょっと!‥‥え?”

「じゃ私行くからね。ばいばい」

キィ!”待って!”


女の子はそのままウタを置いてどこかへと行ってしまった。ウタは自分の状況がわからずにパニックになっていたが徐々に落ち着きとりあえずシャンクス達と合流しようと船に戻りだした。


”シャンクスなら何とかしてくれる!”


そう思って移動していたが人形の体が思った以上に動き難く思ったよりも時間がかかってしまい船に着くことには約束の時間になっていたが、船の近くにシャンクスを見つけてウタは足にしがみついた。


キィ!”シャンクス!”

「ん?なんだ?この人形」

キィキィ!”シャンクス!私だよ!ウタだよ!”

「お頭、その人形どうしたんで?」

「おぉベック。なんか急に抱き着かれてな」

キィィィ‥‥”駄目だ気付いてくれない。でも私が戻ってないからきっと‥”

「お頭!全員乗り込み終わりました!」

キィ?‥”え?‥なんで‥私ここにいるよ”

「わかった!悪いな、うちにはお前みたいな人形をもらって喜ぶような娘はいないんだ」

キィ‥‥”何‥言ってるのシャンクス‥”


ウタはシャンクスとクルーの言葉に絶望した。誰もウタがいないことに気づいていないどころか元々いなかったかのように会話していたからだ。シャンクスは人形”ウタ”を足から離すと近くの樽の上に置いて頭に手を置いた。


「お前も家に帰れ、家族が待ってるだろ。じゃあな」

キィ‥‥ギィ!”シャンクス‥‥‥いや!待って!”


ウタは急いで樽から降りてシャンクスを追いかけ、なんとか船に乗り込む寸前で右足にしがみついた。


「おい。しつこいぞ」

ギィィィィ!ギィィ!”嫌!置いていかないで!捨てないで!”

「‥‥‥」

ギィィィィ!ギィィ!!”1人にしないでよシャンクス!‥お父さん!!!”


人間のウタであれば涙と鼻水で顔が濡れていただろう、しかし今ウタは人形のため涙も鼻水も出ることはなかった。

シャンクスは必死にしがみつき泣き叫ぶように音を出す人形から目が離せなかった。何か大切なことを必死に訴えかけているよう人形を見ていると心の中でもう一人の自分が”置いていくな!”と叫んでいるような気がしてシャンクスは頭を掻くと


「あぁぁぁ!わかったわかった。連れて行ってやるからそんなに喚くな!」

キィィ‥‥”シャンクス‥‥”

「ほら」


シャンクスは左手を人形”ウタ”の前に持ってきて、人形”ウタ”はその左手からよじ登り肩に顔を埋めた。


キィ‥キィ‥”シャンクス‥シャンクス‥”

「連れてくのか?」

「とりあえずフーシャ村までは連れて行こう。あとはそれから考える」


シャンクスは人形”ウタ”が落ちないように左手で支えて船に乗り込むとヤソップが揶揄いだした。


「ん?なんだシャンクス。そんな趣味があったのか?だったらもっと早く言えばいろいろ作ってやるのによ。はははは!」

「「「ぎゃはははは!」」」

「うるせぇ!懐かれただけだ!それより出航だ。フーシャ村に帰るぞ!」


ドレスローザを出航してしばらくてライムジュースがシャンクスの元にやってきた。

人形”ウタ”はシャンクスにしがみついたまま離れなかったためそのままにしていた。


「お頭ちょっといいか?」

「どうした?」


船内に行くとある部屋の前に連れていかれた。


「この部屋なんだが、とりあえず中を見てくれ」

ガチャ

「これは子供部屋か?うちに子供なんていないはずだぞ、何であるんだ?」

‥‥キィ”‥‥私の部屋”


そこはウタが使っていた部屋だったが、シャンクス達はそのことを忘れているため突然子供部屋があり困惑していた。


「調べたところ女の子が使ってたようだが、どうする?」

「‥‥とりあえずフーシャ村に着いたら荷物をまとめてマキノさんにでも預かってもらおう。それまではお前の部屋はここだ」


そう言うとシャンクスは人形”ウタ”を離しベットの上に置いた。


「フーシャ村に着くまではここを自由に使ってくれ。あと扉は開けておくようにしておくいつでも外を歩けるようにな」


そう言うとシャンクス達は部屋を後にして、人形のウタだけが部屋に残された。


キィ‥‥”なんで誰も覚えてないの‥‥”


なんで?どうして?と考えているといつの間にか夜になっていて、甲板の方から笑い声が聞こえてきて開いた扉をノックされた。


コンコンッ

「おい、宴をしてるんだがお前も来るか?」


シャンクスが部屋にやってきて声をかけてきた、いつもであれば皆のところに行き歌を歌って宴に参加するのだが今の赤髪海賊団に自分の居場所がないと思ったウタは首を横に振るとシャンクスは”そうか、来たくなったらいつでも来い”と言い部屋を後にした。

ウタは窓から見える夜空をじっと見ていた。

いつの間にか宴も終わり船内は静寂に包まれる。


”そっか‥‥今の私は眠れないんだ‥‥お腹も減らないし寒くもない‥本当にただの人形なんだ‥”


ウタはベットの上で横になり何も考えずぼーっとして長い夜を過ごした。

ーーーーーーーーーーーーーー

数日後

ウタは特に何をするでもなく窓際からずっと外を眺めていた。シャンクスは度々部屋の様子を見に来ては人形”ウタ”を少し眺め部屋を後にしていた。


「お頭」

「ベックか。どうした?」

「あんまり浮かない顔てたんで。またあの部屋に行ったのか」

「あぁ。どうしても気になってた。子供のいないこの船にいきなり子供部屋があるのはあまりにも不自然だ。それにあの部屋最近できたもんじゃないし何年も使われてる‥」

「‥あまり深く考えすぎない方がいい」

「‥‥そうだな。もうすぐフーシャ村に着く、あの人形はルフィにでも渡そうと思う」

「まぁルフィなら動く人形ってことで喜ぶかもしれないか」


しばらくしてフーシャ村に着くとシャンクスが再び部屋を訪れて人形”ウタ”を抱き上げて外に向かい他のクルーは部屋の片づけを始めた。

港にはルフィがシャンクス達の帰りを喜び出迎えに来ていた。


「お帰りシャンクス!旅の話聞かせてくれよ!」

キィ‥”ルフィ‥”

「あわてるなルフィ。あとでたっぷり聞かせてやる」

「ところでシャンクス。その人形なんだ?」

「あぁこれはお前への土産だ」

「人形って俺女じゃねぇぞ」

「そう言うな。こいつはただの人形じゃなねぇ、意思のある動く人形なんだ。ほれ」


そう言うとシャンクスは人形”ウタ”をルフィに渡してルフィはまじまじ人形”ウタ”を見てた。

複雑な思いだったがウタはとりあえず動いておこうと右手を挙げた。


キィ

「わぁ!ほんとに動いた!」

「だっはっはっはっ!面白れぇだろ?大事にしろよ」

「うん!ところでこいつ名前とかあんのか?」

「名前か‥‥特にないからルフィが付けてくれ」

「わかった。あとで考えとく。それより早く話聞かせてくれよ!」

「わかったわかった。じゃあマキノさんの店に行こう」


ルフィは左手で人形”ウタ”を抱き締め、右手でシャンクスを引っ張りマキノの店に向かった。


「あら船長さんおかえりなさい。ん?ルフィ、そのお人形は?」

「シャンクスにもらったんだ。動くんだぜこいつ」


そう言うとルフィはカウンターに人形”ウタ”を置くと人形”ウタ”はアキノにお辞儀をして右手を挙げた。


キィ

「へ~本当に動くのね。こんにちは、私はマキノよろしくね」

「そうだマキノさん一つ頼みがあるんだが」

「なんですか?」

「うちの船に何故か女の子の服とかがあってな、預かってもらえないか?」

「変ですね。船長さんにの船に女の子なんて乗ってないのに。構いませんよ預かります」

「助かるよ」

「シャンクスに娘なんていたのか?」

‥‥キィィ”‥‥やっぱりルフィもマキノさんも私を覚えてないんだ”


カウンターの上でしょんぼりしている人形”ウタ”を見たルフィは人形”ウタ”の頭を撫でた。


「どうした?」

キィィィ‥”ルフィ~”


人形”ウタ”はルフィの元に歩いていきルフィに抱き着きルフィも抱き締めた。


「なんだルフィ、もう懐かれたのか?」

「なんか、落ち込んでる気がした」


話をしていると赤髪海賊団のクルー達も酒場にやってきて酒を飲みながらビンクスの酒を歌いだしマキノは手拍子をし人形”ウタ”はカウンターに座り静かに体を横に揺らしているとルフィが話しかけた。


「ん?お前歌が好きなのか?」


ルフィの質問に人形”ウタ”はコクリと頷くとルフィは何か思いついたようで両手で人形”ウタ”抱き上げた。


「決めた!お前の名前!」

キィ?”え?”

「ウタ。お前はウタだ!」

「ほぉいい名前じゃないか。よしお前ら!ウタの命名の記念に宴だ!」

「「「おぉー!」」」


ルフィはしっしっしっと笑い、シャンクス達は宴を始めた。

ウタは誰も覚えていないはずの自分の名前を再び呼んでもらえたことが嬉しくなりルフィに抱き着き顔をルフィに擦り付けた。


「擽ってぇよウタ~」

キィ!キィ!キィ!”ルフィ!ルフィ!ルフィ!”


その後、ウタはルフィから離れず寝るときもルフィはウタを抱き締めて眠り、ウタはルフィの鼓動を聞きながら夜を過ごした。

次の日からルフィはウタを右肩に乗せるようになりいつも一緒にいるようになった。森入ったり崖を登るときもウタを右肩に乗せてたまに話しかけながら楽しそうにしていて、ウタもそんなルフィにほんの少しずつ心の傷が癒えていくのを感じながら毎日楽しんでいた。

人形の体なので破れたり汚れたりした時はマキノに縫ってもらったり体を洗濯してもらい干されたりもしていた。

そんなルフィとウタには1日一度必ずすることができた。


「ウタ!今日もトランプで勝負だ!」

キィ!”望むところよ!”

「またやるのか。毎日毎日飽きないな」

「ふふふ、可愛いじゃないですか」

「今日はババ抜きだ!」


毎日ルフィはウタと何かしらの勝負をするようになった。とはいえ人形のウタと勝負するにも体を使った勝負ができないためトランプなどのゲームで勝負していた。


「ん~~~~~~~こっちだ!だーーー!」

キィ‥‥‥キィ!”あたしの番‥‥‥こっち!”

「あーーー!」

キィィ♪”私の勝ち♪”

「だっはっはっはっ!また負けたなルフィ」

「ウタ!もう一回勝負だ!今度は負けね!」

キィキィィィ♪”出た、負け惜しみ~♪”両手を顔の横でふりふり

「負け惜しみじゃないぞウター!」


そのやり取りに酒場にいた赤髪海賊団の大笑いし、そんな彼らにルフィは”笑うな!”と叫ぶのが毎日のお決まりになっていた。

後日ルフィはレッド・フォース号の艦首に上り手にはナイフを持っていた。ウタはシャンクスの肩に乗りルフィの様子をうかがっていた。


「もうあったまきた!証拠を見せてやる!」

「だっはっはっ!おう、やってみろ!」

キィ!キィ!”シャンクス!止めてよ!”

「心配するなウタ、どうせいつものことだ」


シャンクスを叩いて止めるようにウタがアピールするが、いつもの悪戯だろうと高を括っていたシャンクスは気にしていなかった。

そう、ルフィが目元をナイフで刺すまでは


「ふん!」ブス!

「「「な‥‥」」」

ギィ!”え!”

「いっっってぇ~~!!!」

「バカ野郎何やってんだ!ホンゴウォォォォ!!」

ギィィィィ!!”ルフィ~~~!!”


すぐにホンゴウが駆け付けルフィの手当てを行いマキノの酒場に移動した。


「あ~~痛くなかった」

「嘘つけ!バカなことすんじゃねぇ!」

「そうよルフィ。ウタちゃんにも心配かけて」

キィ‥キィ‥キィ‥”バカ‥バカ‥バカ‥”ペシッぺシッ

「悪かったよウタ~。なぁシャンクス次の航海に連れて行ってくれよ!俺、海賊なりてぇんだ!」

「だっはっはっはっ。お前なんかが海賊になれるか。カナヅチは海賊にとって致命的だぞ」

「カナヅチだって海に落ちなきゃいいんだ!それに俺のパンチはピストルみたいに強いんだ!」

「ピストル?へー‥‥‥そう」

「なんだよ!その言い方!」

キィィィ?”あれがピストルねぇ?”両手を口の前に

「笑うなウタ!」

「要するにガキ過ぎるんだよルフィ。あと10歳年取ったら考えてやる」

「ケチシャンクス。俺はガキじゃね!」

「そう怒るな。ほら、ジュースでも飲め」

「うわ!ありがとう!」ゴクゴクッ

「だっはっはっはっほらガキだ!面白れぇ!」

「汚いぞシャンクス!」

「「「「ぎゃはははは」」」」

「笑うな!」


マキノはそのやり取りの中用意していた食事をルフィの前に置いた。


「ほらルフィ。お腹すいてるでしょ」

「ありがとうマキノ。宝払いで頼む」

「ルフィ、宝払いは犯罪だぞ」

「海賊になって宝を見つけて払うから違う!」

「ふふふ。期待してるわ」

「なぁシャンクス」

「なんだ?」

「あとどのくらいこの村にいるんだ?」

「そうだなぁ。ここを拠点にして長くなるが、後2、3回航海したらここ離れて北へ向かうと思ってる」

「そっかー」

キィィ‥‥キィ?”そしたらシャンクス達と‥‥あれ?ルフィ何食べてるの?”


バキッ!と音とともに数人の男たちが店に入ってきた。


「ほほう。これが海賊か初めて見たぜ、間抜けな顔してやがる。俺はこの山賊の頭のヒグマだ‥‥が、何も店を荒らしに来たわけじゃねぇ、酒を売ってくれ。樽10個ほど」

「ごめんなさい。お酒はちょうど切らしてるんです」

「んん?おかしいな、海賊どもが飲んでいるのは水か?」

「ですから、今出ているので全部なんです」


そう言うとシャンクスはカウンターに置いてあった未開封の酒瓶を渡した。


「これは悪いことをしたなぁ。これしか残ってないがよかったらやるよ」

「‥‥‥」

バリィン!


ヒグマはシャンクスが手渡した酒瓶を殴り割った。


「おい貴様、ナメたマネすんじゃね。俺を誰だと思ってる」

「あーあー。床がびしょびしょだ」

「俺の首には八百万ベリーがかかってる。てめぇのような生意気なやつを56人殺した第一級のお尋ね者だ。わかったら今後‥‥」

「悪いなマキノさん。雑巾あるか?」

「あ、いえ私が」

ガシャン!


ヒグマはカウンターに置いてあったジョッキや皿を剣で振り払った。


「掃除が好きなようだな。これくらいの方がやりがいあるだろう。酒がねぇなら話にならねぇ。お前ら、別の町に行くぞ。じゃあな腰抜けども」


そう言うとヒグマは手下を連れて酒場を後にし、しばらく酒場は静寂に包まれた。


「‥‥ぷっ」

「「「「ぎゃはははは」」」」

「派手にやられたな、お頭!」

「だっはっはっはっ」

「何笑ってんだよ」

キィィ”ル、ルフィ”

「あんなのカッコ悪じゃないか!なんで戦わないんだよ!いくら相手が大勢で強そうだからってあんなことされて笑ってるなんて男じゃないぞ!海賊じゃない!」

「‥‥気持ちはわからんでもないが、ただ酒をかけられてだけだぞ?」

「ぐぐぐっもう知らん!」

キィ!”ルフィ!”

「待てよルフィ」

「もう知らん!弱虫が移る!」


ルフィは起こったまま入口に向かい歩き出をシャンクスは右手をつかんだが


びよーーーーん

「ん!?」

「ん?」

ギィ!?”え!?”

ぶぅぅぅぅ!!

「手が伸びた!?」

「まさかお前!?」

「なんだこりゃぁぁぁ!」


ラッキールウは宝箱を確認すると


「ない!」

「「「「なにぃぃぃ!!??」」」」

「敵船から奪ったゴムゴムの実が!ルフィお前まさかこんな果物食ったんじゃ!?」

キィ!”あ、さっきルフィが食べてたやつ!”

「うん‥デザートに、まずかったけど‥」

「ゴムゴムの実はな!悪魔の実とも呼ばれる海の秘宝なんだ!食えば全身ゴム人間!そして一生泳げない体になっちまうんだ!」

「えぇぇぇ!?うそぉぉぉぉぉぉ!?」

「バカやろーーーーーー!!!!!」

キィ”ルフィが能力者になっちゃった”

ーーーーーーーーーーーーーー

数日後

シャンクス達がまた航海に行き、ルフィはウタと一緒にマキノに頼まれて買いものして戻ってきてジュースを飲んでいた。


「船長さんたちが航海に出て長いわね。そろそろ寂しくなってきたんじゃない?ルフィ、ウタちゃん」

キィ”大丈夫”右手をあげた

「ウタがいるから全然寂しくないぞ。それに俺許してないんだ。あの山賊の一件!俺、シャンクス達をかいかぶってた!もっと格好いい海賊って思ってたのに幻滅した!」

「そうかしら。私はあんなことされても弾きで笑っていられる方がかっこいいと思うけど?ねぇウタちゃん」

キィキィ”そうそう”コクコク

「2人ともわかってねぇな。男にはやらなきゃならねぇ時があるんだ!」

「ふふふ。そう‥‥ダメね私たち」

キィ”ねぇ”


そんな話をしていると入口の扉が開き


「邪魔するぜぇ」

「げっ!」

ギィ!”げっ!”

「今日は海賊どもがいねぇんだな静かでいい‥また通りかかったんで立ち寄ってやったぞ。‥‥何ぼーっとしてる俺たちは客だぜ?酒だ!!」

ーーーーーーーーーーーーーー

「村長さん大変!」

「どうしたんじゃマキノ?そんなに慌てて?」

「ルフィとウタちゃんが山賊たちに!」

ーーーーーーーーーーーーーー

「おもしれぇ人形だ。この小僧もおもしれぇ体してやがる」

ギィ!ギィ!”離せ!離せ!”

「くそぉ!俺に謝れ!それにウタを離せ!この野郎!!」

「ゴム人間に動く人形、見世物小屋に売り飛ばしゃ結構な金になりそうだ」

「ウタを離せ!うわああああ!!!」

「しつこいぞ!ガキ!」ドスン!

「人が気持ちよく酒飲んで語らってたのに、何か気に触ること言ったか?」

「言った!謝れ!ちくしょう!!」

「その子たちを離してやってくれ!頼む」


マキノが村長を連れてきて山賊に土下座をし謝罪した。


「ルフィとウタが何をやったか知らんが、あんた達と争う気はない、失礼でなければ金は払う!その子たちを助けてくれ!」

「村長‥‥」

キィ‥”村長さん‥”

「さすがは年寄りだな、世の中の渡り方を知ってる。まぁこの人形は返してやるよ」ぽいっ

キィ!”きゃ!”

「ウタちゃん!」


ヒグマに投げ捨てられたウタをマキノがキャッチしがルフィからは足をどけなかった。


「だがこいつはだめだ!もう助からねぇ、なんせこの俺を怒らせたんだからな!」

「悪いのはお前らだ!この山猿!!!」

「よし、売り飛ばすのはやめだ。やっぱりここで殺しちまおう」

「ルフィ!!」

キィィ!”ルフィ!”


「港に迎えがないんで何事かと思えば、いつかの山賊じゃないか」

「船長さん!」

キィ!”シャンクス!”


「ルフィ、お前のパンチはピストルのように強いんじゃなかったのか?」

「‥‥うるせぇ!!」

「何しに来たか知らんが、それ以上近づくと打ち殺すぜ、腰抜け」


しかしシャンクスは歩みを止めず近づいた。


「てめぇ聞こえなかったのか!?それ以上近づくな頭吹き飛ばすぞ!」

「ピストルを抜いたからには命を懸けろよ」

「何言ってやがる」

「そいつは脅しの道具じゃねぇって言ったんだ」


バン!!

シャンクスにピストルを突き付けた山賊の頭をラッキールウが撃ちぬいた。いきなりのことに山賊だけでなく村長やマキノは驚きを隠せなかった。


「やりやがったな!なんて卑怯なやつらだ!」

「卑怯?何甘ぇこと言ってんじゃねぇ。聖者でも相手にしてるつもりか?」

「お前らの目の前にいるのは海賊だぜ」

「だっだいたい。てめぇらに用はねぇぞ!」

「いいか山賊‥俺は酒や食い物を頭からぶっかけられようが唾を吐きかけられようがたいていの事は笑って見逃してやる。だけどな、どんな理由があろうと!俺は友達を傷付ける奴を許さない!!」

「シャンクス‥‥」

キィ‥”シャンクス‥”

「はっはっはっはっ許さねぇだと!?海でプカプカ浮いてヘラヘラやってる海賊が山賊様にたてつくとは笑わせる!!ぶっ殺しちまえ野郎共!!」

「「「うおおお!!死ねーー!!!」」」

「俺がやろう‥十分だ」


ベックマンは1人で十数人の山賊を蹴散らしヒグマに銃口を向けて煙草に火をつけた。


「うぬぼれるなよ山賊‥ウチとやりたきゃ軍艦でも引っ張ってくるんだな」

「‥つええ‥」

‥”さすがベックマン、強い”

「待てよ!仕掛けてきたのはこのガキだぜ!!」

「どの道賞金首だろう」

「‥‥ちっ!!来いガキ!」

「うわ離せ!クソ!」

「煙幕だ!」

キィィ!”ルフィ!”

「ルフィ!?しっしまった!油断した!どうしようみんな!」

「うろたえるんじゃねぇ!お頭この野郎!みんなで探せばすぐ見つかる!」

「‥ったく、この人は‥ウタ、お前はマキノさんと待っててくれ」


ウタは山賊に乱暴に扱われてほつれてしまった部分をマキノに直してもらいながら酒場で待つことになった。


キィ‥”大丈夫かなルフィ‥”

「大丈夫よウタちゃん。船長さん達が必ず見つけてくれるわ。‥‥よし、これで終わり」

キィ”ありがとうマキノさん”ペコ

「どういたしまして」


マキノはウタを縫い直しカウンターに置くとウタはお礼をしてシャンクス達を待っていると外が騒がしくなっているのに気付いて、ルフィの鳴き声とホンゴウ達の慌てる声が聞こえたウタはカウンターから飛び降りて店の外に出た。そこで見たのは泣いているルフィと左腕がなくなっているシャンクスだった。


ギィィ!”シャンクス!”


数日後

赤髪海賊団は船出の準備し、ルフィはウタを右肩に乗せてシャンクスと話していた。


「この船出でもう帰ってこないって本当!?」

キィ‥”そんな‥”

「随分長い拠点だったがついにお別れだ。悲しいだろ?」

「うん。悲しいけど、もう連れて行ってなんて言わねぇよ。自分でなることにしたんだ海賊に」

「べー。どうせ連れてってやんねーよ。お前なんかが海賊になれるか!」

「なる!俺はいつか、この一味に負けない仲間を集めて!世界一の財宝を見つけて!なってやるだ!海賊王に!!!」

「ほう。俺たちを超えるか。じゃぁ、この帽子をお前に預ける。俺の大切な帽子だ、大事にしろよ。いつか必ず返しに来い立派な海賊になってな。ウタ、ルフィのことをよく見ててくれ。ルフィはすぐに無茶をするからな」


帽子をルフィに被せるとシャンクスはウタを見て話しかけ、2人から離れて船へと向かった。


「あいつは大きくなるぜ」

「ああ、なんせ俺のガキの頃にそっくりだ」


シャンクス達はレッド・フォース号に乗り込み出航しルフィとウタは船が見えなくなるまで港にいた。

船が見えなくなるとウタは寂しくなりルフィの首元に頭を擦り付けるとルフィは左手でウタの頭を撫でた。


「ウタ、寂しいのか?」

‥キィ”‥うん”コクッ

「俺も寂しいけどよ。もっと鍛えて海にでシャンクス達に会いに行こうぜ!ウタも一緒に!」

‥‥キィ!”‥‥うん!”


それから10年間はあっという間に過ぎて行った。

ガープにダダンのところに連れていかれ。エースとサボの出会いと別れを得てルフィは17歳になった。


「ウタちゃん。カウンターの拭き方終わった?」

キィ!”はい!”

「ふふふ。ありがとう」


ウタは雑巾を手渡すとマキノはウタの両手を消毒した。


「いよいよ明日ね」

キィ?”明日?”

「あれ!?ルフィから聞いてないの!?」

「ウ~~~タ~~~~!!」


マキノとウタが話をしているとルフィは走って酒場にやってきた。


「ウタ!準備できたか!」

「ちょっとルフィ!ウタちゃんにちゃんと話したの?」

「あれ?言ってなかっけ?明日出航するぞ!」

ギィ!?”はぁ!?”

「ほら言ってないじゃない」

「悪かったなウタ。言ったと思ってたんだけどよってなんでハリセン出してんだ?」

キィィィ”なんでそんな”


ウタはマキノに作ってもらったリュックからハリセンを取り出しルフィの顔めがけてカウンターからジャンプするとハリセンを思いっきり振りぬいた。


ギィィィィ!!”大事なこと言わないの!!”

バシィィン!!

「ぎゃぁぁぁぁ!!!」


翌日

「とうとう行っちゃいましたね。村長さん」

「村の恥じゃ海賊を出すなんぞ。しかも人形を連れた海賊なんぞ聞いたことないぞ」

「今日は船出日和だな~」

キィ~"そうね~"


ルフィはボートを漕いで沖に進んでいると


グルルル

「出たな近海の主!」

ギィ"こいつよくもシャンクスの腕を!"

「相手が悪かったな10年鍛えた俺の技を見ろ!ウタ、しっかり捕まっとけよ!」

キィ!"大丈夫"

「ゴムゴムのぉ!ピストル!」


ズドォン!

ルフィの一撃が近海の主を吹き飛ばした。


「思い知ったか、魚め。しっしっしっ」

キィ"思い知ったか"

「まずは仲間集めだな10人は欲しいな。それと船と海賊旗。よし!行くぞウタ!」

キィ!"うん!"

「海賊王に!俺はなる!!!」

ーーーーーーーーーーーーーーー

サニー号 甲板

ウタはぼーっと空を見ながら昔を思い出していた。結構長い時間ぼーっとしていたようで心配になったのかルフィが顔を覗き込んだ。


「ウタ。またぼーっとしてるぞ」

「‥‥あ、ごめんごめん。ちょっと昔を思い出しちゃって‥」

「‥あんま無理すんなよ」

「大丈夫。ありがとうルフィ」

「おう!」


そう行ってどこかに行こうと後ろを向いたルフィの背中を昔を思い出したせいなのか置いて行かれそうになったシャンクスの背中と重なりウタは無意識のうちにルフィに抱き着いていた。


「ウタ?」

「‥‥ごめん。少しの間こうさせて」


ルフィは何も言わずウタに抱きつかれたままにしているとウタが首筋に頭を擦り付けてきたのでルフィは左手をウタの頭をポンポンッと優しく叩いた。


「人形にされた時のこと思い出してたのか?」

「‥‥‥ほんとに変なところは鋭いよね」

「何年一緒にいると思ってんだよ」

「そうだね」

”やっぱりルフィの鼓動聞いてると落ち着く‥‥それになんだか胸がぽかぽかする‥”


昔を思い出して不安になっていた気持ちがなくなり、暖かく幸せな気持ちが溢れていた。

しばらくウタはルフィに抱き着いていたが、ウソップとナミに映像電伝虫で撮れられていたのに気付き2人にウタワールドで仕返しをするのだがそれはまた別のお話。

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