赤眼の例外
息が苦しい。
私はどれだけ遠くに逃げただろうか。
異能傭兵組合。
あそこはとんだペテン師供のクソ集団だった。
「管理者……あいつのせいだ!!」
管理者のエネミー。奴が組合を私物化し、人の身体を使って悍ましいものを作ってる。
何が傭兵だ。
何が報酬だ。
結局全て踏み倒して裏切るじゃないか。
私たちは使い捨ての駒なんかじゃない。
「私の妹を……よくも!よくも!」
妹の身体は『力の異能』を入れる器として優秀だと奴は言った。
そんな理不尽な理由で私から全てを奪った。
決して許せることじゃない。
真実を公表しなきゃ。
あらゆる勢力に、奴の企みを。
他の傭兵に、組合内部の腐り具合を。
これは復讐だ。
「全部ぶちまけて、壊してやる……!!」
走れ。
走れ。
例え足が動かなくなっても。
地を這ってでも。
『────目標確認、レートB/4 コードネーム「雪豹」、殲滅を開始して』
「はっ!?」
目の前にあった建物が玩具のように破壊される。
天変地異か、驚天動地か、地面が崩れ、大気を揺らし、曇り空も二つに割れる。
「そんな………」
傭兵組合と敵対した以上、刺客を送れてくることは想定済みだった。
それでも抜けた理由は、生半可な相手なら返り討ちにできるという自負があったからだ。
生半可な相手なら。
でもこいつは違う。
「"赤眼の例外"………!!」
赤い瞳がこちらを見てる。
機械のように、眉の一つも動かさないで。じっと。
気づけば私は笑ってた。
人間、あまりにもどうしようもなくなると笑うって聞くけど。
本当だったなんてね……。
「許……して、見逃して、ください」
震える喉をなんとか絞って、自然と出た言葉がこれだ。
でも懇願しても、無駄だとすぐわかる。
アレはこちらを物としか認識してない。
ただ、ただ、私と言う反乱分子を抹消する為に動く冷徹な殺戮者。
「ぁい……いやっ……」
早く銃を構えなきゃ。
早く異能を使わなきゃ。
そう思っても恐怖で竦んで動かない。
手が震えて、
『────────』
その手が吹き飛んだ。周りの地表ごと更地にして。
痛みはない。でも、生暖かい。
「あぁ…………」
次の瞬間に身体が消えた。
もう何も感じない。
ごめんね、情けないお姉ちゃんで。
今からそっちにいくけど、会えるかな。
合わせる顔がないな……。