識らずにいれば幸せな事実

識らずにいれば幸せな事実


「後は──、」

己の体が膨らんでいく。どうしょうもなく死が迫る瞬間、停滞する世界の中で七海は見た。

(馬鹿な)

今まさに死にゆく己をみて、衝撃を浮かべる虎杖の顔が、徐々に、確かに、破顔していくその様を。

(まさか)

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まるで心の底から面白いものを見たとでも言わんばかりの喜悦を浮かべながら。

(彼は!)

それは、己を殺すこの呪霊がかつて見せたそれと同じようで──。

(違う!間違えた!最初から!全てが!!!)

七海は悟る。彼の本性を、その悪性を。これまで自身らに見せていた姿の一切が偽りであったことに。

(こいつは──!)





バァンッ!!



そこで七海の思考は断絶した。真人の手によって、彼の命はここに潰えた。

その死に様に満足など一切なく、どうしょうもなく愚かだった自らの後悔に苛まれながら、七海健人という男の人生は終着を迎えた。

唯一救いとなったのは、虎杖の喉から言葉が発せられる前に破裂を迎えられたことだろう。

それを見た虎杖は───




「ブハハハ!なんだよナナミンその姿〜」


「まるで人体模型みてーじゃん!!」


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