謎の共通点
(※一護視点)上段蹴りで吹っ飛ばされて、背中から叩きつけられた。ぐえ、と潰れた蛙のような声が出て大の字で転がる。
「っとに持続時間伸びねえな、お前」
「うるせー……」
そう言った拳西は薄ら汗をかいている程度で息ひとつ乱しちゃいねえ。それがなんだか悔しくて返事が適当になった。
「お疲れさんやなぁ、一護」
平子が差し出したペットボトルを受け取って、このままじゃ飲めねえなと起き上がろうと力を入れる。その瞬間に、拳西が頬を汚した砂埃を拭う為かタンクトップの裾を豪快に捲り上げた。
「―――………?」
露わになった逞しい腹筋の丁度鳩尾あたり。そこに薄墨色の数字が二つ並んで彫られていた。「69」というその並びを、以前どこかで見たような。
記憶を辿る。現世じゃない。少し前、そうだ、尸魂界で。面と向かって話したことはないが、恋次といたから顔くらいは覚えている。確か、名前は、そう。
「……なあ、拳西」
「あ?」
「檜佐木さんって死神、知ってるか?」
瞬間、周囲の温度が一気に下がったような気がした。誰もが息を飲んだような、そんな感覚。え、と思いながら身体を起こして拳西を見れば拳西は目を見開いて固まっていた。
「……死神?」
「あ、ああ……。どこの隊かはわかんねえけど、そう!恋次と同じ腕章みてえなの着けてたから多分副隊長で、檜佐木……檜佐木修兵さん。顔に拳西のその腹のと同じ刺青入れてたな。あと、ここに派手な三本傷が」
右眼を縦断する特徴的な傷痕を再現するために俺自身の顔をなぞると、拳西は明確に眉間に皺を寄せて他所を向く。
傷痕、と小さく呟いたような気がしたが、上手く聞き取れなかった。
「拳西?」
「……知らねえな、んな人相の悪い奴は。大体死神に知り合いなんていねえよ」
「そ、か。悪い、変な事聞いて」
「構わねえ」
そう言うと拳西はいつも通り、キッチンがあるらしい方向に足を向ける。
「飯作る。食ってくだろ、オメーも」
「お、おう」
そうか、と呟いて歩き出したきり、拳西は何も言わなかった。