謀略K&D:迫る熱に押されて(ChapterⅣ)

謀略K&D:迫る熱に押されて(ChapterⅣ)

名無しの気ぶり🦊


『さあ先行争いに入っていきます。先頭に立ったのはデューターガーデン』

『好スタートのキタサンブラックは二番手、外からはグレイトハウス。内のほうからはシャバランケ、シュヴァルグラン』


開幕から先頭に立ったのはキタサンではなく、デューターガーデン。

とにかく逃げきってやるという意思が漲っている。


『続いてツーアンドロンリー。二強の一角、2番人気サトノダイヤモンドは中団からのスタート』

『有馬記念に引き続き、3度目のG1勝利なるか』

『虎視眈々とレースの展開を疑います』


ダイヤは依然と変わらず差しを狙い中団にその息と脚を潜めている。


(ひとまず予想通り…とはいえ)


ちなみにこうなることは英寿の脳内では織り込み済み、柄にもなくレース研究もいつも以上に入念に取り組んだ甲斐があるというもの。


『さあ第四コーナー回って最初のホームストレッチ』

『先頭は大きく逃げるデューターガーデン、キタサンブラックは現在二番手!』

『さあ前半1000mを通過、タイムは58秒3』


それから間もなく1周目が終了。デューターガーデンが変わらずレースを牽引している。

素人目にもびっくりするほど距離を稼いでおり、ここから勝てるのか疑わしくなるほど。


「デューターガーデン、キタ以上の"逃げ"をうってくるとは張り切ってんな……だが」

「ううん。キタちゃんは全く惑わされず良い位置をキープできてる」

「攻める側ではなく守る側。ディフェンディングチャンピオン、その貫禄ってやつですわね」


が、英寿はもちろん、テイオーもマックイーンも動じない。

散々チームとして見慣れたからというのもあるが、それ以上に今回のキタサンが今までで一番レースをコントロールしていると感じられたから。


『かなりのハイペースで逃げています、デューターガーデン。その差は6バ身から7バ身』


(────惑わされない!!)

(去年よりもあたし、強くなってるから!!)

(積み重ねたトレーナーさんとの日々は何度だって嘘にはならない!)


本人だってそれは同様。

めちゃくちゃに離されても動じない。

今まで周りに影響されがちだったという弱点を克服、無理をせずとも勝てるまでに自信も強さも身につけた。


(必ず追いつく、だから今は自分のレースに集中!)


(あの顔つき…そうだ、それでいい。お前はお前のままで走ればいいんだ、それだけでお前は勝てる!)


掲示板に映るキタサンの冷静な表情から意図を読み取り、自身と彼女の意図が違えていないこと、自分らしい走りを発揮できていることに英寿は安堵する。

既に勝った気にさえなりそうだった。


『第一コーナーを曲がるデューターガーデン。それを追うキタサンブラック、グレイトハウス、シュヴァルグラン、シャバランケ、サトノダイヤモンドはこの位置!』 


(勝負をかけるのは…ここじゃない)

(第三コーナー手前、京都の坂。レースが動くのは…そこから!!)


とはいえ追いかけるシュヴァルやダイヤとて無策ではない。互いに差しを狙っているからか、2周目第三コーナーへの到達を虎視眈々と狙っている。


「まだ力は溜められてる、なんとか順調だね」


「菊花賞を勝てたダイヤちゃんだからこそ、ペース配分は今のところ問題なし」


無論、これは祢音がシュヴァルと、景和がダイヤと事前に打ち合わせたものである。何から何まで予想通りではないが、しかし現状は大まかに見れば問題はないといったところだ。


『第二コーナー回って集団は向こう正面へ。二番手キタサンブラック、それを追うグレイトハウス、シュヴァルグラン!』

『さあどこで動くか。サトノダイヤモンドは中団で脚を溜めています』

『まだまだ逃げるデューターガーデン!どこまで行けるのか!!』

「ハアハアハアハアッハアハアッ!」


2周目ターニングポイント、坂に入ったタイミングでついにデューターガーデンの体力が、意識が悲鳴をあげ始める。

目に見えた失速だ。


「焦りや乱れが見え始めた…そろそろだな」


(!ッ、ここ!!)

「「ハッ⁉︎」」


クラウンやサエが同様するなか、キタサンはついに前に加速する。


『おっとデューターガーデン、その差が詰まってきて!』

『キタサンブラック! 今、先頭に立ちました!! 続くサトノダイヤモンドも完全に前を射程に捉えている!!』


そのまま間もなくデューターガーデンに追いつき追い越し先頭へ。


(我慢…、まだ我慢……!!)

「いいよ、シュヴァルちゃん!」


それを見てもシュヴァルはチャンスまでは耐えることをあくまで貫く。


『淀の大歓声が17人を迎えます』


(直線で決める! 有馬記念のように!!)

(勝負はラストスパートでかける、これは決めてたからね)


そしてそれはダイヤも変わらず、あと少しの辛抱と急に飛び出したりはしない。


『さあ最終コーナーを回ったキタサンブラック、連覇に向けて2バ身のリード』


そんななかキタサンはさらに加速し、ついには2バ身差。

最終コーナだからか一気に加速をかけて来た。


「勝負だ!」

「必ず…、勝つ!」


「行けえ、シュヴァルちゃん!」


時同じくして、第四コーナーだからかシュヴァルもダイヤも迷わず溜めた脚を放っていく。


『最終直線! 全員ラストスパート!!』 


いずれにせよ、選手陣は揃って最後の直線に突入。残る力を振り絞る。

もちろんキタサンだってその走りを緩めない。


「あっ⁉︎」


『キタサンブラック先頭、しかしその末脚でサトノダイヤモンドが襲いかかる!』

『シュヴァルグランも差を詰めてきた!』


そしてそんな彼女にやはり追い縋るのはダイヤ、さらに今までで一番のキレ味で迫るシュヴァル。

僅かにだがキタサンに動揺が奔る。


「行けキタちゃん!」

「そのまま突き放せ!」


とはいえチケゾーやゴルシを見れば分かるが、それでキタサンが油断するなんてチームメンバーは誰も思っていない。


「だああああああああッ!!」

(ここで決める! 追いつく! 越せるッ!!)

(サトノさん…レースの勝ちもキタさんへの勝ちも見ているはず…ですが恐らく)


かつて自らが指導したダイヤのここまでの健闘ぶりを讃えつつ、とはいえそれによりキタサンの勝ちが今さら揺らぐともマックイーンには思えなかった。


「────いよいよ、だな」


そんな英寿のどこか嬉しさを湛えた発言を皮切りに────


「……!?」

「──────んうううううううああああああァアッ!!」

(ここからが────あたしの、本当のハイライトだあッ!!)  


────瞬間

彼女らしからぬ唸り声を上げながら炸裂する怒涛の加速


「「「「「「⁉︎」」」」」」

((キタサン…⁉︎)

((キタちゃん⁉︎))

((キタさん⁉︎))


皆が皆、彼女が秘めていた底力に愕然とする。荒々しく度肝を抜く加速だった。


「ぁっ…」

「こんな爆発力を隠してたのか、キタちゃん…」


無論、愕然としたのはダイヤも同じ。

トラブルかと思ったも

そうでなく全員スパートをかける中で、"もう一度"スパートをかけた事への驚き。

自分は既に全力なのに、この段階でまた加速した。

ありえない加速だった、それほどまでに鮮烈だった。


『な、なんと!?』

『三千メートルを走ってなお、更にスパートをかけた!!

 鍛え上げられた肉体が!!

 研ぎ澄まされた精神が!! 積み重ねた努力が!!』

『強靭に大地を蹴り上げ後続を引き離す!!』


実況の声も興奮を隠せていない。無理もない。

これほどまでに強烈で無慈悲な加速を見せつけられれば。


「以前ならいざ知らず、夢に向かって迷いなく自分らしく向かう今のキタが負ける道理はない」

「末脚のキレもペース配分も過去一だ」

「────何より」


あのドゥラメンテさえ驚く終盤加速、それを彼なりに短く解説しながら英寿は饒舌。

これだけの力をレース前に知れていたならさもありなん。


『先頭は……キタサンブラックだぁッ!!』

『大喝采の湧くゴールに向かって凌ぐかキタサンブラック!』

『差すかサトノダイヤモンド!』


そう、かつてのドゥラメンテのように終盤加速して他を引き離す。

キタサン自身が絶望させられた怪物の走りを再現したような走り。


「行けえ、ダイヤちゃんッ!!」


(負けたくない! 必ず追いつく!)

(まだまだ!──────)


夢といい、勝負前に宣戦布告した件といい

他人に乗せられなかった事と言い、これまでの集大成のようなレースが繰り広げられている。

追いかけるダイヤも気が気でなかった。


「ぁっ……!!(笑って、る…)」

(あははっ!! 行こう、ダイヤちゃん!!)


────そんななか、勝負中にも関わらず不敵に笑うキタサン。

思わず溢れた笑みに、ダイヤの脳裏に去来したのはありし日の幼馴染の後ろ姿。

小さい頃からずっと自分を引っ張ってくれていた頼もしい背中だった。────それだけで、勝てないという予感が去来するには十分だった。


「夢にダイヤモンドを巻き込んでやるくらいの図々しさ、あれは今のキタじゃなきゃ見せられない」

「あれをレース少し前の時点で伺えた時点で強さ自体は仕上がってると見て取れた」


精神面的な解説に移りながら、なおも続く英寿の担当自慢。


「そして実際油断もなく、ペースを乱すこともなく」

「だからまあ、勝てると確信できた」


これだけレース中に喋れたのは彼自身初めて。そのぐらい上手く決まったという手応えがあった。キタサンブラックという少女が持つポテンシャルを余すことなく引き出させてやれたと。

安堵にも似た心境だった。


「めちゃくちゃ喋ってる…」

(ただ、それだけキタちゃんが勝つことを疑ってなかったってこと…相当自信があったってこと)


「やるじゃん、キタちゃん!」


横で見ていたテイオーも思わず驚く彼の振る舞い、しかしそれにより自分が今ターフの中に見ている後輩の化け物っぷりを改めて認識できた。

あの時キタサンを信じた自分でいれて良かったとも。


『誰も、誰も追いつけないッ!』


とはいえ無論、それでも皆最後まで食い下がったものの誰も彼も追いつけず。


『何者も隣に並ばせることなく、1人先頭で突き抜けた!』

『圧巻の走り! キタサンブラック、16人のウマ娘を背負い大勢の歓楽へ!』

『キタサンブラック、ゴールインッ!!』


キタサンの快勝エンドか。


「────おめでとう、キタサンブラック」

「見事なサプライズムーヴだったよ」


────彼女によるある種の大記録達成をもって天皇賞(春)は誰の目にも明らかな終わりを迎えたのだった。


『キタサンブラック、春の天皇賞連覇達成ッ!!』

『前回に引き続き、前回以上の素晴らしいレースを見せましたキタサンブラック!』

『春の盾は再び王者のもとへ!』


「タイトル保守もできた、上々すぎるぐらいだな」


マックイーン同様の大記録達成。

ちなみにマックイーンは1992年で、今回は2017年を再現したレースでした

観客視点ではダイヤに勝った事が印象的も

記録的にも大記録

あの演出は、キタサンも同じ記録を達成するという示唆だったのか。

才能の塊、努力の賜物。

キタサンブラックという少女の全身全霊が炸裂したかのようなレースだった。


『二着には鋭い末脚を見せたシュヴァルグラン!!』

(クソッッッ!!!)


そして印象的な敗けを喫したのはシュヴァルも同じ。

奮闘を感じる姿

天を仰ぐ姿が悲しくも美しかった。


『サトノダイヤモンドは惜しくも3着!』

『二強対決と目されたこのレース、キタサンブラックが見事、有馬記念のリベンジを果たしました!』


「……」



ダイヤは3着、そう考えればシュヴァルは健闘したと言えるのだが、ダイヤの担当である景和はただただ驚きに呑まれていた。


「タイクーン…」

「桜井トレーナー…」


そんな彼をクラウンと道長も思わず心配する。自らの担当がああも見事に負けたのだ。ダイヤ本人と同じぐらいトレーナーのことも心配になろうというものだった。


「…負けたし悔しさはあるんだけど…あそこまでキタちゃんの強さを見せつけられたら、今回は完敗だって、英寿もキタちゃんも2人ともよく頑張ったねって思えちゃった…」

「「えっ?」」


かと思いきや、むしろ清々しささえあったようだ。あそこまで見事に引き離され勝利を掴まれたなら負けを認めたくもなってしまう。


「もちろん、凱旋門賞を目指すこと自体は変わらないけど」

「…だから2人も頑張ってね、宝塚!」


とはいえダイヤと決めた夢は変わらず。さりとて恐らく次に英寿・キタサンと激突するだろう道長・クラウンに短めだが強いエールを送る。


「ミッチー…今年の宝塚、必ず獲るわよ!」

「…言われるまでもねえ。キタサンも間違いなく出てくるだろうレース。俺たちの今までの努力をギーツとキタサンに見せつけるには打ってつけだからな」


2人も、それに応えるように今一度、彼等を超えたいと強く願ってみせる。


「ええ!」

(キタサン、浮世トレーナー。強い貴方達だからこそ、ダイヤと桜井トレーナーを下した今の貴方達だからこそ…私は、ミッチーは…勝ちたい!)


特にクラウンはその闘志を今から熱く沸き立たせるのだった。


「よっしゃ、流石アタシの弟子っ!」

ゴルシもルービックキューブのうち五面が埋まったこともあってか饒舌に。


「二人ともよく頑張ったねっ」

「ええっ!!」


テイオーとマックイーンはただ安堵しキタサンとダイヤの健闘を讃えている。


「これで一安心かな」

「いや、直後こそ油断は禁物だ。…とはいえ喜ばしいことなのは間違いない」

「飛彩さん…素直じゃないなあ」


永夢と飛彩もまた、キタサンの勝利に安心していた。

もはや王者にも程がある勝ちっぷりだったのだから


『ああ!? そしてなんと勝ちタイム3分12秒5! レコードタイムです!』


さらにさらにレコードでも新記録を更新したようで。


『タイム3分12秒5!』

『レコードタイムです! あの衝撃のウマ娘の記録を遂に打ち破りました!』


衝撃、ディープインパクトの記録を上回った能である

まさに大記録に次ぐ大記録だ。


『キタサンブラック、一番人気でファンの期待に応えて堂々五勝目!』

『レコードのおまけ付きで歴代屈指の名ウマ娘として歴史にその名を刻みました!!』


「スゴすぎでしょ……!!」


実は先程からずっと萎縮してしまっていたネイチャだが今の記録によりさらにキタサンとの差を感じてしまうのだった。


GⅠ勝利だけで凄い、ネイチャでさえ1回も勝てなかったのがGⅠレースというもの

それを五勝、かつ最速記録まで達成した

しかも春の天皇賞連覇etcetc

記録が多過ぎである


「ヤバいレースだったねえ!」

(去年より着順を上げて確かな成長を見せてくれた…)

(…あなたの走り、誇りに思うわ!!)


一方でこちらはヴィルシーナとヴィブロス。

悔しがるシュヴァルをそれでもよく頑張ったと、成長したと称賛している。

聞いたら情けなく感じてしまうだろうシュヴァル当人には届いていないのがせめてもの幸いだった。


「くううッ…!!」

(勝てなきゃ、勝てなきゃ意味なんてっ!)

(祢音ちゃんの頑張りに何も、何も応えられてないッ!!)


だって本人は絶賛悔しい思いをしている真っ最中なのだから。

相手が悪すぎたし、昨年より順位を上げた。

キタサンさえいなければ。

現状、そんな惜しい立ち位置だった。


「今の脚質じゃ、私の指導じゃ…結局勝てない、のかな」

「…耐えて、祢音。今の貴方の悔しさは分かるけれど」

「シーナちゃん…はは、そう、だね…」


ヴィルシーナとヴィブロスの横でそれを見つめる祢音もまた悔しく、そして自らの最近のレースに関する指導の至らなさを恥じていた。

ヴィルシーナからすれば彼女もまたよくやってくれているのだが、当人を前にしてそんなことは言えないし言うつもりも流石にないのであった。


(トレーナーさんが、商店街の皆さんが…皆が笑ってる、皆が喜んでる…!)

「────第三コーナーを回ってからずっと先頭……」

「あっ…!」


その頃ターフの中には

自らの夢が叶う先を今の景色を見て夢想するキタサン、そしてその勝利をたたえるダイヤがいた。


「立ち上がり、道中の位置取り、ラストスパート…全てが完璧だった……」

「────完敗だよ」


昨年の有馬記念では接戦だったにも関わらず、キタサンは英寿共々ダイヤにそれでも完敗だと認め少し悔しがっていたものの

真逆というかなんというか

これぞ正しく"完敗"だろう。

…それでも讃えたダイヤは強い、景和はそう感じていた。


「"いつも私の一歩先を走って"」

「"見た事のない景色を見せてくれる"」

「ッ………! だけど…………」

「……これで一勝一敗!!」

 


「次は負けない! 私達はもっともっと強くなるから!!」

「私とトレーナーさんの頑張りを何度だって勝利に届かせてみせるっ!」


そう、めちゃくちゃ悔しそうだった。

先日周りに遠慮して気持ちを隠したキタサンと対照的

悔しさも曝け出したうえでそれでも勝つと自分を鼓舞する。本当に強い者の証の一つ。

心身の強さを感じるレースだった。


「────この4人でなら…、もっともっと大きな舞台だって」

「え…?」


────だからこそ、キタサンは先日に自分で言っていたことを有言実行するのにも躊躇いはなかった。


「ダイヤちゃん、あたし達のレースで、トレーナーさんと費やす日々の頑張りで皆を夢中にさせよう!」

「これからのあたし達4人の全身全霊で、世界中の皆を熱狂させるの!」

「お祭りみたいに!!」


キタサンが英寿と目指す祭りのようなレース

ダイヤが景和と目指す「世界」

二つの夢を共に叶えよう

そんな野望にも似た願い。


「!!」

「トレーナーさんもダイヤちゃんも桜井トレーナーもいる。────そんな状況なら世界だって、どこまでだって行ける気がするから!」


「……うん!!」


この2組でならきっとできる。

きっと果てしない願いを、途方もない夢を見つけ叶えられる。

そんな思いを夢共々、共有できた。


「「「「「キーターサン! キーターサン!」」」」」


「随分と強気だな、だが…嫌いじゃない」

「トレーナーさん!」


(次のキタの活躍。差し当たっては宝塚からの凱旋門賞…目指してみてもいいかもな)


いつの間にかやってきていた英寿にもそれは聞こえていたようで。

キタサンが先日言っていたことをすぐに形にできて良かったと、巻き込まれてなお悪い気はしないと感じていた。


「ダイヤちゃん、本当にお疲れ様!次は絶対勝とう!」

「トレーナーさん…はいっ!」


英寿同様にいつの間にかやってきていた景和も内心は同様だが、それは表に出さずダイヤの頑張りをまずは褒めている。


(………そう、あたしたちだったらきっと!!)

(きっと!!)


4人で手を取り合い空いた手を振り大観衆に応えながら、レースの世界においては二人の夢を一つにした意味の再スタートと相なった2021春の天皇賞はこれにて幕引き。


爽やかな春を過ぎ、暑さが売りの初夏に向かう5月2日の出来事だった。


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