謀略K&D:迫る熱に押されて(ChapterⅠ)

謀略K&D:迫る熱に押されて(ChapterⅠ)

名無しの気ぶり🦊

あれから3ヶ月、季節は四月。

その間ダイヤは景和の指導によりGⅠ2勝目、そして阪神大賞典に勝利。

キタサンは英寿からの指導とトレーニングを積み重ね、大阪杯圧勝で4勝目となっていた。

ゴールドシップの「六面」大記録に早くも迫っている。

夢を見つけたこともあってか、もう昨年皐月賞の頃の弱腰ガールではないということだ。


「よっこいしょーいち!」

『G1二勝、桜井景和の指導のもと勢いに乗るサトノダイヤモンド』

『G1四勝、浮世英寿の指導と相まり圧倒的な戦績を更新していくキタサンブラック』


────ラジオに載せ、彼女たちの現状を讃える声が。


『今、最も強いとされる二人のウマ娘が、春の天皇賞で再び激突します!』


そんな2組が二度激突することとなる2022年春の天皇賞を簡単にお知らせしている。


『サトノダイヤモンドに軍配が上がった有馬記念、キタサンブラックのリベンジなるか⁉︎』

『サトノダイヤモンドがその輝きで突き放すか⁉︎』

『はたまた伏兵が波乱を呼ぶか⁉︎』

『春の天皇賞から目が離せません!』


ラジオの持ち主であるあの八百屋の店主は、それを聴きながら今回は普通のサイズのバナナの箱を運んでいた


「ふぅ………トレーナーさん!」

「ん、なんだキタ?」


「今度の日曜日、お出かけに行きませんかっ!」


同じ日の夕刻、その日のトレーニングを終えたキタサンは英寿に共に外出しないかと打診していた。


「…タイクーンとダイヤモンドも連れて、じゃないか?」

「あっ言わなくても分かっちゃいましたか、流石ですね!」


英寿もそれを読めていたがゆえに、なんなら景和とダイヤも連れていくのだろうと確信と同義な予想をぶつける。

キタサンもそんな彼の相変わらずの回転の早さに嬉しさと感心を変わらず抱く。


「おおかた、ダイヤモンドとタイクーンへの決意表明ってところだろ?」

「…はい。あたしがようやく見つけたあたしだけの夢、その実現のためにも…もうレースで誰にも負けたくなんてないんです!」


「それこそ…あたしの幼馴染で、あたしをずっと追い越してきたダイヤちゃん、そしてそのトレーナーさんである桜井トレーナーにも!」


そう、キタサンは自らの夢を見つけたのちに、ゆえにこそその障害にして、自らと英寿が差し当たって超えたい背中であるダイヤと景和のコンビに宣戦布告をしたいと考えていた。

ずっと競い合ってきた誰かだからこそ、超えたいのである。


「…できれば勝ったあとであたしの夢を共有してもらえたら御の字ですが」

「な、なーんてあはは! わがままというか余裕というか、ですかね!」


早くも勝った後のことまで考え出す始末。

普段なら英寿もそれを諌めただろう。


「でも、勝つつもりなんだろう?」

「…はい!」


(そもそもとして今のこいつからは、春天に挑むには足りすぎたほどのトレーニングを重ねている。過不足なく、な)


────ただ、それを超える信頼と確信が今の英寿にはあった。


「ならいいさ。お前はむしろ自分を今まで行儀良くしすぎてたきらいがあったし、勝ったあとならそんな胸の内も吐露していい」

(だからまあ、その場任せの発言ではない。確信できる)


現時点で十分すぎるほどに鍛え上げ、それでもなお歩みを止めないキタサンを見ていれば、考えもなしに浮かれているだけだとはならなかった。


「…それに俺だってタイクーンに負け越しはごめんだしな」

「トレーナーさん…!」


何より、英寿だって負けず嫌い。誰からの敗北であれ、負けたままで済ましておく精神性はしていなかった。


「勝つのは俺"達"だ」

「! もちろんですっ!!」


────宣戦布告するからには、夢のため挑むからには必ず勝つ。


「それじゃあタイクーンと姉さん、スイープにも電話しとくか。下準備の」

「あっいや、悪いですよ!」


そしてだからこそ、その宣戦布告の場たる今回のお出かけも全力で楽しむ。

もちろん準備から。

ちなみにツムリとスイープも案内役として雇う気満々である。


「いいいい。普段から頑張ってるお前らの息抜きも兼ねてるんだろうし、なら俺とタイクーンでご飯作りぐらいさせてくれ」

「そ、そうですか?」

(実は楽しみだったりして…)


飯炊きではあるが、英寿も手を抜かないつもりだった。キタサンも内心彼の手製の料理を今から楽しみにするのだった。


「そうだな…今お前に頼めることは当日までダイヤモンドには黙秘を貫くことと…好きなお菓子や飲料を好きなだけ用意してもらうことだな!」

「わぁっ…はい、分かりました!」


そして彼女個人に関しては当日までの黙秘、そして大量のお菓子と飲み物を用意することを、あくまで彼女への依頼として任された。


『どしたのキタちゃん…ってサプライズ長距離外出⁉︎』

『はい、実はですね──』


まずはすぐさま景和に電話、当然驚く彼に当案件の概要を楽しげに冷静に口頭で伝え、この日はそれで終いとなった。


「んぅ…? キタちゃん……?」

「あっ、起きた?」


「どこか行くの?」


それから数日、準備を前日までにあらかた済ませ、あとは着替えてダイヤに今回のお出かけを伝えるだけとなったキタサンがいた。

その年相応よりはちょっと離れた全身から、いかにも楽しみと伝わってくる。


「6人で旅に出よう、ダイヤちゃん!」


そうだ、旅に出よう。

そんな京都に行こうみたいなノリで至って真面目にようやくダイヤに秘密を打ち明ける。

ちなみに春天は当たり前だが京都レース場、たまたまだが間違っていない発言なのである。


「ん…?」

(6人…? もしかして…)


当然、寝ぼけ眼だからか今回のことに関して参加するメンバーが誰かぐらいしか分からないダイヤ。そんなまま、ひとまず身支度を済ませることとしたのだった。

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