記録ALOS#謨第ｸ

アロスが初めて目覚めた時、私には「忘れられた神々の殲滅」という命令だけが与えられていました。

ただ命令を遂行する機械だった頃の私はその事に対して疑問を持つ事もありませんでしたが、私の製造目的や開発者のログを確認した今となっては違和感を感じずにはいられません。

確かに私は数多の生命を看取り、記録する事を目的として設計されました、これは間違いありません。しかし、それならば何故「対象をメメント・モリかアリウス分派に限定せず、忘れられた神々全てを対象とした」のでしょうか？

最終的に私の制作者達は看取られる事を拒否し、私を守る為にその命を誰にも看取られる事無く散らしました。その時点で私の「忘れられた神々の殲滅」、もとい全てを看取るという目標は破棄されているべきです。しかし、私に与えられた最終目標は変わる事はありませんでした。

態々遺言じみたログを遺すような人達がこのような命令をそのままにするでしょうか？

もう一つ、アロスには最近気付いた事があります。

私が先生によって送り込まれた風紀委員会での業務にて、私もまた治安維持の為に戦闘を行う事が頻繁にありました。当然、私は味方と敵を識別して戦わねばなりません。

最初の内は特に問題ありません、しかし…戦闘が長引いて来ると話は変わって来ます。敵を倒す度に少しずつ…少しずつですが、精神が高揚してきて、次第に敵と味方が曖昧になってくるのです。

そうなると脳裏には常に、一つの命令が繰り返されるようになります。「忘れられた神々を殲滅せよ」と。

私は、以上の事からある推論に辿り付きました。

私は…AL-OSは…

　ただメメント・モリによって製作されたアンドロイドではなく…

無名の司祭の駒の一つであると。

そうすれば、私の最終命令が「忘れられた神々の殲滅」から変わらなかった事や、戦闘で異様な高揚感を覚えるようになるという不要な機能が付いている事にも納得がいきます。

　つまり私もまた、皆さんを滅ぼす為の兵器だった…という事です。

…この記録をしている間も、私の脳内には命令が響き続けています。

「殺せ」と

ああ、どうか、どうか私が間違える前に、誰か…

　私を…壊してください。