言葉の行方

言葉の行方




「ママー、これなぁにー?」


洗濯物を畳んでいる最中、和室で遊んでいた娘が見覚えのあるアルバムを持ってやってきた。


「どっから持ってきたんだ?」

「おしいれのおく!」

「埃だらけの所には入るなって言ってるのにまったく……ほら、おいで」


作業を中断して娘を膝の上に乗せ、アルバムを開いた。


「まっかなおはなだー」

「これはな、押し花って言って、ママの宝物なんだ」


あたしはアルバムのフィルム越しに、赤いアネモネの押し花を撫でる。

このアネモネは、トレセン学園にいた時にあの人があたしにくれた最初の言葉。

花はいつか枯れてしまうけど、どうしても捨てたくなくて、あたしの為に花言葉の載った本を探してくれたあの2人に頼んで、押し花の作り方を教えてもらった。

アネモネ以外にも、あたしが卒業するまであの人からもらった花は全部押し花にして、このアルバムに残してある。


「おはないっぱいあるね!ぜんぶママのたからものなの?」

「うーん、半分はパパのかなぁ」


そう、実はこのアルバムには、あたしがあの人…今の旦那であるトレーナーさんに送った花の押し花もあるのだ。

というのも、あたしが入れ替えるために捨てた花をトレーナーさんは拾って、押し花にして保管してたと言う。

それを知ったのは卒業後にトレーナーさんと同棲を始めた時、引っ越し先の住居で荷解きをしていたら偶然見つけてしまったのだ。

トレーナーさんはあたしが花を飾り始めた時に花言葉を調べたらしく、その時からあたしの気持ちに気付いてたんだと。


『エースの気持ちをゴミになんてさせたくなかったから、内緒でとっておいたんだ』


なんて平然と言われて、もう恥ずかしくて、しばらくまともに顔を見れなかった。


「いいなー、あたしもたからものほしー」

「お?なら一緒に押し花作るか?」

「!」


娘は目を輝かして「つくる!」と両腕を大きく伸ばす。


「じゃあ洗濯物片付けたら、お花屋さんに行こうか」

「うん!」


膝から飛び降りて小躍りする娘を見ながら、あたしはアルバムを閉じ、それをリビングのカラーボックスの中にしまった。

今夜娘が寝た後で、あの人と一緒に見るために。



終わり

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