親の心子知らず、子の心親知らず

親の心子知らず、子の心親知らず


まえがき

どうも、36のレスを書いた者です。「内心では心配もしてたし(中略)赤犬概念…」に1様のレス(入隊経緯)と49様のレス(たしなめるセンゴクとおつる)を少し取り入れて書かせていただきました。(もし何か問題がありましたら言ってください、削除等の処置を取らせていただきます)

注意

・広島弁しゃべれる人間ではないのでなんちゃって感がすごいです(サイトを駆使するなどしましたが変なところがあるかもしれません、間違っててもお許しください)

・普段書き慣れない三人称視点で書いたので変かもしれません(そのせいかどことなくぶつ切りみたいな終わり方になってしまった…)

・サカズキとひばりちゃん親子に焦点を当てたお話になっています(サカズキ嫁は亡くなった設定)

以上が問題ない方はよろしくお願い致します。






「のうセンゴク大目付、相談があるんじゃが」

「元帥、珍しいな。仕事で分からないところでもあったか?」

「…そうやのうて、うちの娘のことで…」

ほう、とセンゴクは袋からおかきを取り出そうとしていた手を止める。

「お前の娘か。年頃とは聞いていたが…」

「娘になにをしてやりゃええか分からんのです。見合いの場を作ればええんか、釣書を独り身の将校に渡していくんがええんか…」

珍しく悩んだ様子で葉巻をふかす元帥───サカズキの顔を見てセンゴクは合点が行く。

「誰かと結婚して嫁入りした方が彼女にとって幸せだ、と考えているんだな。彼女の将来が心配か。」

「そりゃ当たり前じゃ、大目付。わしにとっては大切な一人娘…じゃけぇ心配なんじゃ。」

「(戦場ではその強さから恐れられる赤犬も大概人の子だな…)」

しかし、とセンゴクは渋い顔を浮かべる。

「結婚というものは誰かに言われて何となくするものでも、親が無理やり引き合わせてそのままさせるものというものでもあるまいよ。そのくらいは娘さんの好きにやらせてやったらどうだ?」

「しかしのう、大目付───」

「勤務中に何を話しているんだい、そこの男ども。」

勢い良く扉を開けてつる中将が部屋に入ると、センゴクが先程のサカズキの相談事を端的に言う。

「はあ…それくらい本人の好きにさせな。でないと反発して余計に嫌われるよ。」

「…」

どう返せば良いのか分からずむっすりとした表情になったサカズキにおつるの追撃が一閃。

「孫の顔も見せてもらえない覚悟があるんならそれでも良いと思うけどねえ。」

追撃が響いたのか無言で頭を抱えるサカズキを見た二人はやれやれと頭を振った。


───そんなことを話していたのはいつだったか。

ある日元帥専用の執務室で煎茶を飲みながら一服していたサカズキは、娘であるひばりとその横を歩く男の海兵を目撃した。

「(誰じゃアレは…)」

帽子の下からはみ出る桃色の毛、その手には帽子に主人の頭を取って代わられた花柄のバンダナが握られている。

後ろ姿だけで顔は分からないが、サカズキにはその男が誰かすぐに分かった。

「(なんであいつと…コビーと歩いとるんじゃ…!)」

一瞬にしてサカズキの手の中の湯呑が溶け落ちる。

コビーの横で笑顔で歩くひばりを見たサカズキの胸には苛立ちが広がっていく。

「(あいつの、コビーの実力『は』認めちょる…あいつがSWORDに入りょったんもええ…じゃが…)わしの娘に近づくんは許さんぞ、コビー…!」

ボコボコと体表がマグマに変化する。

業務の報告の為に部屋に入った海兵が瞬間的に気絶しそうになるほど、サカズキは暫くの間怒気を撒き散らし続けていた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「父ちゃん、何の用で───」

「元帥じゃ」

「…元帥、何の用で?」

流石に怒りのままにコビー本人を呼び出すわけにもいかず、代わりにサカズキはひばりを呼び出していた。

「ひばり、この間お前男の海兵と歩いちょったな。」

「そりゃ当たり前ですけ、男の海兵さんなんてここにゃようけおるし。」

「言い方を変える。コビーと歩いちょったじゃろ」

サカズキの言葉にひばりがわずかに肩をビクつかせる。

しかし怯むことなく反論した。

「コビー先輩とは同期みたいなもんやけ、任務じゃない話もするじゃろう。」

「噂もちょくちょく聞いとる、付き合うとるとかな。実際どうなんじゃ。」

「…好きじゃけど、まだ付き合うとるわけやない。」

「ほうか…ほんじゃが先に言うとくがあがいな男と付き合うんはわしは認めんぞ、ひばり。」

「あがいな男!?コビー先輩に失礼なそがいな言い方せんで!」

「あんな、わしはお前のことを思って───」

「なにが『お前のことを思って』なんじゃ!昔っからいつもいつも仕事で家におらん癖に、お母ちゃんもウチもほっぽりながら口でウチに心配じゃだけ言うて!お母ちゃんが死んだときも仕事がっちゅうて葬式に遅れて来て…」

ひばりはサカズキを睨みつける。

今までのぼんやりと積もっていた怒りが一挙に出たようなそれに、二人の間にチリチリとした空気が漂う。

「ウチが誰と付き合うてもウチの勝手じゃろ!こがーにごうでせせろーしいお父なんか大ッ嫌いじゃ!」

「お前…父親に向かってなんちゅう口を!」

「もうお父に好きな人のこととか色々口出される歳じゃないわッ!」

そう喉が張り裂けんばかりの大声で叫んだひばりが懐からなにかを取り出して叩きつけた。

「ウチはコビー先輩についていく!」

───それは、辞表。

茶封筒にそう書かれていた。

「辞表…意味分かっとるんか!?」

「こん意味くらい知っちゅうわ!…ウチはSWORDに入隊する、書類も全部ここにある。お父がウチんこと要らんと判断したらいつでもクビ切ってつかぁさい!」

怒りを顔に出したまま、ひばりが足早に執務室を出ていく。

入れ替わるようにセンゴクが入ってきた。

「今のは…」

「わしの娘じゃ。」

「随分と怒っていたようだが?」

「…喧嘩した」

短く呟いたサカズキが椅子に深く腰掛ける。

「『こがーにごうでせせろーしいお父は大ッ嫌い』と言われてしもうた…」

それに、とサカズキはセンゴクに辞表を見せる。

「SWORDに入隊する、とまで言われてしもうた。事前に辞表の提出、それだけやのうて…他の書類も全部。ひばりの実力自体はSWORDに入れても申し分ないとは思っちょるが…」

「はは、大変な嫌われようだな。」

「笑い事じゃない!…ほんじゃが規則は規則じゃ。」

と大きく溜め息を吐いたサカズキは机の引き出しの中、鍵のついたケースに書類を仕舞い込む。

SWORD全員分の辞表と入隊に際する書類はこの中に仕舞われていた。

ひばりが叩きつけてきたそれを新たにおさめると、サカズキは葉巻に火をつける。

「はぁ…親の心子知らずじゃのう。」

「子の心も親にも分からんだろう?お互い様さ。」

「そんぐらい分かっちゅう。…あいつが生きとったらまた違うとったんじゃろうか」

とセンゴクの言葉に返して一言呟いたサカズキは、目を閉じて煙を吐いた。


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