製作途中
ーーワノ国、鬼ヶ島。
しかしそこにある屋敷には、この国を支配する"皇帝"が、今は遠征中でいなかった。
そのため、百獣海賊団は"ある人"を守るため、主戦力の代わりに普段の倍の数の兵士たちを待機させていた。
運がいいのか悪いのか…そんな時に彼がやってきたのは、そんな日の真昼の頃だった。
「見つけたぞ!早く捕まえろ!」
「くそっ…なんでよりにもよって"こんなとき"に…!」
「おいマズイ…これ以上進まれると"あの場所"が…!」
屋敷内の船員たちは、皆武器を持って"侵入者"に立ち向かう。
5人で一つのチームを組み、連携を取り合ってその敵へ…そして
「ーー陽炎!」
「ギャアアアア!!??」
その全てが焼き払われた。
「あークソッ、数が多いな…」
次第に炎は形を変え、一人のテンガロンハットに似た帽子を被った、青年の姿へと変化する。
しかしよく見ると、男の身体には"火傷のあと"が残っていた。
「チッ…もう追ってきやがったか…早く離れねぇと…」
自分と同じく"炎"を操り、背中から羽を生やした謎の男…それによって手傷を負った彼は、屋敷内の奥へ奥へと避難しながら兵士たちを薙ぎ払っていた。
彼こそ"スペード海賊団"船長、火拳のエースだ。
「…?なんだ……?」
しばらくの間走り続けたエースはふと疑問に思う。
確かに自分はかなりの数の兵士を倒した。だがそれにしてもおかしい、数が少ないのだ。
先程までの戦いでは、一度に数十人の兵士が纏めて襲ってきたというのに、今回はたったの5人ほどだ。
人材が足りない?いいやそれはありえない。
ここワノ国は"百獣のカイドウ"、海を支配する4人の王…"四皇"のナワバリなのだ。
「まさか嵌められたか…?まぁ警戒するに越したことはないか……」
「おい!見つけたぞ!早く!」
「チッ…もう来たか…!」
考え事をしている間に、すでに追加の兵士たちが追いついてきた。
幸い、あのマスクをした"燃える男"はいないようだが…しかしそれでもバカにはできない。
扉を閉めて敵の視界から身を隠せるようにして、エースは顔を歪ませる。
「ただでさえ屋敷に火が移らねぇように手一杯だってのに…まぁやるしかないか…」
騒ぎを聞き付け、あのマスク男がやってくるかもしれないが、背に腹はかえられないだろう。
覚悟を決め、エースはその身体から炎を滾らせ、扉の向こうからやってくる兵士たちに照準を合わせて
「あら?お客さんかしら?」
「……は?」
聞こえてきた呑気な一人の女性の言葉によって、炎が消えた。