裏梅加入妄想

裏梅加入妄想



きっかけは呪いの王のある一言だった。


『小僧。此度の夕餉要求権は俺が勝ち取った。今日の夕餉は "おやこどん" とやらにしろ。以前 "てれび" で見たがあれは美味だ。見ただけで分かる。』


虎杖悠仁の中には総勢20人を超える家族がいる。

とある事変の際にその全員が肉体を得て、悠仁の体から出て自由に行動できるようになったのだが「悠仁の中に居るのが当たり前になった」「今さら出たいとも思わない」と何かと理由を付け、全員が以前と同じように悠仁の中に収まることになった。

またそれに付随して、宿儺の従者を名乗る人物も「新入り」という扱いで悠仁の中に加入した。

こうして新たな仲間も加わり、平穏が戻って数日が経った頃、事件は起こった。


「今日は宿儺か。親子丼、了解!」


もはや恒例となった、今日の食事リクエスト権の争奪戦が終わり、本日の勝者・両面宿儺が夕飯をリクエストした。それだけのはずだった。

しかし、この場に居る誰もが忘れていた。

彼女が「宿儺専属の料理人」であることを..。


「おい小童..貴様が宿儺様に料理をお作りするのか..?」

「え、そうだけど?だってずっとそうしてきたし。」

「そうかならば貴様は今日をもってお役御免だ。今日からは私が宿儺様に料理をお作りする。貴様は宿儺様以外の有象無象どもにだけ飯を作っていればいい。」


いつの間にか中から飛び出した裏梅のこの発言に中では大ブーイングが起こる。


『ざけんな!時代遅れの飯作るテメェにお役御免とか言われたくねぇよ!』

『オレたちのことを"有象無象"扱いするたぁスウィートじゃねえなぁ?』

『暴れながら聞くに堪えない言葉を連発するのはおやめなさいな脹相!』

『あの■■■■!!よくも悠仁をコケにしてくれたな!■■!■■■■!』

『うるっさいわね脹相!烏鷺みたいなことやってんじゃないわよ!』

『は?』


内側で巻き起こる怒りの嵐。その熱はさながら蓋棺鉄囲山のよう。

内側は怒りでマグマのように煮えたぎり、外からは底冷えする視線と冷気が浴びせられるという冷気と熱のダブルパンチ。

あわや一触即発かと思われたところで、思わぬ助け舟が入る。


『まあ待て裏梅。ここは一つ、小僧を試してみるというのはどうだ?』

「宿儺様..!試してみる、といいますと?」

『なに、簡単なことだ。お前もオレたちと共に小僧の飯を食い、その味によって今後の料理の可否を判断するということだ。』

「なるほど..。それは名案ですね。」

「おい小童。宿儺様からのお慈悲だ。貴様に一度だけ機会をやる。宿儺様の舌に合う料理を作るだけの腕があるか、私が見極めてやる。」

『ということだ小僧。疾く作れ。』


宿儺の助け舟もあり、料理を作る許可をもらった悠仁。途中、鶏肉や鶏卵をふんだんに使っているのを見て


「鶏の肉だと!?天皇によって肉食は禁じられているはずだぞ..!?」

「け、鶏卵をそんなに!?とんだ高級料理ではないか "おやこどん" とやらは!?」


とあわてふためく裏梅がいたとか。

そして..


「うっし、完成!」

「いい香りだなオイ!うまそー!」

「ちゃんと手洗ってよ、一兄ちゃん!」

「スウィート..いや、デリシャス!だな。」

「あんた、一体どこからそんな言葉仕入れてくるのよ。」

「おっ!龍ちゃんと万ちゃん!席について待っててね!」

「裏梅、貴様も席につけ。」

「は、はい!」


虎杖家の長テーブルをみんなで囲み、みんなでそろって食事をとるのもまた恒例となっている。


「じゃあ、手を合わせて。」

「なんだ?何かの儀式か?」

「そんな感じ!ほら、裏梅さんも!」

「あ、ああ。」

「それじゃあ、いただきます!」

「「「「いただきます!」」」」


悠仁の号令で食事が始まる。最初こそみんな戸惑っていたが、今となってはもはや慣れたもの。


「やはり美味だ!オレの目に狂いはなかった!」

「また腕を上げたな、悠仁。お兄ちゃんは誇らしいぞ!」

「おいしいよ!ゆうじ!」

「あんがとね!脹相兄ちゃん、血塗兄ちゃん!」


「どうした裏梅。食わんのか?食わんのならオレが食べてしまうが?」

「い、いえ!いただきます!」


レンゲで親子丼を掬い一口食べた瞬間、裏梅に電流走る!

とろけた卵、それと絡み合うだし!柔らかな鶏肉とご飯のコラボレーション!ネギ・ミツバといった野菜の風味も抜群!

最高の親子丼を噛みしめたその刹那、裏梅の脳内に溢れ出した

存在しない記憶


『梅ねえさま!こっちこっち!』

『すくなさま?って人に褒められたの?よくわかんないけどすごいね!梅ねえさま!』

『やっぱ姉様は着物が似合うな~!雪女みたい!あ、褒めてるからね!』


「えっと、裏梅さん?味はどうかな?」

「寂しいぞ悠仁。昔のように梅ねえさまとは呼んでくれないのか?」

「「「「は??????」」」」

「キサマァッ!!先ほどは怒りを収めてやったが..もう我慢ならん!」

「!! 危ない!下がっていろ悠仁!安心しろ、お前は私が守る!」


「そこをどけ!俺がお兄ちゃんだぞ!!!」

「どくわけがなかろう!私がお姉さまだ!!!」

『氷凝呪法 霜凪』『赤血操術 穿血』

飛び散る血、舞い散る氷、食卓で突如として始まったガチバトル。

戦いの行方はいかに..


「ここではやめてくれー!!!!」

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