被害:一級術師一名死亡
黒
辺りが真っ暗
ぼんやりとした頭がやっと目や皮膚からの情報を受け取る
ドロドロとした感触、ピンク色でぬめぬめとした肉体らしきものが視界を占めていた
「ぁ…(喰われたのか…)」
声は驚くほどに出ない どうやら相当弱っているらしい
(楽にして…あげたかったのにな…)
ふと、つんとした匂いが漂う この匂いには心当たりがあった 人間の体液が混ざり合った匂い…あの、なんとも言えない刺激臭…
(ああ、この匂い俺の体から出てるんだ)
これからどうなるかをなんとなく察した もう下半身の感覚がなくなっていることにも今気がついた
(不思議と痛みはない…それどころか…)
気持ちが良かった 溶け合い、混ざり合っていく この呪力が、肉体が、もう自分のものか呪霊のものかもわからなくなってきている
(しあわせ…ここちよい…)
もはや脳はまともに働かない ぐちゃぐちゃになっていく感覚を全身で感じていく
皮は境としての役割を果たせておらず、骨や筋肉は形を保たず接合していっていた
胃も肺も肝臓も心臓も手も耳も目も顔も脳もつながっていく、ひとつとなる
とけあってとけあって
さいごにほんのうだけが、のこって、そして、
20■■年■■月■■日
一級術師が一名、任務中に行方不明となった
恐らく特級呪霊と遭遇したと思われる
現場には溶けた行方不明者の左足と見られる物体が落ちていた____解析待ち
その後の調査として一級術師■名を派遣____