蝶よ夢よ
ねぇ知ってる?隣のクラスのギャラクティックナイトくん、今日学校来てないんだってよ。
えぇ?あの真面目な子が?
夏休み明けの日のプププ学園の休み時間にて、そんな噂をデデデは耳にする。
どうしたんだろう、両親の都合で休んでるのかな?
そうなんじゃない?
「(そういや、マルクのやつも今日アイツ来てないのかと言ってたっけ)」
試しに隣のクラスを覗いてみると、やはり彼の席の横にはカバンがかけられていなかった。
「(アイツが学校に来ないなんて珍しい)」
ギャラクティックナイトは基本的に無遅刻無欠席、先生に呼ばれたら必ず答えるし、ボランティアにも積極的に参加してるし成績も優秀、それも自分のクラスのメタナイトとよくテストの点を勝負する程。
そんな彼が、欠席なんて。
「(何かがおかしい)」
違和感を感じたデデデは1人、調査をすることになった。
☆☆☆
「彼を最後に見た日?」
「なんでもいい、何か知ってねぇか」
昼休み、B組のクラスに聞き込みにやってきたデデデ。そんな彼に対しみな口々にこう言った。
「そう言っても、最後に見た日なんて終業式ぐらいよ?」とルージュ。
「ボクもあんまり詳しいことはわからないのサ」とマルク。
「オレもだ、力になれなくて済まない」とドロッチェ。
「うーーーむ…誰一人として知らないかぁ」
「…妾が夏休み中用事で学園を尋ねた時にはいたぞ」
セクトニアにクラスメイトの視線が一斉に向けられ、そこから続くようにシャドーとが言った。
「あっ、あのね!ボクも夏休み中に図書室に尋ねたら見かけたんだ、一緒に探していた本を探すお手伝いをしてくれて…」
「………………。」
こくこくと頷くダークメタナイト。しかしこれではまだ足りない…そう思っていた時、寝ていたグリルが起きてあくび混じりにこう言う。
「ふわぁ…ギャラちんのことでしょ?彼はよくゲームセンターに行くから、そこ行ってみるといいよ」
「(ギャラちん…?)」
グリルの謎のあだ名呼びに困惑する一同、しかし手がかりは掴めた。
☆☆☆
「っだぁぁぁぁ!ダメだ、なんもわからん…」
あの後グリルに言われた通りゲームセンターに行ってみるも、そこに彼の姿があった訳でも無く降り出しに戻ってしまった。
「どうしたもんかねぇ」
気分転換に屋上にて外の景色をぼーっと見つめるデデデ。そんな時、橙色の蝶が手すりに止まった。
「…ん?」
蝶は羽を休めると突然発光し、姿を変える。黒い体に紅い仮面、背後には大きな羽が生えていた。
「おぉ…?」
『やぁ、きみがデデデだね?』
「ギャラクティックナイト…なのか?なんか変わったな!夏休みデビューってやつか?」
『まぁね』
ニコニコと笑うギャラクティックナイト。ふと、何かを思い出したかのように言い出した。
『そうだ、きみに会いたいと言っていた子がいたんだよ。私についてきてくれないかい?』
「別にいいけど…」
『ありがとう』
そういうとギャラクティックナイトの羽から無数の蝶が羽ばたき、デデデの体を包んでいく。
☆☆☆
「────────ッ!?」
一方その頃自分のクラスでアドレーヌ達と話をしていたカービィは何かを感じ取っていた。カービィの様子がおかしいことに気づいたアドレーヌは声をかける。
「カーくん?どうかしたの?」
「…ごめん、用事が出来た。話は後で!」
「ちょっとカービィさん!?」
そう言うとカービィは急いで教室を飛び出し、走り去っていってしまった。
「カービィのやつ、急にどうしたんだろ」
「さぁ…でもあんなに慌ててるカーくん、珍しいかも」
「なぁ、一体どこに行くんだ?俺行き先知らんぞ」
『大丈夫、私が導く。だから安心してね』
「そういうもんなのかなぁ」
「っは、はぁ…デデデ!!!」
ギャラクティックナイトとデデデが話をしている最中にバンッ!と強く屋上の扉を蹴破るかのように飛び出すカービィ。
「あ?どうしたんだ、カービ」
…次の瞬間。彼の姿はギャラクティックナイトと共にあっという間に消えてしまった。
「…え………?」
☆☆☆
「えぇ〜っと…みなさんに大事なお知らせですぅ。今日のお昼からデデデが勝手に学校を抜け出したとの報告がありましたぁ。何か知ってる事があれば、先生までお願いしますねぇ」
帰りの会、担任の先生のハイネスがそんな調子に喋り教室をざわめかせる。
「デデデが?って思ったけど、いつもの事か」
「でもカービィが来てから勝手に学校を抜け出すことは無くなったのに…どうしたんだろ」
「…………」
カービィは机を見たまま何も喋らない。
「静粛に〜。各々思うことはあるかもしれませんが…まぁいつもの事ですし明日には帰ってくることでしょう、それではまた明日、ジャマサラーバぁ。」
☆☆☆
「ねぇバンダナくん、ちょっといいかな」
「?どうしたんですかアドレーヌさん」
「旦那のことについてなんだけどさ…おかしくない?カーくんが転校してきてから、学校抜け出してサボること無くなったのに」
「やっぱりアドレーヌさんもそう思いますよね!僕もおかしいと思ってたんです!デデデさん、どうしちゃったんだろう…」
「うーん…今の所分からないことだらけだし、先生に任せましょ。私たちじゃどうにかなる問題じゃなさそうだし…」
アドレーヌとバンダナワドルディは話しながら廊下を歩く。辺りはすっかり夕暮れに染まっていて、校舎全体をオレンジ色がさす。
…その時だった。
『もし。そこの坊ちゃんとお嬢さん』
「「!!」」
「あ、アドレーヌさん!この声って…」
「うん、間違いない!旦那だ!…なぁんだ、結局帰って……………あれ?」
アドレーヌとバンダナがヒソヒソ声で話した後に振り返ると、そこにいたのは確かにデデデだった。しかし何かが違う、着ている服は何故か古めかしいし、何より雰囲気が違う。
「だ、旦那…?旦那だよね?」
『ちょうど良かった、これから俺と一緒に遊ばないか?』
にぃっ、とデデデは悪い笑みを浮かべた。