蜜は欲望の味がする

蜜は欲望の味がする


「───そこっ!」

「っく…!」


幾度となく続いた攻防は、わずかなスキを突いた怪人側の勝利で終わった。結局今までのように手足を尾で拘束され、そのまま眼前へと連行される。その様子をニマニマと眺めていた怪人は、当然のようにその頭をヒーローの股間へと持っていく。その行動に昨日の事を想いだしたヒーローは顔をかぁっと赤らめあばれだした。

「だめ、また、あんな事…!」

「あー…♡あー?何?『また昨日みたいに襲っちゃうのが申し訳ない』って?」


口を開け今まさに噛みつこうとしていた口を止め、怪人が問う。その質問にヒーローは何度も頷いた。


「は───────」



『嘘つかなくていいからさ♡』


「えっ、そんっ───────ぁああっ!?」

「は~むっ♡ちゅぷ…れりゅれりゅっ…♡あぐ…♡」


言葉の意味が一瞬分からず反論が遅れたヒーローと対照的に、怪人は何の躊躇もなく彼の肉棒に媚毒を注ぐ。体中の熱が一か所に集まりマグマのように燃えていく感覚と共に、昨日見たその悍ましいまでの雄が顔を出した。

それにうっとりとした表情を浮かべる怪人。対照的に絶望的な顔をしているヒーローに、怪人はくすっと笑うと耳元へと口を近づけた。

「なんでっ、嘘なんかじゃっ」

「いいや嘘だよ。だって─────」

「『雌を一方的に犯すのが最高に気持ちよかったから申し訳ない』んだろ?」

その言葉に、少年は反論しようとして───声が出ない。頭の中ではガンガンと『違う』という言葉が響いているのに、一向に口元までたどり着かない。

その通りだと認めているように。

そんなヒーローの顔を眺めてクスクス笑う怪人は、耳元で悪魔のささやきを続ける。


「昨日のアレ、気持ちよかったよねぇ…♡お互いの体の事とか一切考えない乱暴なケダモノセックス…♡」

「普段自分の事をミルクサーバーとしか考えてない生意気な雌を屈服する快感…奥を突いたら汚い喘ぎ声で鳴いて、ぷしゅっ♡って潮吹く雑魚まんこ…♡」

「相手がどれだけ嫌って言ってもザーメン注いで、妊娠させるぐらいの大量射精…♡屈服した子宮がちゅうっ♡って吸い付いて自分の雌になった感覚…♡」

「もう、戻れないよね…♡今この瞬間も、犯したいってちんぽが涎垂らしてるもんねぇ…♡またおまんこ突いて自分の雌が欲しいって言ってるもんね…♡」


ガサツな口調とは違う、甘く蜜のような毒の声。だが、その全てに彼ができるのは目を塞いでの現実逃避だけ。それでも、彼の雄は肯定するようにびくんっと大きく跳ねた。それを見て、怪人はニタァ、と笑って。


「でもね、アタシもそうなんだぁ……♡」

「ぁ…え…? っ、ぐぅっ!?」


正に恍惚とも言うべき顔でそう言った怪人に思わず顔を上げたヒーローだったが、次の瞬間とてつもない力で体を抱きしめられる。ベアハグ、とでも言うべきその力に一瞬顔が歪む。そんな中、わずかに開いてた目に入った光景の怪人の顔は。

何時も見る、肉食獣の目であった。


「───いただきまぁす♡」


「あ、まっ────ぁぁぁんぶぅっ!?!」

「ふー、ふーっ♡じゅぶっにゅぷっ…ぐぷぷぷぷぷっ、じゅるるるるっ…♡ちゅっちゅっ…れろっ…じゅるるるっぷはぁっ♡ふー、ふーっ♡」


脳が蕩け、性器が敏感になっているところでの急な挿入に悲鳴を上げたヒーロー。だがその声はすぐさま怪人によって行われたキスに防がれ、口の中からありとあらゆるものが吸われていく。

それは、声も例外ではなく。


……そこからはお互いの意識など消え去っていた。発情しきった互いの体は多量の汗をかき、抱き合い密着した体が擦りあう音は全身で性交しているかのように大きな水音を響かせる。接合部からはぼたぼたと汗、愛液、精液等が混ざり合い蜜のように粘性を持って大きな水たまりを作る。口は決して離される事無く密着し続け、鼻息が、熱が、互いの唾液がお互いの脳をどろどろに溶かしつくす。それら全てが混ざった空気は、入ればたちまち欲情するほどの雄と雌の香りを漂わせている。


性交と呼ぶのもおこがましい、快楽の蜜の宴。

それは、永遠に続くように思えた。

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