蛇姫語 ~近況~
ウタルテット_koumライブ会場に立ち塞がるようにルフィがいた。
「ソニアも久しぶりだなぁ!」
「私は姉様のオマケってこと~? 」
「悪ィ! いやぁ、ハンコックがすげェ顔で走ってきたからよ」
「私もびっくりしたよ。ここに来てる途中から、姉さま、突然全力で走り出したからさ。着いたら着いたで、固まってるし。でもルフィがいたんなら納得かな。こんな変な姉さま、久しぶりに見た」
「ん??? ハンコックって昔からこんな感じじゃねェか? 最近は治ってたのか?」
「治ってなかったってことなんだろうねぇ」
ソニアとルフィの世間話は続く。
「ルフィは何してるの? グランドラインで会うとは思わなかったよ」
「今はライブの準備中だよ」
「このライブ? 海賊がライブやってるって聞いたけど」
「そうだぞ。おれは今、海賊をやってんだ」
呆然と二人の会話を眺めておったが、その一言は聞き逃せない。
「どういうことじゃ?」
ルフィが海賊をやっている。
九蛇海賊団以外の、私以外の海賊団で。
「覇王色が漏れてるぞ。ライブやるってのに、それは止めてくれよ」
「もう一度聞くぞ、ルフィ。海賊をやっているとはどういうことじゃ。妾の誘いを断ったことは忘れてはおらんぞ。返答次第ではこの程度では済まさぬ」
ルフィの背後。緑髪の剣士が鯉口を切る。わかりやすい威嚇行為。グランドラインに入ったばかりだろうに、妾の覇王色に耐えるとは中々の者だ。
ソニアも応じて、腕に武装色を纏う。
「おれは今誘われても、九蛇海賊団には入らねェ。今の九蛇海賊団が海賊専門なのは知ってるけどよ、生きるため、仕事として略奪するってのは肌に合わねェんだ」
九蛇海賊団は海賊としては特殊だ。アマゾン・リリーという国に不足する物資を得るために、国として運営している略奪専門の海賊団。そこを否定されてはどうしようも無い。
「なら、お主の海賊団はどうじゃというのじゃ! 」
「ん〜。難しいことを聞くなぁ。まぁ、民間への略奪行為はやってねェよ。今回みたいにライブしたり、未知の島を冒険したり、ぶつかった海賊と戦ったりしてる。・・・おれが海賊に入ってるのは・・・まぁ、縁だな。うん」
「縁っていうか、船長の保護者だろ」
緑髪の剣士がボソリと付け足した。
「保護者って言うと、身も蓋もないけどな。船員としては、船長の行く末を見たいってのも本当だぞ」
「ルフィが海賊しているのは、船長ゆえにか」
妾では駄目なのか。
「ああ、そうだな。このライブでもメインやんだ。おっ、もう始まる時間だな。今日は楽しんでってくれよ! ゾロ、あとは頼んだぞ」
背中を押されて、ライブ会場へ案内される。
急造のステージは有り合わせの物。
恐らく、持ち込んだと思われるマイクにスピーカー、ドラムセット。
ルフィに案内されるがままに案内され、空いた場所を見つけて立ち止ったと同時に、ステージに一組の男女が現れた。
それぞれギターとベースを持っている。
ギターを持った紅白の少女がマイクの前に立った。
ベースを持った長鼻の男は1歩後ろに立つ。
「はじめての人は、はじめまして! 麦わら海賊団 船長のウタだよ! こんないい場所で開催させてくれてありがとう! 今日のライブ、楽しんでってね!」
は? この小娘が船長?
ルフィが保護者をしてるという?!