虚構人形劇

虚構人形劇


ーーー夏油様の肉体を返せ。これ以上弄ぶな。

その願いは悪意に嘲笑われ、蹴飛ばされた。

許せない。私たちが侮辱されたことなんてどうでもいい。ただただ、夏油様を弄ばれていることが憎らしい。あの人の物語は終わった。唯一の親友に幕を下ろされて、綺麗に完結したんだ。だから、誰にも汚す権利なんてない。私たちは、夏油様を汚すあいつを、絶対に許さない。


「菜々子...どうしよう」

「わかってる。わかってるよ美々子」

夏油様を操るあいつから距離を取り、非術士(サル)共の群れを掻き分けて私たちは必死に脳髄をまわす。夏油様の身体を操るあいつは許せない。今すぐにでも殺してやりたい。でも、私たち二人では絶対に敵わないこともわかる。どうする、どうすれば奴を斃せる。どうすれば夏油様を解放できる。

「夏油さんは解放できましたか?」

不意にかけられる声に私達は振り返り、そしてその声の主を視界に入れた途端、ぱあっと表情を輝かせた。

氷見汐梨。最近の新入りでありながら、私たちによくしてくれるお姉さんだ。

「「汐梨姐様!」」

私たちが声を揃えて抱きつくと、汐梨姐様は微笑みながら頭を撫でてくれる。ひんやりとしていて、それでいて元来の体温の入り混じる不思議な感じが、私たちは好きだった。

「その様子では...」

「...うん。ダメだった」

それだけで汐梨姐様は察し、慰めるように頭を撫でてくれる。

それがあまりにも心地よくて。身を委ねたくなって。私たちは思わず溜め込んだものを吐き出してしまう。

「聞いてよ汐梨姐様!あいつ、縛りを結んだ覚えなんてないとか言って約束を破ったんだ!」

「でも、私たちじゃ敵わなくて...ラルゥ達も、夏油様の肉体をどうこうするつもりはないって...」

「あいつらほんと根性なし!夏油様に救われたのに、ここ1番で保身に走りやがって!ご大層な理屈を掲げてたけど、どうせビビっただけなんだ!あ〜、いま思い出してもムカつく〜!!」

私達が口々にそう言うと、汐梨姐様は困ったように笑いつつも全てを受け止めてくれた。それが嬉しかった。頼もしかった。私たちの味方はこの人だけだって思えた。

「なるほど、事情はわかりました。夏油さんの肉体に巣食う者を倒したいと」

「汐梨さん、どうすればいいのかな?」

汐梨姐様は顎に指を添えて神妙な顔で考える。

ああ、やっぱりこの人は違う。思想だけ継げばそれでいいとか抜かす腰抜け達とは全然違う。

「...あまり気は進みませんが、そうも言っていられませんね」

汐梨姐様は裾に手を入れると、そこから干からびたミイラのようなものを取り出した。


「これは両面宿儺様の指です。聞き覚えはありませんか?」


宿儺の指。夏油様に巣食うあいつが語っていた。膨大な呪力を帯びた特級呪物であり、それを食わせれば受肉し両面宿儺が現代に甦ると。


「いま、この駅の中に宿儺様の器である虎杖悠仁が来ています。彼に複数本を同時に飲ませれば、おそらく一時的に肉体の主導権を握らせることができるでしょう。そして宿儺様に願うのです。夏油さんを解放して欲しい、と」


呪いの王、両面宿儺。その伝承は私たちも夏油様に聞かされたことがある。もしも伝承が真実なら、その力を利用すれば夏油様を解放できるはずだ。心躍り顔が綻びかける私たちに、汐梨姐様は待ったをかける。


「ただし。必ず願いを聞き入れてくれるとは限りません。なんせ両面宿儺様は呪いの王。伝承が正しければ機嫌一つで首が飛びます。それでも賭けたいなら...この指を受け取ってください」


汐梨姐様の言葉に、私たちの喉がごくりと鳴る。伝承はたぶん本当だ。もし機嫌を損なえばその場で私たちは殺されるだろう。でも……それでも。私たちは夏油様が好きだ。大好きだ。あの人のためならなんでもしてあげたい。私たちは一縷の望みをかけて、両面宿儺の指を汐梨姐様の手から受け取った。

「ッ...!」

手に取ると改めてその悍ましさがわかる。

流石は特級呪物とでも言うべきか。禍々しい呪力の奔流が指から溢れ、持っているだけで身体が震えそうになる。二十本あるうちの一本でこれだ。こんなもの、私たちでどうこうできるのだろうか?

「……菜々子」

「美々子……」

でも、やるしかないんだ。私たちがやらなきゃ。たとえ想いが届かず首を跳ねられようとも……私たちはあの人のために命を張ると決めているのだから。私たちは覚悟を決めて頷きあうと、汐梨姐様に二人で向き合う。

「汐梨姐様」

「私たちに、勇気をください」



女子トイレ。もう呪霊達があらかた間引き終わったため、殆ど非術式(サル)共はいなかったが、万が一にも生き残りに見られるのは嫌だったから、ここに身を寄せた。

「んっ...」

まずは私から、汐梨姐様にキスをしてもらう。

そしてそのまま舌を絡めると、汐梨姐様の口から甘い唾液が送り込まれてくる。その唾液を嚥下するごとに身体の芯から熱くなり、下腹部がどうしようもなく疼く。

「...菜々子」

私の袖を引き、交代してと美々子が訴えかける。私が汐梨姐様から唇を離すと、今度は美々子が汐梨姐様に抱きついてキスをした。

「んっ……ちゅ……ちゅるっ……♡」

夢中で汐梨姐様の唇と舌を貪る美々子を見ていると、なんだかすごく色っぽくて、私もこんな感じなのかなと思うと少しドキドキする。

そしてたっぷり5分以上はキスをしていただろうか。名残惜しそうに口を離すと、美々子の目にはハートマークが浮かんでいて、すっかり出来上がってしまっていた。

「汐梨姐様……私も……もう我慢できない」

「いいですよ」

汐梨姐様は優しく微笑むと、美々子を抱きかかえるようにして便座に座る。そして膝の上に股がるように誘導すると、美々子のセーラー服に手をかける。

「んっ……♡」

セーラー服とブラウスをはだけさせ、露わになったブラジャーを押し上げる。ぷっくりと膨らんだ小振りな乳房を露出させると、汐梨姐様はその先端を口に含みながら揉みほぐすように愛撫する。

「あっ……ん♡汐梨姐様ぁ♡」

美々子は甘えるような声で喘いでいたが、その口からよだれが垂れそうになってくると慌てて手で拭う。まだ我慢できるようだが、もう時間の問題だろう。多分私がされるときもそう遠くない。

「んっ♡はっ……汐梨姐様♡美々子ばっかりずるぃ♡」

「菜々子もして欲しいんですか?」

そう言って、汐梨姐様は私のスカートの中に手を滑り込ませ、ショーツの上から割れ目をなぞる。その瞬間にびりっと電流が走ったような感覚が走り、思わず身体が反応してしまった。

「あっ♡うんっ!して!私ももっと気持ちよくなりたい!」

私がそう叫ぶと、汐梨姐様は美々子の胸を攻めながら、私はおまんこを弄ってくる。ショーツ越しに汐梨姐様の指が私の割れ目を何度も往復して、その度に腰が砕けそうになる。

「あ゛っ♡あぅん゛っ♡」

必死に声を抑えるが、あまりの快感に口が開いてしまい、堪えきれない喘ぎ声が漏れ出てしまう。しかしそれでも汐梨姐様は手を緩めることなく私を容赦なく責め立ててくる。美々子はもう限界なのか口の端からよだれを垂らして喘いでいたが、それでもまだ必死に耐えているようだった。

「はぁっ……はぁっ♡だめっ♡もうむりぃ♡」

「んっ……いいですよ。二人とも可愛くイってくださいね」

汐梨姐様は美々子の乳首を甘噛みすると、私の中に沈めた指を一気に折り曲げる。その瞬間に視界が真っ白になり、私は盛大に潮を吹き出して絶頂を迎えてしまった。

「あ゛っ♡あ゛ぁぁあぁっ♡♡♡♡」

ぶしゃああっと勢いよく液体が飛び散り、それがショーツ越しに汐梨姐様の手にかかる。美々子もほぼ同時に達したようで身体を仰け反らせながら身体を痙攣させていた。

「はぁ……んっ♡あっ♡あぁ……ん♡」

汐梨姐様は美々子を膝から下ろして座らせると、今度は美々子のショーツの中に手を滑り込ませる。そして同じように指を突き立てると、美々子は背中を仰け反らせて悶えた。

「ひっ!?あ゛っ♡♡だめっ♡♡いまイったばかりなのにぃ♡♡♡」

「でもあなたもまだ満足していないでしょう?」

そう言って、汐梨姐様はさらに美々子を攻め立てる。すっかりびしょ濡れになったショーツを脱がせると、美々子の愛液が糸を引いた。そして汐梨姐様はその指を口に含むと、愛おしそうに舐め取った。

「ふふ、美味しい……」

「やだぁ……恥ずかしい……」

汐梨姐様に見つめられて顔を真っ赤にする美々子だったが、それでも身体は正直なのか物欲しげに足をもじもじさせている。汐梨姐様はそんな美々子の太腿を優しく撫で回すと、耳元で囁いた。

「ほら、菜々子も欲しがってそうですよ?今度は二人で攻めましょうか」「う、うん」

汐梨姐様に促され、美々子は私に身体を向けると、そのまま抱き着き、キスをし始める。舌を絡ませながら、汐梨姐様の手が私の割れ目に触れた瞬間、びくっと腰が跳ね上がった。

「んっ……ちゅるっ♡んぅっ♡♡♡」

「菜々子は本当にキスが好きですね」

「だって……美々子とのキス気持ちいいから……」

私がそう答えると、汐梨姐様は嬉しそうに微笑み、さらに激しく指を動かし始める。そして美々子の方もまた同じように私の秘所に手を伸ばしてきた。二人の細い指が絡みつき、バラバラに動いて弱点を探るように責め立てる。

「んぅっ♡♡♡ちゅっ♡ちゅるっ♡♡♡」

美々子の舌が口内に侵入してきて、歯列や上顎の裏を舐め回す。その度に身体が反応し、腰が浮いてしまう。さらに汐梨姐様と美々子の指がクリトリスに触れ、ぎゅっと摘まれると、それだけで目の前がチカチカするほどの快感に襲われた。

「ん゛ん゛っっ♡♡♡♡」

ぷしゃっと勢いよく潮を吹き出しながら絶頂すると、そのまま脱力して倒れそうになるが、汐梨姐様が抱き止めてくれたおかげでなんとか持ち直す。

「二人とも、とても可愛かったですよ」

「はぁ……はぁ……ありがとう汐梨姐様...ねえ、汐梨姐様。姐様のあそこ、舐めていいかな」

「ええ。もちろんですよ」

美々子が汐梨姐様の着物を下ろすと、むわっと濃い匂いが立ち込める。汐梨姐様が足を開くと、姐様のあそこもテラテラと光っていて。なんだかすごく美味しそうに見えた。

「菜々子、一緒にしよ?」

「うん」

私たちは二人で汐梨姐様の秘所に顔を寄せると、ゆっくりと舌を這わせる。すると、しょっぱくて粘っこい蜜が溢れてきて、それを掬い取るようにして舐めると、口の中いっぱいに甘酸っぱい味が広がった。その味に興奮して私が強く吸い付くと、汐梨姐様がびくりと身体を震わせた。その様子が可愛くて愛おしくて……もっともっと気持ちよくなって欲しくて、ついつい強く吸ってしまう。

「んっ……菜々子……上手ですよ……」

汐梨姐様の手が優しく頭を撫でてくれる。それが嬉しくて、もっともっと気持ちよくなって欲しくて、私は美々子と目を合わせると、二人で一緒に汐梨姐様のおまんこを舐め回し始めた。舌先でクリトリスを刺激したり、膣の中に舌を差し入れて中まで舐めてあげると、どんどん愛液が溢れてきて口の中がいっぱいになる。それでも構わずに続けているうちに、ふと汐梨姐様が切羽詰まったような声を上げたような気がしたので顔を上げると、汐梨姐様は身体を仰け反らせ、ビクビクと痙攣させていた。

「あ゛っ♡イくっ……菜々子、美々子っ♡」

汐梨姐様が絶頂すると同時に大量の潮を吹き出し、私達の顔に思いっきりかかってしまった。

「菜々子」

美々子が熱を帯びた声音で名前を呼び、姐様の潮が掛かった箇所をペロペロと舐め始める。私がそれを真似るようにして舌を這わせると、汐梨姐様の味がより濃厚になっていって……。

「はぁ……美味しい……♡」

「んっ♡私も……」

私たちは汐梨姐様の潮まみれになりながらも、夢中で舌を動かし続けた。


「ありがとね姐様ー!行こう、美々子!」

「うん。...またね姐様」

姐様からたくさん元気を貰った私たちは、見送ってくれる汐梨姐様に手を張り返し、互いの手を握り合いながら、駅を駆ける。

きっと、きっと上手くいく。夏油様を解放してあげられる。だって、私と美々子は独りじゃないから。応援してくれる人がいるから。私たちの明るい道を示すかのように、さっきまで禍々しく重かった宿儺の指が、いまはなんだかすごく軽かった。


「......」

遠ざかっていく少女たちの背中を見ながら思う。

なんともまあ哀れだと。彼女たちを待つ結末にではない。あまりの短慮さと愚かさが哀れだと思ったのだ。

私が演技をしていたことにも気づかず、私の言葉を鵜呑みにして、破滅へ向かっていることにも気づかず。

ここに来る前に会ってきた羂索からも「あそこまで愚かだと笑う気にもなれないよ」と呆れられただけのことはある。

彼女たちは道具だ。あれほど身体を重ね合わせても微塵も情は移らない。きっと、宿儺様が蘇り、ほどなくすればどっちが美々子でどっちが菜々子かも忘れるだろう。

精々、少しでもあの方の糧になるんだなと火照る身体を急速に冷まし、我が主との再会を心待ちにするのだった。



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