舞い降りるツルギ♂
稲生紅衣メメ虎屋ダルヴァの主京楽紅衣はドがつく程度には貴族嫌いである
最近八番隊に鳴り物入りで入ってきた綱彌代梨子という少女が入隊したと聞いて 正直歓迎する気はなかったのだ
「といってもどうせチヤホヤ大切に育てられて強くなるだろうし関係のない話だべ」
しかしその憶測は外れて梨子は鳴かず飛ばず...死神としても貴族としても中途半端な少女となった
貴族という立場に対しての妬み嫉みも相まって梨子は時間が経っても一人で居ることが多かった
ド級の貴族嫌いである紅衣もただ貴族という看板に押しつぶされそうな流魂街生まれの子供までは嫌いになり切れず...どうしたものかと頭を悩ませていた
そういえばと梨子と交流のある稲生に話を聞けば
「潜在能力はあるのじゃが いかんせん開花が遅いようでの…始解の練習をさせつつ 書類の効率的な片仕方なんぞを教えておるぞ
梨子が始解を出来るようになる頃には吾は恐らくこの世におらぬ気がするのう」
と言っている そもそも稲生はこういった後進の育成は不向きであるので期待はしていなかったが
色々と話をしているとどうやら丁度梨子がパトロールをしている地域に虚が出たと稲生が言った
「吾が鴉(けんちゃん)を数羽向かわせておこうかのう なに 多少死にそうになるくらいキツイ虚を相手にした方がかえって耐性がつくじゃろうし」
紅衣はこれも何かの縁だということで鴉と共に空を飛び現場へと向かった
死神は不運であった 通行人が人質に取られてしまい対応が後手が回ってしまったのは
通行人は不運であった 対応できる死神がそう多くなく梨子と平隊士しかいなかったのは
虚は不運であった 訳の分からない全裸が目前に現れたのだから
梨子の目に映ったのは全裸の男のケツ 共に来た鴉は稲生の堅獄鴉由来なのは分かるが...マジでなんなのかは分からない上に不自然に男が浮いているのもまた奇妙であった
「やめてよね 俺が本気で戦ったら流魂街全員が全裸になっちゃうだろ?...別に問題ないような気もするべな?」
「「「「は?」」」」
誰も何も理解できなかった この男の発言も服装というか風体も そしてその動きも
その男は前に全力で走りながら上昇し 落下しながら宙を平泳ぎをし クロールをしながら横へスライド移動していく
まるで地味に叩き潰せない小賢しいコバエの様に 時に波にさらされた小さなクラゲの様に手からすり抜けていく...戸惑っている内に通行人は虚から引き離された
虚は怖くなって逃げ出そうとしたようだが...一人でに浮いて動き出した男の斬魄刀に斬られ沙汰を受けた
ここまで来てようやく梨子の脳は働いた 時灘がそういえばこんな事を言っていた
・八番隊にはかつて時灘に貴族としての作法を教えた先生がいる
・そいつは全裸である
・ちなみにそいつの斬魄刀は触れた瞬間滅却師は爆散して死ぬ(※艶羅鏡典によるコピーで試した 本人は実行したことは無い)
「私は案外君にとって友になれる人材だと思っているよ」(笑)たぶんこんな感じだったかなあと梨子は思考した
梨子も増援としてこの男が来たのだろうと考えて礼を言うために近づいた
男が振り返り何かを言おうとした その男は
太陽の様に明るく/極彩色であり/気分が沈むほど昏く/無味無臭で/どぶ川の様な汚泥を感じ取れ/月の様に柔らかで/夏の海の様に生ぬるく/満点の星空の様で/………
再び思考が止まった この男を見ていても情報が完結せず絶え間なく溢れ続けている
背筋がすっと冷気で満たされなにか悍ましいとすら思い始めた
「あっ ごめんなさい モザイクがちょっと強すぎましたね」
股間が喋り出した もう完全に梨子のキャパシティをオーバーしているのに更に上乗せである
「だ...誰?」
「尻子玉です 最近斬魄刀から股間に引っ越しました」
「シリコダマ...ヒッコシタ...」
宇宙的恐怖というべきか...いや宇宙に失礼だろうと訂正しつつ梨子は回らぬ頭によって言われた言葉をそのまま返すしかなかった
さて尻子玉はどうやら帰るつもりは無いとのたまっている(そもそも見覚えのない器官である)
「とりあえずモザイクを弱めますねー」
ある程度情報が減り処理が追いつく 男は...女になっていた
「あんまり人前で股間を見つめるのはよしたまえ! とりあえず女になったからこれで新鮮味が無くてそこまでソッチに興味は持たずに話を聞いてほしいべ!」
「え は...え?」
とりあえずで女になるとは一体?なんで?しかも尻子玉はどうやら女になったことには関係していないようで...梨子の頭は もう限界を超えて更なる限界を迎えていた
「梨子ちゃんは始解が出来ないと聞いたが...俺にかかれば鬼道の面で伸ばすことができると思っているべ!」
「はえ?」
「おっ!興味を持ってくれたか!ちなみに鬼道はケツからでも出るようになるし全裸になれば空を飛べるべ!」
男...ではなくて一応女を観察してみると本来手にある霊圧の排出孔が全身にあり霊圧が噴き出しているのが分かる つまり手と同等レベルの排出孔を全身に作成することで鬼道がケツからも出るのだろう
ずっと思考していてマトモに分かったのがケツから鬼道を出す方法のみであることに気づき 梨子は考えるのを...やめた