自分とは/帰郷

自分とは/帰郷


『自分とは』


一人で過ごしているとどうしても考えさせられる

オレは一体なんなんだろうと


普段はあまりそういった事を考えないが

まるで自分が溶けて行ってしまいそうな暗闇の中一人になると頭の中に浮かび出す


世界を作り変える事を選ばなかった合一神なのか

只人として生きて死んだ前世のオレなのか

それとも今を生きる人である◼️◼️◼️◼️なのか


まあ今になってはこの名前はオレのモノじゃないけど


上の中から選ぶのかそれとも誰かとの関係性を依るべにしそれを己だと言うのだろうか?

オレは未だに答えなど出せていないし出せるとも思っていない


だから自分に名前を求める事はないだろう

オレを区別出来る名はナホビノとそれだけで事足りる


そうして考えているとどうしても自分の存在の不安定さを感じる


もしも…全てがあの東京のように偽りでオレは今を生きる人などではなく、前世の記憶がナニかに作られたモノで、合一神となっても戦うことを選んだことすらこの世界に産まれ落ちた時に定められて居たのだとしたら…?


オレはこの世に産まれた時から今までの選択が定められていたのだとしたら…

今になって思いを馳せる事があるあの日常は…


「いや無意味な考えだな、オレは何度だって同じ選択をする」

「オレがオレであるなら…死にたくないと叫ぶのなら…何も変わらない」


「……それにこうなる前に普通の日常を退屈だと過ごしていたオレが言えることではないか」


そうして何処までも答えの出ない悩みを切り上げて終点が定まらぬ旅を続けていく

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『帰郷』


普通の街並み。

何処も壊れてなく喧騒が存在している東京。


「……オレは帰って来れたのか故郷に?」


 この世界に辿り着いた瞬間に悪魔の力も何もかも使えなくなってしまっている事よりも故郷の現在の在り方、その事実の方に衝撃を受けながらオレは辺りを見回す。


「異界がない…それに神も悪魔も居ないのか?」


 しばらく探索するとあの頃と変わらない場所だと否が応でもわからされる。

きっと変わってしまったのは自分の方だ。


「…なるほど、誰もオレを認識出来ないのか」

「………ここまで成り果てたオレならそうもなるか」


かつての偽りの東京と酷似している場所。

オレやみんなが平和に暮らして居たあの偽りの街。


「…ここは本当に東京なんだな」


 山に囲まれている訳でもなく街中に存在している、何かの奇跡で存在するかのようなモノではない東京タワーを見て確かな実感を持って呟く。既にあの場所は存在してなく、最早この場所こそが真実の東京であるのだと。


「…折角だ、学校とか行ってみるか」


自分やきっとこの世界を創世したナホビノのルーツである場所の一つを、

何も無ければ今でも通っていたかも知れない場所を目指して歩いて行った。


 朝の通学や通勤特有の喧騒の中を懐かしみながらも歩いて行く。


(…今となってはこんなモノですら懐かしく感じる)

(…それにあの時にオレの前で死んだ何人かもこの世界では生きている…)

(……この世界ではあの戦いも悪魔どもも無くなった事になっているのか)


そうして辺りを見回す、すると


「………ああ…そういうことか」


 オレは普通に日常を過ごしている“オレ”を見つけてしまった。

 

 嘗てのように、何時ものように億劫そうに学校に通う為に駅を歩いている自分を見てオレは納得させられた。


 結局のところこの世界にとってオレは異物なのだと。

 

 しばらくオレはその光景を見て呆けてしまう。


 オレはそこにある当たり前の日常が、当たり前だった光景がとても綺麗で尊いモノのように見え、手を伸ばす。


「………いや、違うな…」


 そう言って、その手は何も掴まずに空を切る。


 しばらくもう一人の自分が歩いて去って行く姿を眺めながら、伸ばしていた手を下ろす。


「……そうだな…あの在り方は戦いを選ばなかったオレだからこそ意味がある在り方で…」

「あの光景は…あの日常は…」

「オレが…戦い続ける事を選んだオレが触れていいモノじゃない」


 人から外れて行き自分の辿り着く結末さえも失った自分が戻れるとは思っても居なかった。そう結局のところ既にオレが求めたモノは掴めない。既に諦めたモノだ。掴んではいけないオレが掴めば壊れてしまうしオレはきっと耐えられないのだから。


 オレにだってそれぐらいのことはわかる。だってオレは多くのモノを奪い殺し、例えオレが居なくとも結果が変わらないのだとしても友を永劫の戦いへと引きずり込んだのだから。オレはもう日常へと戻る事はないのだとそう定めていた。


 そんなオレが、例え根本が異なった自分だとしてもかつてのように“当たり前だった日常”を過ごす自分を見て諦めを抱きながらも安堵を感じていた。


「……ああ…なんだ…オレは産まれた時からこうなる事が定められた存在じゃなくて…」

「遠い可能性であったとしても退屈に生きてあっけなく死んで行く…」

「そういう道もあったんだ…」


 転生という形で産まれ落ちた自分は、神か悪魔かも知れない誰かが作った幻想のような自分は、既に奇跡の消え去った今こうして悪魔と混ざり神に近い存在へと成り果てたから存在できているのかも知れぬ自分は、結局は戦い奪って行くことでしか生きられないと思っていた。


 だからこそ、そうではない普通に生きて何事もなく死ぬような在り方の自分を見て…オレはなんだかどうしようもなく救われたような気持ちになってしまって…

 

「……それならオレは何処までも自分で選んだ道を進んで行くことができる」


 今までの戦いも旅も今ならその全てが決められたモノではなく自分で選んで進んでいたのだと受け止める事ができ、ようやく自分の辿った道筋を誇ってもいいのだと思えるようになって…


「…そうか…オレはこれだけでよかったんだ…」


 この世界に来てようやく、この世界へと帰って来れてはじめて泣きそうになりながらも微笑みを浮かべることができた。

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