耳かき①
Your nameきっかけは些細なことだった。たまたま事務所にあかねが遊びに来ていて、ルビーと会話してる様子をコーヒーを片手に眺めていた。
「あかねさん!実はお願いしたいことがあるんですけど…あまり人前では会えなくて…。」
「私ができることなら協力してあげるよ。」
「ありがとうございます!実はわたし一人じゃ耳掃除上手くできなくてミヤコさんももう高校生なんだから一人でできるようになりなさいって。」
おいおい…。耳かきして欲しいなんていきなり言われたらあかねだって困るだろ。そんな考えをしていたがとうのあかねは
「なんだそんなことか。わたし指先器用だからやってあげるね。じゃあおいで?」
耳かきを片手にルビーを膝の上へ誘う。
なんとなくその光景から目を逸らしてしまう。
「わぁあかねさんの太もも柔らかい!」
「ちょっと恥ずかしいよ!これから入れるからあんまり動かさないでね。」
ほんの少し邪な気持ちが脳裏をよぎる。
「おっと奥の方に結構隠れてるね〜。よし取れた!動かなかったおかげでちゃんと取れたよ偉いねルビーちゃん!」
ルビーの頭を優しく撫でる姿はまさに彼女の姉ような振る舞いだった。
「えへへ。なんか照れる。ありがとうございますあかねさん!またお願いしてもいいですか?」
「もちろん!いつでも声かけて!」
「あんまりルビーを甘やかすなよ。お前ももっと一人で色々出来るようにしていかないとダメだぞ。」
「うるさいなぁ。だってあかねさんすっごく耳かき上手なんだもん!お兄ちゃんもやって貰えば?」
「俺はいい。」
毒気を吐くルビーを嗜めるようにあかねが紡ぐ。
「アクア君その辺りはお堅いからねー。」
「おいあかね、明日は朝から撮影だろ。家まで送ってやるから帰るぞ。」
「じゃあね!あかねさん!また今度遊ぼ!」
「またね!」
夕陽が沈みかける帰路を下らない談笑をしながら進む。かつては全てを放棄して投げ出したものを享受していた。愚行を許し、今もなおこうやって笑い合って過ごしている日々に満足している…。がさらに今日の出来事にほんの少しジェラシーを覚えてしまう器の小ささな嫌悪感を覚えていた。
「ちょっとアクア君話聞いてる?」
どうやら深く考え事をしてあかねの話を聞きそびれてしまったらしい。
「ごめん、考え事してた。」
「ふーん。何考えてたか当ててあげよっか?実は耳かきして欲しかったとか?なんて流石にないか。」
「…」
「え?ほんと?」
なぜ彼女はこんなにも俺の思考が読めるのか…疑問である。一生を解明できる気はしない。
「いやどんな感じなのかなって…別に他意はない。」
「いやまぁアクア君本当はすごい甘えん坊さんだもんね。お家に着いたらやってあげるね。ルビーちゃんにも内緒にしておいてあげる。」
「…助かる。」
鼓動が早くなったことは誰も気づいていなかった。