緊急放送:例の羊の接触が確認されました
「……むぅ、どうしても花が崩れてしまう」
「スヨーダナは力入れすぎだ。もう少し加減を覚えろ。お前も俺なんだからその手でも慣れればちゃんと出来る」
「アーユス、これでいいのか?」
「AIの俺は少しキツく巻きすぎだな。このままだと輪にした時に歪むぞ」
「ぼくはどちらかといえば花をささげられる方なんだけどなぁ……でもファンへのサービスと思えば……?」
カルデアのシミュレータールーム、森林に設定されたフィールドの最奥にある花畑。そこではいわゆる「子供系ヨダナ達」による花冠作りが行われていた。スヨーダナが父へ綺麗な花冠をプレゼントしたいので練習に付き合って欲しい、との願いに応えたアーユス、カルデアに来たばかりでシミュレーターに興味のあったAIヨダナ、綺麗な花畑をステージに歌い踊る練習をしようとしていたマジカル☆ヨダナの4人である。
AIヨダナとマジカル☆ヨダナは花冠を作る予定は無かったのだが、アーユスとスヨーダナの花冠教室を眺めていたら気付けば自分達も一緒に作る事になっていた。
スヨーダナはカリの手と繊細な花に相手に苦戦していたものの大元は器用なドゥリーヨダナである。所々歪みや茎が飛び出てる部分等はあるものの、当初のものよりは上達した花冠が完成しお父様にあげるのだと誇らしげにしていた。アーユスは兄のカルナと弟のアシュヴァッターマン、ドゥフシャーサナとヴィカルナへ。AIヨダナは素ユユツとユユツ・オルタ、ついでにヴィヤーサへ。マジカル☆ヨダナは自身の頭上に花冠を載せてご機嫌そうに笑っていた。
そして
「うら若き美少年達が美しい花畑で花と共にキャッキャウフフ……楽園はここにあったんだね?」
招かねざる闖入者が現れてしまった。
「……あ」
「……げっ」
「……あーあ、きちゃった」
「……何???」
花畑に現れた羊のぬいぐるみらしきもの、ご存知「太陽の悪魔(藤丸立香談)」ことアポロン神である。
「美少年の気配を察知して忍び込んでみれば、パリスちゃん程じゃないけど可愛い子が揃ってるなんて最高だね!スヨーダナ、だっけ?君には何度か会ってるよね。私はぺドじゃないから君はギリ対象外……いやでも今後の将来性は大いに期待出来るよね!その手足に尻尾も個性的とも言える。アーユス、君の美少女めいた美少年フェイス、最高だね!君は庶民育ちなんだっけ? 骨ばった体に薄い肉、それでいて要所にはちゃんと付いてる筋肉のアンバランスさ!成長期にしか見られないこの体ほんっっとに堪らないね。マジカル☆ヨダナちゃんは自分を魅せるってことを分かってるの、いいねぇ~流石魔性のアイドル!見えそうで見えない計算し尽くされたそのチラリズム、最高じゃないか!こっちもペンライト全力で振るからファンサしてほしいなぁ!そして最後にAI? 私が言うのもなんだけどここ(カルデア)も大概何でもアリだよねぇ!大元のドゥリーヨダナがモデルだからか君が一番正統派な幼少期って感じなんだね!あーこんな美少年も何十年かしたらあぁなってしまうのか。これは人類において多大なる損失だよ……でも君がサーヴァントで良かったよ!今の君のままでずっと居られるって事だもんね!」
「…………? …………????」
「AIヨダナが固まった」
「育成ゲーム出身だもんな、戦場には慣れてても変態を目の当たりにするのは初めてなんだろう……」
「ぼくはあそこまでじゃないけど、いきすぎたファンはなんどか見たことあるなぁ」
「俺も女と勘違いした変態には何度か会ったな……兄様が助けてくれたけど」
ノンブレスで意味のわからない(解りたくない)事を捲し立てる怪しい羊に遠い目をする3人とスペースキャット状態の1人。今すぐここから逃げ出したいのは山々だが相手はぬいぐるみ姿の格落ち権限とはいえギリシャの太陽神である。
「アレに捕まるのだけは嫌だ……」
「おとうさまに花冠プレゼントしたかっただけなのに……」
「世界って、広いんだな……」
「AIのぼく、あんなのでさとらないで? ……って事で、マジカル☆ヨダナのひみつどうぐ~」
てってれーと自分で効果音を付けながら取り出したのは
「……防犯ブザー?」
「カルデアぎじゅつ部とくせいでーす。これをひっぱってー」
ヴーー!ヴーー!!ヴーー!!
突如シミュレータ内に響き渡る警報音。そして、
『緊急放送、緊急放送。非常事態発生。ギリシャのアポロン神の少年サーヴァントへの接触を確認しました。場所はカルデアシミュレーションルーム〇〇、森林フィールド奥。対象サーヴァントはスヨーダナ、アーユス、マジカル☆ヨダナ、AIヨダナ。繰り返します、ギリシャの……』
「え、え、え、なんだいこれ!!!???」
「きいてのとおり、あなたのたびかさなるやらかしによるカルデアぎじゅつ部からのぼうはんシステムだよ。もうすぐやってくるヒーローたちあいてに、ぶじにすむといいね?」
余談
この後ジュナオお父さまとカルナ兄様とアシュヴァッターマン(弟)、素カルナと素アシュヴァッターマンも飛んできます。奥様とユユツ・オルタは事態を観ていた夢魔さんが眠らせていた為神殺し霊基大暴走は回避されました。
マジカル☆ヨダナは情報少な過ぎて口調迷いましたがとりあえず一人称ぼく、ひらがな喋りな魔性の小悪魔アイドルイメージになりました。