続・白猫

続・白猫


年の離れた末の妹が蔵から釣り竿を持ち出して来た。幼少期俺が使い倒したオンボロの釣り竿を母は未だに捨てていなかったらしい。末の妹は興奮した様子で「これでお魚を釣って猫さんに会わせてもらうの」と言った。猫、猫かぁ。先日の火影塔の話題を嫌でも思い出してしまう言葉だ。あれからマダラ様と扉間様が一緒にいるところを直視出来ない。


「うーん、それはもう古くて使えたものじゃないから兄ちゃんが魚取ってやるよ」

「ほんとに!?」


木の葉の渓流へ向かう道すがら、妹は猫ちゃんの話をしてくれた。


「この間ね、うちはのところのコノハちゃんと仲良くなったんだぁ。コノハちゃんは良くうちはの族長様のお家の家事手伝いに行くんだって。お手伝いに行くと美味しいお菓子貰えるから私も一緒に来ないかってコノハちゃん誘ってくれたの」


うちはの族長ってマダラ様じゃないか。知らぬ間に妹がマダラ様と接点を持っていたことに驚く。美味しいお菓子をお手伝いの子供達に渡すマダラ様。想像付かないけど火影様はマダラは優しい男ぞってよく言っているからそういうことなんだろう。戦場ではひたすらおっかないけど。優しいところがあるんだなぁ。


「コノハちゃんとお手伝いしに行こうとしたら今日は大丈夫だって言われちゃってお菓子だけ持たされて帰されるところだったんだけど。庭の方に白い影が見えてね!なんだろうと思ってお庭の方に行ったらね!ポン!って音がして真っ白な猫さんがいたの!」

「え、本当に猫がいたのか!?」

「真っ白な猫さんいたよ!鈴つけてた!二つも!」


俺は安堵した。あの話、暗喩でも何でもなくて本当の話だったんだ。やっぱり奇跡的に火影様ご兄妹に似た野良猫がマダラ様の庭に遊びに来てただけなんだ!


「鈴つけてるってことは火影様の助言通り飼い猫にしたってことかな……」


二つも鈴を付けてるのだからよっぽど可愛がってるらしい。これで扉間様見る度にあの話思い出していたたまれなくなることから解放される。


「猫さんねぇ、悪戯っ子で鈴あげたら近所の子猫ちゃんと遊び道具にしちゃうから大変なんだって」

「へぇ、あのマダラ様を引っ掻くような猫だからなあ。やんちゃなんだろうな」

「猫さんから子猫ちゃんが鈴取ろうとして遊ぶんだって。でも猫さんとってもすばしっこいから鈴を取れた子猫ちゃんはいないんだって」


なんだろう。すごい聞いた事ある話だ。猿飛の嫡男がやってる修行内容に物凄く酷似してる気がする。


「そうやって子猫ちゃんと遊ぶから立派な鈴買ってあげてもすぐボロボロにしちゃうんだって」

「へぇ……」


俺は再び脂汗をかく。うん、なんか嫌な予感がする。猿飛の嫡男の師は扉間様だ。子猫と戯れる白猫が弟子に修行を付ける扉間様のイメージに段々置き換わっていく。


「猫さんねぇお魚大好きでね!私が鮎あげたら美味しそうに食べてて可愛かったなぁ!」

「そうか……」

「猫さん、お利口さんだから族長様にお魚焼いてもらわないと食べないんだよ!にゃあにゃあお願いするんだ!焼いてーって」

「へぇ……」

「族長様がね!火遁でね、ぶぉーって焼くの。私も分けてもらったんだけど、とっても美味しかったよ。猫さんなんか族長様の指までぺろぺろしてたからよっぽど美味しかったんだねぇ」


妹と猫の戯れを聞きながら俺は話を整理する。マダラ様がお手伝いを断ったのは断らなければならない用事が出来たということ。ポンという音とともに庭に現れた白猫。間違いない変化の音だ。先の話と妹の話から推理するに白猫は扉間様だ。白い影は扉間様の髪の色で庭に駆け寄ってきた子供達を見て咄嗟に猫に変化したのだろう。その後子供達に付き合って猫の振りをして戯れてくれたのかもしれない。魚をわざわざ焼けと願ったのも人間だからだ。まさか生魚をパクリって訳にはいかないもんな。


つまりあの二人逢い引きしてたのでは?


「それでねぇ、族長様とっても意地悪なんだよ!猫さんがね擽ったがってるのにわざとしっぽの付け根ぽんぽんするの」


純粋な木の葉の子供の前で何してんの?!猫のしっぽの付け根は生殖器につながる神経がある部分だから猫にとっての性感帯だ。……しっぽの付け根トントンされて擽ったがってる扉間様えっちだな。


「お前は猫さんに意地悪しちゃダメだぞ……」

「うん!猫さんね、子供と遊ぶのが好きだからたまに来てくれって族長様言ってたの。今度はお土産持っていくの!だから沢山取ってねお兄ちゃん」


うん、お兄ちゃんなんかもう色々お腹いっぱいだよ。余計あの二人のこと直視出来なくなっちゃったよ。



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