続 20番目の人鳥(と、おまけ)

続 20番目の人鳥(と、おまけ)

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※晴れのターンです※

※全くそのつもりはないのですが、BLが好きな人間が書いております。ちょっとそれっぽいかも知れません……。※

※名前のないモブが数人喋ります※

※後半に非常に暗いおまけの怪文書があります。※


ペンギンが目の前で殺される夢を見たローと、その話を聞いたペンギンはもう1人のローが同じ夢にうなされた可能性に思い至った。

おれ様子見てきます!と走り出そうとするペンギンを捕まえて、ローは自身諸共もう1人の自分の所へシャンブルズで移動することになった。

扉をノックし、声をかける。

「ローさん、ペンギンとキャプテンです。」

入りますねとペンギンが声をかけようとした時、中からすすり泣きが聞こえ、ローが返事を待たずに扉を開けた。

中の様子を確認するとすぐに、何も言わずペンギンはベポを呼びに走った。

中では、もう1人のローが涙を零し、震えながら舌を噛もうとしていたのだ。

幸い怪我には至っておらず、その晩は暖かなミルクをお供にクルーたちとゆっくりとした時間を過ごした甲斐もあり、2人のロー達は落ち着くことが出来た。


翌日、ポーラータング号は物資調達を目的に秋島へ停泊した。

「温泉の匂いがする!」

ハッチを開いたベポのその一声で船内は一気に色めき立ち、果ては踊り出すものがいる始末であった。

「キャプテン、今回はローさん外に出られるんです?」

「あぁ、無理は禁物だがな。杖は必須、場合によっては車椅子の用意も……」

シャチの問いかけにローは心做しか柔らかな声で答えた。

クルーたちの目が輝く。

「「温泉は!?!?」」

クルーたちの声が揃う。

「付き添い必須且つ短時間での入浴が条件だ。」

「「アイアーイ!!!」」

大はしゃぎで持ちやすいザック、着替え、杖などの準備を整えるクルーたちであったが

『誰がローさんと温泉に行くか』

をかけたくじ引き大会が開催されるのは時間の問題であった。

……様々な手を尽くした末、勝利の栄冠はペンギンのものになった。


ペンギンは無地のTシャツと濃紺のテーパードパンツ、上からシャチに借りたテーラードジャケットを羽織っていつものペンギン帽を被って来た。肩には折りたたみ式の車椅子が入ったリュックが担がれている。ローは黒のカットソーに濃ベージュのトレンチコートと他のものに比べて履き慣れたジーンズに黒のキャップ、左手の薬指には大きさの違う3つのダイヤが着いた指輪を、首にはこちらも複数のダイヤ付きのペンダント…といった出で立ちで船をおりた。

1歩島内の街へ踏み出すと、温泉街独特の硫黄と秋島らしい金木犀の香りが各々の鼻をくすぐった。

すん、と空の右袖をはためかせる風の匂いを嗅いだローが、杖から思わず手を離し顎に手を当てて

「芳香剤の匂い……」

と真面目な顔で呟いたので、ペンギンは堪らず吹き出してしまった。

そんなペンギンをみて、呟いた本人も段々と楽しくなり、ついにはカラカラと声を上げて笑い始めてしまった。

2人が心地よいくすぐったさに包まれていると、

「お!兄ちゃん達海賊?観光に来たの?」

トレーナーにジーパンと古びたスニーカーを履いた小柄な少年が、人の良さそうな笑みを浮かべて走り寄ってきた。

「あぁ、買い物と温泉に寄らせてもらう予定だ。」

ローが答えたが、ペンギンはバツの悪そうな顔をした。

「あ、そっちの兄ちゃん、オイラが詐欺やると思ってるでしょ?そんなみっともねぇことしねぇって…。」

少年はわざとらしくむすりと頬をふくらませて、上目遣いで拗ねた顔をしてみせた。

「オイラたち親無しは観光ガイドの仕事して日銭を稼いでんの。変なこと出来ねぇように温泉組合が元締めやってっから、基本心配要らねぇよ?」

少年は温泉組合の名刺を差し出した。

「悪かったよガキんちょ。俺も昔やってたからなぁ。」

もちろん、悪いコトをだけどな!

そう言いながらペンギンは少年の砂色のつんつん頭を軽く撫でた。

「まぁいいや。気を取り直して……まずは買い物と温泉どっちからにする?」

「買い物から頼む。薬屋はあるか?」

今回のローとペンギンのチームは包帯や絆創膏などの軽い応急処置用品を調達する役割であった。

その旨を伝えると少年はいい店を知っている、と胸を張った。

「あ、そっちの杖の兄ちゃん!オイラの肩貸そうか?」

「いや、今は大丈夫だ。」

ローは自力で歩くことを望んだ。

「そっか!ただ場所によっては道が良くないこともあるし、貸車椅子もあるからいる時は言えよな!」

少年はカラッとした笑みを見せた。

その会話を聞きながら、

『想像もつかないようなとんでもない拷問を年単位で受け続けたはずなのに、たった1ヶ月で自力で歩きたいって……』

ペンギンは思わず涙ぐみながら、思わずローの頭をくしゃくしゃと撫でた。

「っ!何を…!?」

突然帽子の上から頭をくしゃくしゃにされたローはキョトンとしていた。

「いやぁ、元気になったなァ……って思うとつい」

そんな会話を挟みながら少年にお代を先渡しし、一行は控えめなペースで歩き始めた。


薬屋までは存外近く、一本道をしばらく真っ直ぐ歩いて脇道をいくつか超えるとすぐにたどり着いた。

地元の子供が太鼓判を押すだけのことはあり、

店こそ小さいが質の良い品を扱う店であった。

「あぁ、お客さんかね。いらっしゃい……。」

店主らしい腰の曲がったばあ様が店の奥からぎしり…ぎしりと床を軋ませながらあらわれた。

「絆創膏に包帯、消毒液と傷薬、湿布薬に保湿用の軟膏ね。これでも食べてちょいとお待ち。」

どこからともなく暖かいそば茶と大福が用意されてローとペンギンに手渡され、ぽかんとしている間に素早く手際よく必要な品を袋に詰めて行くのをペンギンとローは眺めていた。

「…いただきます。」

ペンギンが大福をもにりと口に含むのを横目に、

「いただきます。」

ローもそう呟くと、もちっとした大福を齧った。

中にはみずみずしいイチゴと程よい甘さのこし餡が詰まっていた。

「うっま!」

感嘆の声を上げてペンギンが一口で食べ切る横で、ローが頷いて同意しながら3口に分けて食べ切った。

「はいお待ちどう。それとこれ、おまけしとくから持ってきな。」

お茶を啜っているとばあ様が包んだ品物と、それとは別にポケットに入る程の品のいい和柄の巾着包みを各々に1つずつ渡した。

「あ、どもっス…」

「そうさねぇ…湯治ならちょうど向かいのホシマル温泉が合うだろうねぇ。ほれ、これも持ってきな。あぁ、そうだ。そっちの杖のお前さん。」

ばあ様はローの左手の指輪と胸元のペンダントをじっと見つめ、ちらとペンギンの顔を見ると、

「…随分と大切にされとるねぇ。姿や魂の形が変わっても愛されて護られとる。」

いい子たちねぇ。と顔を綻ばせた。

「わか…るのか?」

ローがぎょっとしていると、

「分かるさね。この島の年寄りなら誰でも。」

ばあ様はそう言ってウィンクを返した。


「またいつでもおいで。」

そう言って手を振るばあ様に礼をいい、ばあ様から手渡された割引券を片手にホシマル温泉ののれんをくぐった。

中からはふんわりと湿った暖かな空気と、硫黄混じりの温泉の匂いと特有のシャンプーの香りが漂ってきた。

「オイラここで待ってるから、兄ちゃん達2人で楽しんできてよ」

「え、入んねぇの?」

3人分出すつもりだったペンギンが思わず聞き返すと

「風呂、苦手なんだ…」

少年はバツが悪そうにはにかんだ。

番台の老父に割引券と小銭を渡し、札を2つ貰って2人は男湯ののれんをくぐった。

「お、貸切じゃん。」

脱衣場にも誰もおらず、浴室側にも人の気配はない。

「ローさん、体辛くないです?」

「あぁ。心配ねぇ。」

脱ぎづらい部分はペンギンが手を貸しながら、2人して素肌になる。

「ローさん、ここ硫黄泉なんで、その…」

「悪いなペンギン…頼んでいいか。」

「喜んで。」

ペンギンは頷き、脱衣場のベンチに腰掛けたローの首からネックレスをそっと外してローに手渡した。

ローがそれをロッカーに入れるところを見届け、

ペンギンはローの前に膝まづいて左手薬指の指輪をそっと抜き取り、ローに手渡した。

「お前ら、ここで少し待っててくれ。」

ローが小さな声でそう呟くと、宝石達が応えるように輝いた気がした。

ロッカーに鍵をかけて、浴室へ向かう。

「はーいご開帳〜♡」

意気揚揚と磨りガラスの引き戸を開けると、

ほわぁ…と溢れる湯気の先には貸切状態の内湯が広がっていた。

「あ〜この湯気…たまんねぇ♡」

「おぉ…」

はしゃぐペンギンにつられて、思わずローの口からも感嘆の声が漏れた。

2人は『入湯時のマナー』に従い、洗い場へと足を向けた。

「まず頭から洗っちまいますね!」

「悪ぃ。頼む。」

普段はシャチが洗っているが、2人きりの今回はペンギンがローの頭をわしゃわしゃと洗った。

「ふぅ…」

(あ…)

出会った当初は洗われることに抵抗が強かった様子で体が強ばっていたローが、心做しかリラックスした様子で体を任せてくれていることにペンギンは改めて感動を覚えた。

「痒いところないですか?」

「ん…だいじょぶだ。」

その答えに、流しますよ〜と声をかけてシャワーで頭をわしゃわしゃと流した。

体はさすがに自分で洗える、と言うローの背中だけをそっと手伝い、その後ペンギンも自分の体を手早く洗った。

そして、ローはペンギンに支えられながら、2人で草色の内湯に浸かった。

「「っはぁ〜……」」

2人して心地さに思わず吐息が漏れた。

力の入らなくなったローを、風呂の岩壁に背中が当たらないようにペンギンの左手が支えた。

「助かる……。」

「いえいえ〜…やっぱ生き返るっすねぇ…」

「あぁ…悪くねぇ……。」

「体染みてないです?」

「染みてない…じんわりしてる……」

「しますねぇ…じんわり……」

ふとローが左奥を見ると、外に繋がる扉があった。

「外……露天もあるのか。」

「お、露天風呂いきます?」

「興味はある……頼めるか?」

「喜んで。」

人目がないことをこれ幸いとペンギンはローを言わゆる『姫抱き』にして内湯から上がった。

そしてそのまま露天風呂への引き戸を開けた。

「おぉ〜なかなかの絶景……」

「おぉ……」

秋島特有のヒヤリとした空気と、紅葉の赤やいちょうの黄色に染まった山と夕日に染った空が2人を出迎えた。

露天風呂は薄い青にも見える乳白色で、白い湯の花が舞っていた。

「入りますね…」

ペンギンがローを抱えたまま湯船に浸かり、そっとローを下ろした。

そしてローを支えつつペンギンも湯船に浸かる。

「あぁ……露天もいいな……。」

「ですねぇ……風も気持ちいい……」

気温に合わせてあるのか、露天風呂は少し熱めになっているようだった。

(あぁ……空が高ぇなぁ……。)

聞こえるのは湯が湧き出る音と、風がひゅうと吹き抜ける音、それと隣の呑気な男の鼻歌ばかり。

この世界に来てひと月たった今でも、何者にも遮られず、なんの恐怖も苦痛も支配も伴わない空を見る度に、ローは目頭が少し熱くなった。

そんな折、ひゅうとひと吹き大きな風が吹いて、ペンギンの頭のタオルを吹き飛ばした。

「おっと、やべやべ……ッどわァ!!!!」

「!?……ペン……大丈夫か?」

木に引っかかったタオルを取りに行ったペンギンは、岩風呂の縁で滑ってとんでもない体勢ですっ転んだ。

「大丈夫です……ヒィ…」

立ち上がったペンギンの左の膝小僧には、それはそれは見事な擦り傷が拵えられ血が流れていた。

「あーあ……やっちまいました。」

肩を落として手桶で湯を汲み、とりあえず傷口を洗い流すペンギンを見たローは思わず

「……俺に、処置させてくれないか?」

そう口に出して、恐る恐るペンギンの顔を見ると、ペンギンは驚きと喜びに満ちた顔をしていた。


その後2人は風呂から上がり、ひとまず膝小僧はタオルで軽く覆って体を拭いた。

その後、着替えの時にローが座ったベンチにペンギンが腰かけた。

「ちょうど手当にいるもの買ってて助かりましたね。」

そう言いながら、ペンギンは手当に必要なものを物を物資から拝借するローを見ていた。

「じゃあ、お願いしますね。」

ローさん、と呼ぶペンギンの声にキャプテン、と呼ぶ同じ声が重なってしまった。

(……あぁ、あぁ、俺は。俺が本当にしたかったのは。)

ペンギンの膝の傷口を見る。思い至ってしまった。本当はあの日の、目の前で傷つくペンギンの流れる血を止めて、傷口を塞いで、あぁ治って良かったって、無事でよかったって言いたかったんだ。

ようやく拾うことが出来たその気持ちを目の前の、別世界のペンギンにぶつけてしまっている。その事実にローはひとり罪の意識で堪らない心地になったが、体は覚えた動作で手当を続けていた。消毒液を片手で不器用に垂らし、脱脂綿で拭き取ろうとした時、ローの精神はスルスルと過去に戻っていった。幼い時分に借りた父様の医学書にインクをたらしてしまって、しかられるのがこわくてかくしちゃって、シスターにはじめてざんげして、そのひのばんにとうさまにごめんなさいをした…そのときのきもち。

幼少の記憶に引きずられながら顔を上げると、

タオルを被って微笑みながらローの手元を見つめるペンギンと目が合って

ローは一瞬呼吸を忘れた。

罰を請いたくなった相手の目は、ただただ、あの幼い日に自分を抱きしめた『赦し』を称えていたきがした。

「ローさん?」

「……っ。悪ぃ。」

ローは声をかけられて正気に戻り、片手でなんとか絆創膏を貼った。

不器用に、しかし丁寧に膝に貼られた絆創膏をペンギンが嬉しそうにそっと撫ぜて

「ありがとうございます。…おれももう痛くねぇや。」

そう言って笑った。

さぁ、服着ましょう?

ペンギンにそう促されて、ローはロッカーを開けた。

「「えっ?」」

2人はロッカーの中を見て同時に声を上げた。

ロッカーの中で、指輪に埋め込まれたいちばん小さな青みかがったダイヤとその隣のピンクダイヤが、喜んでいるかのようにキラキラと輝いていた。






~・☆・・☆~~~・☆・・・~☆~・☆・・☆~~~・☆・・・~☆

おまけ「人鳥葬」

(20番目の人鳥ペンギン生存if怪文書が出来てしまったので、蛇足ではありますが載せさせていただきます。なんなら内容的にスレチの可能性があります。)

※人体の欠損に関する表現が多々あります。ご注意ください※

※暗くて後味が悪いです※

スペシャルサンクス:https://morse.ariafloat.com/





ドフラミンゴの苛烈な拷問で意識を飛ばし、目を覚ました直後に、ローが必ず行う行動がある。

どんな時も、ローが囲われる鳥籠の中に唯一常に置かれる宝箱の中をローは覗き込んだ。

「ペンギン……良かった生きてる……」

「あぁーあぁーむあぁーぁーあぁーむ」

そこには、太ももの付け根から先と肘から下まで、そして舌を失ったペンギンが横たわっていた。

ドフラミンゴの手で壊されたあの日、舌を噛み切っても死ねなかったペンギンは

『ローの命乞いと船長の為に拷問に耐える勇気に免じて』というお題目でドフラミンゴのいいように生かされてしまった。

ドフラミンゴは、死ねぬまま正気を忘れた様子のペンギンをローが飼うことを許している。

「ちょっと待ってろ、食べ物が手に入ったんだ。」

「ぁーぁーあぁーぁーむぁーあぁーぁーむああむぁーあぁーぁーあむ」

ペンギンは手足の名残をパタパタと動かしている。

ローは片手で器用にゼリーのようなものを匙にとり、ペンギンの口に流し込んだ。

無表情でゼリーを飲み込むペンギンを、ローは悲しげな目で見つめた。

「ペンギン……苦しくないか?」

「ああぁーむあぁーあぁーあむ」

「……うん。」

日々の拷問で追い詰められたローは、ペンギンの出す声に何か意思があるのか、ただの反応なのか考えることをとうに辞めていた。

「おはようロー。ペットは元気か?」

しばらくすると、ドフラミンゴが悪意のある笑みを浮かべながら鳥籠を覗き込みに来た。

ローが恐怖と怒りの滲んだ顔で、緩慢ながらも宝箱を背にドフラミンゴを見上げる。

「そう怖がるなよ……とっくにトチ狂っちまったお前のペットに手を出す気はねぇさ。」

もう少ししたらまた来ると言い残し、ドフラミンゴは離れていった。

「あぁーああむぁーぁーぁーぁーむああむああぁーぁーむあぁーああむぁーあぁーああむああむぁーあああむぁーぁーぁーぁーむああぁーぁーむああぁーあぁーむああぁーぁーむあぁーあむあぁーああむあぁーあぁーぁーむああむぁーぁーぁーあぁーむ」

「うん…?ペンギン…ごめんな…ごめ…。」

「あぁーむぁーあぁーああむあぁーあぁーぁーむ……」

箱に頭を突っ込むような状態でローの意識が途切れると、ペンギンがもぞりと動き出し、頭と肘から先を使ってローを床にそっと落とした。

「あぁーあああむぁーぁーぁーむあぁーぁーぁーむぁーぁーぁーぁーむあぁーあぁーむぁーぁーあぁーあむあぁーあぁーぁーむぁーぁーあぁーぁーむあぁーあむぁーあむぁーあああむあぁーむぁーあぁーああむあぁーあぁーぁーむ……」

彼の幼なじみだったものの発するただの唸り声を、見えないところから聞いていたドフラミンゴはうっそりと笑みを深めた。

「あぁーああむああぁーあぁーむぁーあぁーあぁーむぁーああぁーむあぁーああむぁーぁーぁーむあぁーぁーぁーむぁーあむぁーぁーぁーあぁーむぁーあぁーぁーむあぁーあぁーぁーむ……あぁーあああむぁーぁーぁーむああぁーぁーむあぁーむああぁーぁーむああぁーあむあぁーぁーぁーむぁーあぁーあむぁーあぁーぁーぁーむぁーあぁーあむぁーぁーあぁーあむあぁーあぁーぁーむ」

どこに届くかも分からぬむにゃむにゃとした囀を残して、ペンギンは黙り込んでしまった。

その虚ろな目は、鳥籠に設えられた真っ白な扉を見つめていた。


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