絞り出しクッキー
人形だった頃は足手まといになるのが嫌で、いろんなお手伝いをしていた。ウソップに釘を渡したり、ゾロのナビゲートをしたり、チョッパーが薬を煎じるときに出るゴミを片付けたり、ロビンの栞を片付けたり、色々。
そんな中でも、このお手伝いはとっても好きなので、人間に戻ってからも続けている。
「サンジ、これ全部やっていいの?」
「あぁ勿論。俺はこっちで作業してるから、あとは頼む」
「もちろんっ!」
巨大な鉄板の上に敷かれたクッキングシート。そして用意された大量のクッキー生地。私の役割はこの上に、一定の大きさにクッキー生地を絞り出しては焼くこと。
何かを生み出すにはあまりに不器用になっていた手で、たくさんお手伝いをしてきた。同じ道具を使っていても、サンジの作るクッキーはとても芸術的な見た目でナミやロビンを楽しませていたのはよく覚えてる。
いいなって思ってたのも。
私のクッキーは大抵、ルフィの口に入っていた。サンジのそれと比べて明らかに不恰好だけれども、うまいって心から楽しそうに食べていたのはとても嬉しかった。
「おっ、綺麗にできたな、ウタちゃん」
「でもサンジと比べるとまだまだだよ」
黙々と並べた生地は、人形であったころと比べてある程度上手くなった。だけど、サンジには敵わない。これは悔しいけど、仕方ないかなって思う。私が歌になにより誇りを持ってるように、サンジは料理に誇りを持ってる。
かなわないなあと思うけど、それと同じくらい、サンジは凄いんだぞ!って気持ちになるから、悪くない。
……でも、後もう少しだけ、サンジのクッキーに近づきたいかな。