絆される
トラックに轢かれて死んでしまった。
けれどなんか馬に転生していた。
そこから競走馬ってヤツになって、頑張っていたんだが、
【やっと見つけましたよ、××さん!】
【ひっ!】
なんでヤツがこんなところにいるんだよ!?
目の前にいるやつは俺が死ぬ要因となった存在だ、確実に。
前世から俺と結ばれる運命だったとか言っていたイカレ女。
何回引っ越しても追いかけてきたし、その他諸々…。
最終的に「あなたも殺して私も死ぬ!」された結果、前だけしか見ていなくてトラックにドン!と。
…いや考え直してみたらあの時の運ちゃんには悪いことしたなぁ。
【ねぇ、】
【ひうっ!?】
【誰のこと、考えているんです?今、あなたの前にいるのは私でしょう?そのこと、分かってますか?ねぇねぇねぇねぇねぇねぇ!?!?!?】
【ひ、ひぃぃぃぃっっ!!】
やっぱ怖いよう、コイツ!
こうなった人間がいちばん怖いんだ、今は馬だけど!
【でもよかったです。今のあなたは私としか言葉が通じないんですから。たくさんいろいろ話しましょう?前、あんなになったのは会話にならなかったからですよね。でも今は私としか話せないんだから…】
【ひ、ヒン…っ!】
いや、たしかに自分以外のウマとは言葉が通じないけど!
なんでよりによってコイツを選んだんだよ神様ァ!?
俺なんか恨まれるようなことしましたかねぇ!?
…なんて。
思ったのも、懐かしい。
【××さん、××さん…】
【ぁ、あ、やだ、やめ…んっ!】
はじめはあんなに嫌だったのに、気づけば絆されてしまっていた。
それにはやはり、他馬から襲われかけていたところを何度も助けてもらったのが大きいだろう。
体の大きい、歳上から襲われて、恐怖で声が出せなかった俺を助けてくれた。
あれだけ、ひどい言葉を吐いて拒絶していた俺を。
そして、毎度の【なんで助けてくれたのか】との問いに、【あなたが好きだから】と飽きもせず返され続けてしまえば…。
チョロいって言いたいなら、言えよ!俺だってそう思ってるよ!
【ココがイイんですよね?】
【ぁ、あ、だめ…っ】
【可愛いですねぇ、××さん…】
その結果、俺とコイツは番になっていた。
本来ならいろいろなヤツの相手をするはずだったんだけど、お互い元が人間だったせいで一夫一妻制じゃないと違和感、もしくは忌避感を感じるというか…。
というワケでお互いしか相手をしない関係になって。
【また、私の子どもを産んでくださいッ!】
【ぁ、あ、あつ、あついぃ〜〜〜……っっ!!】
さて、…これで何頭目だっけ?
***
俺:
元ヒトミミ♂現牝馬。
ヒトミミ時代はヤンデレな私に好かれて夜も眠れない状態だった。
実は鈍感でおチョロい性格。
自分のことを助けて好きって言ってくれる私に絆されて気づけば番に。
私がテクニシャン過ぎて、私を見るたびにフケてたらいい。
私:
元ヒトミミ♀現牡馬。
ヒトミミ時代は俺にヤンデレてた。
ヤンデレた理由は俺にとっては些細なことだけど、彼女にとっては大きな転機だった。
実はバレてないだけでドSな気質だし策士。
俺が他馬に襲われるように仕向けては助けるマッチポンプをしていた。
めちゃくちゃテクニシャン。
いーっぱい、気持ちよくなってください。ね♡?