雨降って地固まる
晋作が泣いている。涙を拭うことすらせず、鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして、晴信のパジャマを握りしめ、しゃくりあげながら泣いている。
晴信は困り果てた。こんな晋作を見るのは初めてだ。自由奔放で、かなりのカッコつけたがりで、面白いことが大好きな年下の恋人は、人前で恥も外聞もかなぐり捨てた振る舞いをしたことなんて一度もなかったのだ。
子どもみたいに泣いている晋作を一体どうやって慰めればいいのだろう。大号泣の原因に労られて落ち着くのか、という疑問もある。
「……………」
恐る恐る手を伸ばして、そろそろと引っ込める。相手は大人だ。癇癪を起こした幼い弟妹を宥めるのと同じやり方で落ち着いてくれるとはとても思えなかった。
──────晴信は覚悟を決めた。
「え゛、な、はるのぶ、………っ」
抗議の声が上がるが、気にしてはいられない。
まずは首筋。次は左胸。ついでに頬。
半ば無理矢理手を取って、身体に触れさせる。命の動きが感じられるように。生の温かさが感じられるように。
「晋作、もう泣くな。俺はここに居るし間違いなく生きている」
「本当、に?」
「死人が口をきくか?」
「……………」
ふるふると首が横に振られる。
一度鼻をすすった後、晋作はやっと晴信の方を向いた。
「………心配のし過ぎで死ぬかと思ったよ」「…………すまん」