紫×2の共闘
寝て覚めたら知らない天井、という事態を経験したのは、実は初めてではない。
故に、御影玲王は至極冷静に状況を受け止める事が出来ていた。
「むしろ命の危険は無い分、焦んなくて良いのが楽だわ」
「何呑気なこと言ってんですか、明らかに異常事態でしょ。危機感持ってください」
ぽつりと溢した独り言に、すかさず真っ当なツッコミが入った
玲王は現在、アレクシス・ネスと共にロッカーに隠れている。
出口を探すべく探索していたら怪異が這う物音が聞こえた為、玲王は咄嗟にロッカーに隠れた。そこにネスがいたので、今の状況になっている
ずっ ずっ
液体の溜まった革袋を引きずるような重苦しい音が、ロッカーのある教室のすぐ横、廊下をゆっくりと進んで行く。ソレに自分達が居ると勘付かれないために、二人は指先一つ動かさない様、気を張り詰めながら物音が過ぎ去る時を待った。
狭いロッカーに鍛え上げられたスポーツ選手が二人。互いに密着しているからこそ、相手の体温に安心感を覚える事が出来た。身体の震えが酷くなることはない
ずっ ずっ
音がほとんど聞こえなくなった。
ようやく、無意識に止めていた息をふう、と吐く。
静かにロッカーから出た二人は、廊下に面した壁の窓ガラスに透けないよう身を低くしながら進み、座ったまま扉側の壁にピタリと背中を付け、身を隠した
「全く、いきなりロッカーが開いたから見つかったんじゃないかとヒヤヒヤしましたよ」
「悪いな。俺も急いでたんだ」
小さな無声音で会話をする二人には、共通の目的があった
「早くカイザーを見つけないと·····」
「早いとこ凪と合流しなきゃ·····」
ほぼ同時に呟かれたその言葉に、玲王とネスは顔を見合わせる。
ぱちくりと瞬きをし、一瞬後にくすっと小さく笑い合う
「なんだ、お前も人探し中か」
「ふふ、お互いマイペースなパートナーが居ると苦労しますね」
「俺は目が覚めたら一人だったから、逸れたわけじゃないぞ」
「僕は速攻でカイザーに置いてかれました。待てって言われてたけど流石に心配で···」
ふっと目を伏せて項垂れるネス。
それを見て、玲王は不安気な表情に庇護欲を刺激される
(一人より二人居た方が、視野も広がるし異変に気付きやすい)
怪異が蔓延るこの学校に転移させられてから数時間。身を隠して立ち回り、怪異に追いかけられる仲間を見て見ぬ振りをする事もあった。
玲王はいずれ必ずこの学校から脱出する方法を見つける。その為には自分の優秀な頭脳が必要不可欠であると、玲王は客観的に確信していた。
実際、"もし本当に出口なんてものがあるのなら"玲王の頭はとても役に立つであろう。
御影玲王は己が優秀だと理解している
側に居る人間に降り掛かる火の粉を自分のついでに振り払う事が出来る程には
自分と関係のない所で逃げ惑う人間は無視できたが、もう関わってしまった人間を見捨てて置いていける程、玲王は薄情な男ではない
「なぁ、一緒に行動しないか?」
「·····え?」
「カイザーを探してるんだろ、俺も凪を探してる。探すって行動が一致してんなら、二人の方が効率良く動ける。違うか?」
「まぁ、それはそうですが····もし貴方が危険な目に遭っても、僕は助けたりしませんよ」
「はは、上等。俺も助けねぇよ」
玲王が差し出した手を、ネスが握る
一時的な業務提携がここに成立した
(大丈夫。何回か拉致された時も一人で対処できたし、ばぁやにこういう時どう行動するのがベストなのかは叩き込まれてる)
(カイザー···すぐ、迎えに行くからね)
それぞれの思いを胸に、二人は歩き出した