純粋なる愛のカタチ -part.3-
サラダ事変「純愛ルート」藁にも縋る思いで自らの推しが一線を越えないことを祈っている少女がいる一方で、肝心のチセはサラダちゃんを受け入れる態勢に入っていた。
その一方でサラダちゃんのほうは、急に触手を絡ませてモジモジし始めた。
まるで恋人に愛の告白をしようとするも、いざ当人を前にして決意が決まらず手をこまねいている--そんな感じにチセはボンヤリと感じ取っていた。
数秒だけ無音の時間が流れ、やがて意を決したかのようにサラダちゃんが彼女に自らの思いを伝える。
「お嫁さんになってほしい?……いいよ~」
あっさりとした簡潔な答え。こんなにも素直に受け入れてくれるとは思ってもいなく、サラダちゃんは一瞬だけ硬直した。
「でも、そうするにはお互いのことを知っておかないと」
そして、こんな自分を受け入れてくれたチセの慈悲深い応対に最大限の感謝の意を示し、改めて彼女と共に行動できた喜びを噛みしめていた。
「そのあとでなら……うん、喜んで~」
お互いのことを知る--何気なく語った彼女の一言に、サラダちゃんはある提案を持ち掛ける。
「ん~?……まずは友好の証に、仲間を増やす手伝いをしてほしい?」
サラダちゃんの提案--それは「チセの体を使い、同胞であるサラダちゃんを増やすことを許容してほしい」というものであった。
増やし方についてはチセは熟知しており、百夜堂に向かう道中で魑魅一座の生徒たちをはじめ、百夜堂の中で朝比奈フィーナと河和シズコ・観光に来たり食事をとっていた生徒多数が口腔と肛門、そして秘部の3カ所から大量のサラダちゃんを生み出していたのを繰り返し見ていた。
自分もいざそれを体験することになるかと思うと、流石の彼女にも緊張が走った。
しかし、サラダちゃんから予想外の反応が返ってきた。
「……できる限り優しく接するから安心して?ん~、わかった」
とりあえず了承はしたものの、突然「優しくする」と聞いてもチセには全く想像もつかないのが実情であった。
増やす過程で激しく攻め立てられて絶叫に近い嬌声を出して依り代とした生徒のヘイローを持ったサラダちゃんを生み出した光景をさんざん見てきたのに、どのように「優しく接する」のだろうか。
================
サラダちゃんがあれこれ触手をしきりに動かし、何かの準備をしているのが遠目で確認できた。
ほどなくして、仲間を増やす為の触手がチセの口元にやってくる。その触手は粘液にまみれているものも、不快な臭いはせず心地よい感じの香りが彼女の尾行をくすぐっていた。
試しに粘液の匂いを嗅いでみると、柑橘類の爽やかな香りがしてきた。フレーバー的にはレモンだろうか。
「これを咥えればいいの?『負担をかけないように配慮する』……りょーかーい」
他のサラダちゃんでは考えられない、まさに心を通わせたチセ相手だからこそできる優しい対応。
細長い触手を鼻孔に先ほどの粘液をまとわせて入れていく。そして本命の触手もゆっくりと、確実にチセの胃の中へと粘膜を傷つけないように触手を伸ばす。
イメージとしては胃カメラによる検査工程であり、嗚咽をすることなく受け入れるために粘液には麻酔作用が含まれていた。
増殖用の触手が彼女の胃に到達するのを確認し、握りこぶしほどのジャガイモのような種を2,3個ほど植え付けていく。
「ん”ん”……。ぷはぁ、胃の中がプルプル震えてる~」
じっくり彼女の体内にある神秘を吸収しながら、植え付けたサラダちゃんはその数を増やしていく。
「次は……えっと、お尻に触手を入れて仲間を増やす。……だったよね?」
いくら考えていることがつかみどころのないチセといえど、多少のデリカシーはあるようで顔を少し赤らめてサラダちゃんに確認をとる。
「そうそう、合ってるよ!」と喜んで反応するサラダちゃん。……この応対からも異なる種族なのだとチセは改めて認識するのであった。
コツを掴んだのか先ほどよりも短い時間で準備を終わらせ、胃に入れたものと同じように粘液で覆って腸内を傷つけないように改良されたゴボウのような触手が彼女の臀部に伸びていく。
「ちょっと怖いなぁ……。んあぁああ~……」
(大腸カメラを入れられる機会があれば別だが)本来ならば決して味わうことのない、自らの肛門に何かが入り込む感覚。
はじめは違和感で拒絶感を覚えるも、サラダちゃんの丁寧な対応のおかげか不思議と腸内を蠢いていく触手に奇妙な高揚感を覚えていくのを感じていた。
途中で彼女の便と接触した際は、目の前の障害物に意を介さずにそのまま飲み込んで仲間の肥料として分解し、仲間の一部として再構成して目標である十二指腸前まで伸びていく。
「とうちゃく~。ここにも胃と同じように植え付けて、仲間を増やしていくんだね……あぁんっ」
チセの質問に答えるように、ピンポン玉くらいの種を腸内のいたるところに植え付けつつ、成長を促す粘液を種にかけつつ肛門へと戻っていく。
15分後、直腸に最後の種を植え付けが完了し、増殖用の触手は彼女の尻穴から抜け出していく。
「んあっ……。すごく刺激な体験だったよ~」
自然体で接しているが故か、あるいは宣言通り「優しく接していた」が故か、いずれにしろチセにとっては奇妙で不思議な体験をした程度の認識にとどまっていた。
=================
サラダちゃんを植え付けてから1時間後、チセは触手から分泌された抹茶味の粘液を飲み干していた。
「んぐっ、んぐっ……。ぷはぁ……美味しいね、その粘液」
一見すれば落ち着いているように見えている彼女だが、その体躯ははち切れんばかりに膨れ上がり、今まさに一般的なサラダちゃんの誕生がまだかまだかと迫っていた。
その割に普段と変わらない態度でいるのは、彼女独特の感性とサラダちゃんという異形の存在を受け入れていること、そして彼女の思いに応えて健気な姿勢をとっているサラダちゃんに安心していることにあるのだろう。
=================
抹茶味の粘液を飲み干して10分後、ついにその時が訪れた。
どくん、と胃が跳ね上がる感覚を覚えたチセ。
「おふっ……。これから生まれるんだね、私だけのサラダちゃんが」
手始めに胃が震え、吐き出す準備に入る。
すると、粘液で濡れた豆苗の根っこのような触手が彼女の口に入り込んでいく。
「んぐっ、んんん……」
細長い根っこがスルスルとのどを通り抜けて胃にたどり着き、今にも生まれようとするサラダちゃんをフルーツキャップで包み込むように絡めとる。
そして、大量の粘液を彼女の口から流しつつ胃から取り出していく。
「むぐっ、むぅん……」
胃の中にいたサラダちゃんをすべて取り出し、チセの目の前で新しい同胞として生まれたサラダちゃんを排出する。
その神秘を吸い上げて生まれたサラダちゃんには生みの親である彼女と同じヘイローが浮かび、まさしく彼女だけのサラダちゃんがここに誕生したのだ。
「おめでとう。生まれてきて、良かったね~」
親として、新しい仲間ともいえる同僚に祝福ともいえる言葉をかけるチセ。
いつものようにサラダちゃんのいうことを感覚的に掴もうとした時、思いもしない事態に遭遇する。
[ありがとうございます~]
[さすがはびっぐまざー、すごいおんなだ]
[おんにはおんでむくいる。これ、じょうしき]
なんと、彼女から生まれたサラダちゃんがたどたどしくはあるが、言葉を話したのである。
今までは感じ取るだけにとどまったサラダちゃんの進化に、思わず驚いてしまい言葉を失うチセ。
[どうかしましたか、われらがははよ]
[もしかして、ことばにしないほうがよかったのでは?]
[でも、ことばはだいじ。こじきにもかかれている]
[ことばなくして、おもいはつたわらないので]
思い思いの言葉を次々と語っていくサラダちゃん。
一つ確かなことは、彼女の温厚な性格を継承して共に歩み寄ろうとしている意思--それがはっきりとしていることだ。
彼女たちの意思を感じ、チセはようやく口を開く。
「すごいね~。立派だよ、君たち」
[おほめにあずかりこうえいです、わがはは]
[それほどでもない]
[わがははへのことばなのに、けんきょにそれほどでもないといった]
愉快な会話が繰り広げられつつも、第一幕はこれにて終幕と相成る。
=================
次にお腹が蹴り上げるような衝撃を受け、新生児たるサラダちゃんの誕生劇の第二幕が幕を挙げた。
「んあっ……。今度はお尻から出てくるんだね、大変だ~」
本来は口で取り込んだ食物の残骸を排出する器官、それが今回に限っては新しい生命の誕生につながるとは誰が予想しただろうか。
[わがははよ、おそれることはありません]
[どうほうをうむときのかんかくは、それはもうきもちいいものですので]
[どうか、われわれのようにあたたかくむかいいれてください]
先に生まれたサラダちゃんからの励ましの言葉を受けて、未知なる感覚である生命の排出を試みるチセ。
「んんん……。あっ、お尻から出て--んあぁあ……」
気の抜けた声にチセの肛門からゴロンと転がり、彼女の体内で育まれたサラダちゃんの誕生が始まる。
植え付けたときにはピンポン玉くらいのサイズのサラダちゃんは、排出された時にはトマト程の大きさの元気なサラダちゃんとしてこの世に生を受けた。
そしてそれは一つだけではなく、膨れ上がった彼女の腸内にいる全てのサラダちゃんを産み落とすことに他ならないのだ。
=================
息も絶え絶えになりつつも腸内に残っていた最後のサラダちゃんを産み出し、第二の生命の誕生劇もこれにて終幕と相成った。
「生命の尊厳をも脅かす冒涜的な生命の誕生」--誰しもが口をそろえていうであろうこの文言は、サラダちゃんと共に歩み彼女たちの行為を全面的に受け入れているチセには決して届かない。
「はぁ、はぁ……。サラダちゃんを産むのって、こんなに気持ちいいなんてね~」
むしろ、チセ本人は生命が自らの体を経て誕生する事実と産み落とす時の心地よさに喜びを覚えていた。
彼女は自らの手で新しい生命を産み落としたという事実に感動すら覚え、次の段階に踏む時だと感じていた。
そんな母たる彼女の意思を感じ取ったのか、サラダちゃんが更なる進化を遂げようとしていた。
[ともよ、いまこそははにむくいるとき]
[しょうち]
[さらなるわれわれのはってんを、ははのあんねいをともにねがおう]
[いざ、われらをひとつに]
[[[[いまこそ、ひとつに~]]]]
その言葉を合図に、チセから生まれたサラダちゃんたちが代表格と思しきサラダちゃんへ、自らの体を差し出して取り込まれていく。
吸収するたびに代表格のサラダちゃんの体は跳ね上がり、体格がどんどん大きくなり陰陽部のサラダちゃんたちも彼女たちの意思に呼応して同じような行動をとっていく。
=================
1時間後、陰陽部の部室にはチセから生まれたサラダちゃんを取り込んだ巨大なサラダちゃんがそこに佇んでいた。
吸収を繰り返していき、ついには「2メートルの中枢ユニットであるサラダちゃん」と「陰陽部という空間を守る巨大サラダちゃん」という二重構造が出来上がっていた。
急激な進化、そして一連の流れは自分に向けられたものだと肌で感じ取るチセ。
[わがははよ、われわれのことをりかいしてもらえましたか?]
「うん。私のために、ここまでしてくれてありがと~」
[とうぜんですとも。じつは、われわれにはかくされたじじつがありまして]
「事実?それってなぁに?」
[そのために、いぜんかくさくしていた『そういうこと』をしたくおもいまして]
「いいよ~」
[れすぽんすがはやくてたすかります、わがはは]
「お互いのことを十分に知れたからね~。あと、個人的には産んでみたいと思ってて……」
[そうでしたか。じつは、われわれとははのたまごがひとつになることで、われらとははのようそがあわさったあいのこがうまれるのです]
『そういうこと』をすることにより、サラダちゃんと彼女の因子が合わさった新人類が生まれる--彼女が言わんとすることは、つまりはそういうことである。
サラダちゃんの告白に、チセの全身に熱が帯びてくる。
お尻から生み出したものとは違う。本当の意味で母親になる--そういう行為をこれからするのだと思うと、今まで感じたことのない感情が湧き上がってくる。
「確か、BDで学んだ内容だと『そういうこと』をすると、お互い気持ちよくなって……なんやかんやあって、子供ができるんだよね?」
[そうです。わがははのよろこびこそ、われらのよろこび]
「どんな子が生まれるかなぁ?」
[それは『かみのみぞしる』、といったところでしょうか]
この時のチセは知らなかったのだが、既に「サラダちゃんの創造主たる生徒」と「風紀委員会の委員長」には、サラダちゃんと彼女たちの間の仔--いわゆる『たまごサラダちゃん』が生まれていた。
「ん~……わかった。じゃあ……本格的に『そういうこと』をしよっか~」
[なんというのりのかるさ。でも、きらいじゃないです]
従来のサラダちゃんを産み出す際に消耗したチセの体力は、致す前の全快状態に戻っており『そういうこと』--俗にいう「まぐわい」をするのに万全の態勢が整っていた。
いざ始めようとサラダちゃんが触手を伸ばし始めたとき、チセが待ったをかけた。
「あと、これは言ったほうがいいかな~。……将来の伴侶として年端のいかぬふつつか者ですが、何卒よろしくお願いします」
律儀な受け答えに、サラダちゃんも律儀な対応で返していく。
[こちらこそ、いたらないところがあるかもしれませんが、よろしくおねがいします]
こうして、チセとサラダちゃんの愛の物語は佳境を迎えようとしていた。
==================
まったくの余談だが、この一連の流れを余すことなく僅かな隙間から覗いていた桑上カホは憤怒・慟哭・悲嘆の入り混じった感情で怪物の暴力を受け入れていた。
(チセちゃんが、言わないでしょッ……!そんな事ッ!言わないよねェッ!?)
(嘘よ……チセちゃん、どうして怪物なんかの言いなりになってるの?)
(お願い、チセちゃん……。考え直して、お願い……)
そして、自らの推しが破滅の道を歩み始めたと悟った時、カホは考えることをやめた。
「ん”お”ぉ”お”お”お”お”♡も”う”か”ん”がえ”た”く”な”い”ぃ”い”い”い”!!」
「ち”せ”ち”ゃ”ん”ん”ん”ん”!!どう”し”て”な”の”ぉ”お”お”!?……ん”ぎぃ”い”い”、ぎい”も”ぢぃ”い”い”い”い”い”い”の”ぉ”お”♡」
「お”ほ”ぉ”お”お”お”お”お”お”お”お”お”お”♡♡♡」
[ to be continued... ]