紅玉と緑の海

紅玉と緑の海


「「牧場??」」

「そう、牧場。アイと僕が仕事で日帰りで行ったところがあってね」

「私もアクアもこの三連休はまとめてお休みでしょ?ヒカルと話をして私達が行って良かったあそこに行こう!、て話をしていたの」

金曜日。珍しく家族揃っての夜ご飯を終えて、パパの片付けを手伝っていると突然2人から提案を受けた。

2人が言うには緑の海、という言葉が相応しい広々とした草原と放牧している馬や羊、乳搾りなどが体験出来るらしい。

「乳搾りか…」

「アクア、興味あるんだ?中々難しいよー?私、何回か失敗したし。生乳が目に入って一面真っ白になったからね…」

「あまりの勢いの良さに困ってたよね、君。結構可愛い悲鳴だったよ?」

なによーと戯れ合う両親を尻目に

興味深そうにネットで検索して何やら頷いているアクア。

私も気になったからアクアの隣に行き、見せて貰う。

「わー…この写真みたいに広いのかな?その牧場」

「宣材写真だから断言は出来ないけど、売りにしているみたいだし、2人が太鼓判を押す場所だから嘘でも無いと思う」

思いっきり走ることが出来たら気持ちよさそう…

「ルビーも気にいると思うよ?何しろ本当に一面緑だからね!ヒカルと行った時にルビー来たら絶対喜ぶ!って話をしていたの」

「うん、凄く行きたい!パパ、ママ、お願い!!」

「任して!ね?パパ

車よろしく!」

「任されたよママ、さーて、早速レンタカーの予約入れようかな」

「良かったなルビー」

「うん!『昔』はずっと病院の中だったから真一面の緑、みたいなのはTVや本の世界だったから…」

入院していた病院は緑に囲まれていたけど私は罹った病気の進行が進み、自由に院内の移動もままならくなった。

だけど「今」は違う。素晴らしいことに私は健康体で思いっきり走ったり、踊れる。

私はそれが嬉しい。

「…そうか。良かったな、ルビー」

「うん!」

アクアは少し何か思うことあるような表情をしていたけど、私はよく分からなかった。

「よし!!みんな!車取れたよ!」

「「「おー!!」」」

「出発は明日。牧場周辺色々あるみたいだし観光も楽しもう。」

「「いえーい!」」

ママと私はハイタッチ決めて何を着て行くか話し合い、パパとアクアは2人でHPとガイドブックひっぱり出してどのルートが楽で、何が見れるか話し合っている。

ママとパパは私達と過ごす時間を大事にしてくれている。それも沢山の思い出を作ろうとしてくれる。

…私、2人の子どもで良かったな。

明日が楽しみだし、早く寝なきゃ。

ーーーー

そして翌日

眠たい目をこすりながら何とか着替えて、タクシーを呼んでレンタカー屋さんへ。

パパも眠たいのかコーヒーのブラックとモンスターエナジーを飲んで目を覚ましていた。

私とママは車の後ろで爆睡してる間、お兄ちゃんが助手席で目的地入力したり、パパの話し相手になっていたみたい。

そして無事目的地に着いたのか、パパに起こされて飛び起きるとそこは……

「わぁ…!!」

緑緑緑…真緑の絨毯が広がっていた。

「凄い!凄い!凄ーい!!あはははは!広いよー!」思わず車から飛び降りてくるくるまわりながら走る。

一面緑の園。空は青く、どこまでも広い。

病室で見ていた世界よりも何百、何千倍と広い。

「ルビー、遠くまで行き過ぎたらダメだよー?」

「はしゃぎ過ぎだぞ、ルビー」

後ろからママとお兄ちゃんの声が聞こえる。

「はーい!あははは!わっ⁈」

嬉しすぎてくるくる回っていたら足が絡まって倒れてしまった。

「あー…転んじゃった」

仰向けになると空の青さと広さに改めて気づく。かつて私が居た世界よりも広大だ。

寝転んで空の青さを堪能しているとお兄ちゃん、ママ、パパが追いついてきた。

「割と派手に転んだが大丈夫か、ルビー。

地面が柔らかいから問題ないと思うけど」

「ルビー転んじゃったけど、怪我ない?」

「草が服に着いちゃってるね

服ぱんぱんしよっか」

ほーら、立ってね

とパパに立たせて貰って3人に服に着いた草を取り払って貰った。

「さ、ルビー。目的の施設まではみんな揃って行こうか。施設付近の遊牧地はたまーに糞が落ちてるから」

「え"」

私、結構危なかった?

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