約束
「はい、これ今日から君にテストしてもらうから」
「待ってくれ。流石にわけがわからないんだが」
久方ぶりに顔を合わせた友人(目元の隈3割増)に連れ込まれた工廠にあった一機の白いモビルスーツを見上げながらエグザべ・オリベは困惑した声を上げた。
ザクやゲルググよりがっちりとした駆体に、大きく膨らんだ足のスラスターはツイマッドのドムの系譜。
顔はモノアイを採用した如何にもなジオン系だが、胸部の形状等ゲルググやジークアクスのような連邦系の系譜に思える箇所があちこちに見受けられる。
肩や腰を覆う装甲は躯体に比して小さめだがかなりの数のハードポイントが設けられている以上、なにかかしらを追加装備する前提か。
全体的にどこかチグハグな印象を受ける機体だった。
ダイクン派
「これはうちの部署が今度のコンペに出す試作機よ。仮の型番はgMS-i」
「gMS……じゃあこの機体はジークアクスやジフレドの後継「違うわよ」じゃないのか」
困惑したエグザべの事もどこ吹く風、どことなくくたびれた白衣に手を突っ込んだまま、ツクヨもまたそれを見上げる。
「だってこの子、サイコミュ全く積んでないもの。積んでないから虚数のi……何よその目」
その言葉に思わずじっと見たエグザべの視線に気づいたのか、ツクヨが不機嫌そうにエグザべを見返した。
「いや、君がサイコミュを全く使わないというのが意外だからな」
「そりゃあ専門分野は本来はそっちだけどねぇ。生憎条約違反だし、それに何より…… 今はあんまり触りたくないのよ(ボソボソ」
何事か呟きながらツクヨはエグザべより前に出ると気を取り直したのか役者のようにばさりと白衣を翻して両手を広げる。
「それはそれとして!この子は予算度外視で数々の新機軸が盛り込まれた現時点での私(※シムス女史やヘッドハントしたハン博士も含む)の最高傑作!
ガンダリウムγにマグネット・コーティングを施したムーバブル・フレームで従来より大幅な軽量化と運動性の向上に成功したし、盾はジークアクスやジフレドの流用だから防御性能は折り紙付き!
ついでに胴体部分だけMCAを採用して空いた容積は従来より大型のM=Y核融合炉を搭載したその出力を活かして機体各部のハードポイントに追加装備を施せば各種任務に柔軟な対応可能!
更に更にサイコミュを搭載していないからジークアクスやジフレド、サイコと違って完全に合法!
これで次のコンペは勝ったも同然よ、あの木星帰り(※約2名該当)に吠え面かかせてやれるわ!!」
あーははははははと徹夜明けのテンションで高笑いをあげるツクヨを見ながらエグザべは困ったように頬をかく。
「よくわからないが……それならパイロットは僕じゃなくても良くないか?」
ぴしり、とツクヨが固まった。
「ど、どうしてそんな事言うのよ……?」
「いや、君がそんなに自慢するぐらいだから間違いなく凄い機体なんだろう。
なら僕より君の妹やニャアンに花を持たせた方が良いんじゃないかな」
エグザべのその言葉にツクヨが目を見開いた後、しばしうーんだのぐぬぬだのと唸りだし、やがて観念したように口を開いた。
「昔さ、研究部門に転属する時、エグザべくんたちに私が何言ったか覚えてる?」
「えーと……あぁ!」
『とっとと出世して、アンタらの機体も作ってやるわ。私はまだ特別を諦めちゃいないんだから』
「アレ、強がりではあったけど、軽口だったわけじゃないのよ」
「だから、今?」
「そうよ。悪い?生憎量産のための試作機だから、ジークアクスやジフレドみたいな一品物じゃないけど君の色にはしたのよ」
そう言われてみればこのMSのカラーリングは自身のギャンと同じ白に金の差し色だ。
どうやら本気で、ツクヨはエグザべのためにこの機体の色をこれにしたらしい。
「わかった。そういう事ならやらせてもらうよ」
「えぇ、私の渾身の機体をよーく味わいなさい」
「期待しているよ。ところで、この機体の名前は決まっているのか?」
「あぁ、そういや言ってなかったっけ。この子の名前は……」