筋肉にお願い

筋肉にお願い


アサ達は生徒会長に案内されて、デビルハンター部用のトレーニングルームに足を運んだ。

ランニングマシンやアブドミナルマシン、プレスベンチにバーベルなどのトレーニング用器具がそれぞれ数台ずつ置かれている。

「利用できる曜日は二学年ごとで決まっているのだが、今回は特別だ。次に利用のは入部が決まってからになるだろうが、使い方ぐらいは学んでいくといい」

ハルカは利用していた部員に事情を話し、ロッカールーム、武器の習熟や素手の格闘技能を磨く訓練場の場所などをアサ達に教えると、トレーニングルームを後にした。

「私達の武器って何がいいかな?フユちゃんは何で斧使ってるの?」

柔軟、という事で準備運動をしながらユウコはフユに尋ねる。3人は手足を動かし、身体を温めていく。

「丈夫だから。あと、狭い所想定したらあんまりデカい武器はイマイチって気がする」

「刀は…?」

「刀?アサちゃんって、剣道とかやってる?」

アサは首を横に振る。

「あ〜…刀ってさ、斬るところに垂直に刃を入れないと駄目らしいんだよね。

ある程度技が要求されるから、使っていくならその辺も意識して練習しないと駄目だよ」

「へえ…」

「フユちゃんがアサちゃんの立場だったら、何使うの?」

ユウコに質問されたフユは「槍か金属バット」と答えた。

「さっき、デカい武器はイマイチって言ってなかった?」

「狭い所用の動きを身につけるか、短い刀とか腰に差せばよくない?なんだかんだ言って、槍の長さは安心感あるだろうしさ」

槍の一番基本的な動きは、腰を入れて突き出す事だ。突きだけなら、今のアサの筋力でも訓練すれば実戦で使えるレベルになるかもしれない。

ただし、建物内や密室など槍の長さを活かせない場所での戦い方も考える必要がある。

「金属バットは重いけど技術いらないし、慣れれば悪くないと思うよ」

何を武器に使っていくにせよ、空間の広さを把握して、得物の遠心力を利用できる場所で戦うのが大事だ。

フユの蘊蓄を聞いていたアサとユウコはそれぞれ考え込むような顔になった。3人はそれぞれトレーニングに移る。

アサとユウコはトレーナーの指示に従い、軽めのダンベルをゆっくりと持ち上げ、降ろしていく。フユは1人、ベンチプレスを行なっていた。

「フユちゃん見てて思うんだけどさっ」

「ん?」

「私達っ、筋肉足りてないねって!」

「そうだねっ…」

2人が持っているダンベルは軽めの重量らしいが、上げ下げの回数を重ねる度に腕の辛さが増す。

ダンベルカールで腕をいじめたアサとユウコは、鏡でフォームを確認しつつスクワットを行う。上半身ばかり鍛えるわけには行かない為、大事なトレーニングだ。

「キッツ…」

「アハハ…明日は筋肉痛だね!」

学校を出る頃には、全身がくたびれて身体が重くなっていた。

「これ…毎日やるの…?」

「続けていけば、体も慣れるよ」

親がデビルハンターだからなのか、フユだけは疲労が表に出ていない。

「デビルハンターになる、ならないは自由だけど、デビルハンター部は続けた方がいいよ」

「なんで…?」

「身体を鍛えて強そうな見た目になれば、嫌がらせもしづらくなるだろうし。悪魔との戦闘経験を積めば、気持ちも強く持てると思うから」

「んふふっ!」

アサがフユの助言を聞いていると、ユウコが笑い声を上げた。

「何?」

「こめん!本当にごめん…ムキムキになったアサちゃん想像しちゃったら、おかしくて…!」

「えぇ…ムキムキって……」



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