第4話「作戦会議」
"それじゃ、作戦会議を始めようか"
一触即発だったカンナとワカモをなんとか仲裁した先生は地図をモニターに表示しながら説明を始める。
"まず現時点での部隊配置だね。チヒロお願い"
チヒロ「はい。まずこの画像をどうぞ」
モニターに表示されたアビドスの地図には、アビドス、反アビドス両軍の部隊配置が事細かに記されていた。
チヒロ「・・・アビドスと反アビドスの境界は大きく分けて2つ。一つはトリニティ=ゲヘナ戦線。もう一つはミレニアム戦線。
トリニティ=ゲヘナ戦線に配置されている兵力は、トリニティ2000、ゲヘナ6000、アビドス9000です。ミレニアム戦線はミレニアム5000、アビドス7000だね。数字上はアビドスが有利だけど、装備はミレニアムのロボット兵やゲヘナの装甲部隊の方が優れてるから、戦闘は一進一退の攻防になるね。次に私たちの戦力は・・・」
チヒロはボタンを押して私たち勇者PTならびに穏健派の部隊を表示させる、
チヒロ「ヴァルキューレより300名。それとそこにいらっしゃる勇者PT。以上。作戦をやるにはあまりにも少なすぎるね」
私、アリス、ワカモ、アキラ、ミネ、シロコの勇者PTに、カンナ率いる公安局から300人。
・・・。
あまりの差にシーンとなってしまった。
そりゃそうだろう。
万単位で人が動く戦場にたった300+αで行くことが確定したのだから。
"うーん。やっぱり少ないね"
先生。そんなわかってましたよみたいな感じで言わないでください。大ピンチです。
チヒロ「ゲヘナは全ての軍事組織が過激派で、私たちに賛同して先生の指揮下についてくれるのはほぼ0。ミレニアムは元は平和主義なのでそういう軍事組織はないし、トリニティはそもそも正義実現委員会が機能不全。中立の学校から兵力を強請るわけにもいかない・・・」
メガネを取り、額に手をやるチヒロ。
ワカモ「百鬼夜行も難しいですわね。停学になった私がいうのもなんですが、アヤメがいない今、百鬼夜行に動ける軍事組織は存在しません」
"・・・まぁとにかく、身近な人から誘っていこう。私たちは別にアビドスを滅ぼしたいんじゃなくて、丸く納めたい。しっかりと説明をすれば、ついてきてくれる人もいるはずだよ"
先生はいつのまに目をキリッとさせていた。
ミネ「そうですね。私は一旦トリニティに戻って、セリナ達を誘ってきます」
カンナ「ヴァルキューレに戻り、他の部門からも人を出せないか聞いてきます」
ワカモ「私は少し、裏社会の方に行って参りますわ。あなた様に別の女を近づけるのは癪なのですが、こういう特殊な戦いに最適な者達を知っておりますので♪」
アキラ「では私もそちらに」
シロコ「ん、誘える人がいない」
ぼっち!!!
"じゃあ、シロコはここを守ってね"
ん、と同意しソファに寝転ぶシロコ。
"あと、アリスとケイ。2人にはちょっとお願いがあるんだ"
先生は私たちを手招きする。
アリス「特別クエストですね!」
"そう。2人にはゲヘナの内情を探って欲しいんだ"
ケイ「・・・つまり、潜入ですか?」
"そうそう!スネークみたいにね。・・・流石にゲヘナの全員が過激派っていうのもおかしい気もするんだ。もしかしたら抑圧されているのかもしれない"
・・・なるほど。確かに悪魔族の集まりで、血の気が多い連中の集まりとはいえ、こうも意見がまとまるとは思えない。
だから探りを入れて、場合によっては彼らが脱出し、こちらに合流するのを手助けして欲しいということだろう。
アリス「なるほどわかりました!勇者と魔法使いの潜入クエストに行ってきます!!」
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ゲヘナ学園中央区
先生達の伝聞から想像した厳戒態勢ではなく、今のゲヘナは何故か賑わっていた。
しかしそれは観光などでの賑わいではなさそうだ。もっと別の賑わいだ。
『黄道同盟義勇軍志願者募集中!』
『青き清浄なるキヴォトスと、全ての学園の繁栄のために武器を取れ!前進せよ!』
『イブキを汚した者達を制裁せよ!』
あちこちにプロパガンダポスターが貼られ、義勇軍への参加を促す横断幕が張られている。
アリス「・・・すごいですね」
ケイ「・・・パンフレットによると、ゲヘナ自治区だけではなく他の自治区からも募られているそうです」
パンフレット置き場に置いてあったものを一部貰って読むと、この黄道同盟はゲヘナのみならず各地で志願兵を募っているそうだ。
ケイ「だからゲヘナ義勇軍ではなく黄道同盟・・・あれ?」
404。アリスがいない。
私が辺りを見渡すと、すぐに見つけられた。
アリスはいつの間にか、並んでいる人に話しかけていたのだ。
アリス「すいません!この並びは一体・・・」
ユキノ「私たちはF.Z.Aに志願するために来たんだ。SRTを再建するためにも、私たちは軍事的貢献を見せなければならない。そして少なくともこの危機を凌がなければキヴォトスは滅び、SRTは一生再現できない」
ケイ「アリス行きますよ。ここは私たちとは関係のない場所です。」
アリス「あ!ケイ!ちょっと〜」
ケイ「・・・さっきの人たちは志願兵。つまり自らの大義と意思で参加する者、日々の生活に困るスケバン、サーシェスのような戦争屋の集まりです。勇者パーティや穏健派に誘えるような人はいませんよ」
アリス「・・・そうですね。次はどこに・・・」
ケイ「・・・」
正直思いつかない。
ゲヘナには一切穏健派が見えないのだ。
中央区は志願者や物資で溢れかえって、さながら戦争が近づいていることを感じさせる。
そしてそれに人々は熱狂する。
その循環だ
私たちはあれから救急医学部や給食部を巡ったが、すでに施設はもぬけだった。
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翌日
チヒロ「少し増えたって感じだね」
セリナ、カヤ、ツルギ、イチカがパーティに加わった。
アリス「僧侶と遊び人が1人ずつ、戦士が2人増えました!」
パンパカパーン!と嬉しそうにはしゃぐアリスを尻目に、先生は5人に頭を下げる。
"ありがとうみんな。私の考えについてきてくれて"
イチカ「いやいや当然っすよ。正義実現委員会がほぼなくなったので私たちも動きやすくなったってのはあるっすけどね。」
カヤ「・・・何故私まで・・・」
ミネ「あなたは豚箱にいたので砂糖を摂っていないと思いました。・・・・ところで、貴方の私兵はどちらに?」
カヤ「ゲヘナに行きましたよ。盲目的に先生につくよりも、自分で考え行動したんでしょうね」
それ、本来は司法取引違反で七神リンブチギレ案件なのだが。
カンナ「ヴァルキューレも700人に増員しました。所属生徒のほぼ全員が先生のために行動します」
敬礼をしながらそう言うカンナ。
ケイ「・・・では最低限・・・」
すると、7囚人コンビが扉を開けて登場する。
ワカモ「連れて参りましたわ!あなた様のための剣を!!」
そう言うと同時に、4人の生徒が入ってくる。
サオリ「・・・・」
沈黙が流れる。
テロリストがテロリストを呼ぶ怪奇現象が起こってしまった。
アリス「あ、テロリストです!」
カンナ「か、確保ぉー!」
"待って!!今回は味方!味方だよ!!"
一連のウンタラカンタラが済んで、先生が話し出す。
"チャンスがあるのは開戦してすぐだね。そこでホシノたち上層部を私達が押さえる。部隊配置的にホシノとヒナは本拠地、ハナコはトリニティとの国境にいるはずだから、まず勇者PTは私と一緒にトリニティの方に向かってもらうよ。そこでハナコを説得する。同時にアリウスの4人とヴァルキューレには各地を遊撃してもらって、ホシノ達の身動きを封じて、できれば孤立させて欲しい。ヴェリタスは・・・"
チヒロ「開戦直後にミレニアム、アビドスに対しハッキングを仕掛けて初期の攻勢を遅らせる。向こうに余計なことをされると面倒だからね」
先生は満足げに頷く。
"それじゃあ、準備をしよう"
アビドス強襲作戦の。
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ゲヘナ
万魔殿:陸上6000人、海上3000人
風紀委員会:3000人
F.Z.A:5000人(ゲヘナ出身4000、学外出身1000)
トリニティ
ティーパーティー親衛隊:3000人
シスターフッド:1000人
ミレニアム
ロボ兵:5000人
アビドス
風紀委員会:1万人
自警団:2万人
ハナコ親衛隊:2000人
黄道同盟義勇軍(F.Z.A):キヴォトス各地で現在募集されている義勇軍。志願制なので階級などもない。過激思想も穏健派も戦争屋も吸い込んで勢いを増している。
おまけ:年表修正しました