第1話「帰ってきたケイ」

第1話「帰ってきたケイ」

ケイで行く砂糖事変の第1話です。作:アスラン・ヅラの人

「おや。名もなき神々の王女のミメシスを選ばれましたか。私はてっきり、大量破壊兵器を選ばれるのかと思いましたが」

黒いスーツを着た異形が、同じく黒いスーツを着た女性の選択を驚きと共に表する。

「アビドスの彼らを不用意に殺す真似はしたくないのか。あるいは・・・。もう持っているのか」

異形は顔を覗き込ませる。

やがて数刻を置いて、立ち上がる。

「まぁ、聞くのはよしましょう。貴女の選択は、もしかしたら世界を救う布石になるかもしれませんし、そうならなくても貴女のロボット工学の研究における重要な要素になるかもしれません」

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セミナー 特務室

「・・・・イ!ケイ!!」

私を強く呼ぶ声がした。あなたは・・・

アリス「あ!やっと起きました!!ケイは寝坊助ですね!」

・・・・?

私は眼球を動かし、声の主・・・王女を見る。

アリス「さぁ起きてください!急いで着替えましょう!今のケイは状態異常:すっぽんぽんです!この状態で他人にでも見つかったら1発アウトです!」

彼女は私の手を引っ張って起こし、クローゼットの方に急ぐ。

そして乱暴に開けると服をポイポイポイポイ出し始めた。

ケイ「ま、待ってください王・・アリス。私は今自分自身がどのような状況下に置かれているのか理解が・・・」

アリス「とにかく着替えましょう!あっありました。ここにチビメイド先輩の予備の服があります!!」

彼女は私に服を押し付けてくる。

ケイ「・・・少し小さいです・・・」

アリス「仕方ありません!後で代わりの装備を用意しましょう!!今はとにかくリオ先輩に話しかけに行きますよ!」

ケイ「あ〜」

引っ張られるままに私はリオ先輩のところに連れて行かれた。


リオ「・・・大丈夫?機関に問題はないかしら?」

私の周りをぐるぐると回りながら問いかけてくる。

ケイ「問題ありません。ですが、私がなぜこのようにアリスと同じ肉体を持つことができているかがわかりません」

私の代わりの服を探しにどこかへ行ったアリスを横目にリオ先輩は説明を始めた。

どうやら私をどうにかして復活させようと前々から考えており、色々な機材で試そうとしていたがなかなかうまくいかなかったそうだ。

そんなある日、偶然にもアリスと全く同じのボディを発見。それに私のセーブファイルを入れたところこうして受肉、定着できたようだ。

リオ「・・・あの時のことは・・・ごめんなさい」

ケイ「・・・別に大丈夫です。結果的に王女の、アリスの笑顔が守られたのですから」

すると、扉がバンと音を立てて倒れる。

アリス「ありましたよ!これで大丈夫のはずです!」

・・・リオ先輩。むしろ今は私がごめんなさいと言いたいです。


結局私は、アリスの夏服を着せてもらうことになった。少し肌寒い。

アリス「ささ、次はエンジニア部に行きますよ!防具は揃いましたしケイにぴったりの武器をウタハ先輩達に見繕ってもらわなければ!」

ケイ「アリス、私は別に武器はなくても・・・」

アリス「ダメですよケイ!キヴォトスでは非武装は恥ずかしいことですから!」

そうこうしているうちに、エンジニア部の部室に着いてしまった。

中に入ると、そこにエンジニア部の3人と、美甘ネルがいた。

ウタハ「うーん。ホバークラフトをつけたまではいいんだけどね。やっぱりバッテリーが厳しい。おまけに機動性も・・・」

ネル「って、どうも別の来客が来たぞ」

ウタハはおやと言うと、私たちに近づいてくる。

ウタハ「こんにちはアリス。それに初めましてだね。ケイ」

ケイ「はじめまして」

アリス「ケイの武器を探しにきました!」


あの後、私はとりあえず予備の拳銃をもらった。

とりあえずのものらしく、後で正式に私のために作ってくれるらしいが。正直この拳銃でもまあ十分だ。

そして私は、アリスと共にゲーム開発部の部室に来た。アリスが王女ではなく、アリスとして歩み出した最初の場所。

アリス「パンパカパーン!パーティメンバーが増えました!・・・」

シーンとした部室にアリスの明るい声が響く。

それだけ。

ケイ「王女。お仲間は」

アリスはあっ、えっとともじもじしながら答える。

アリス「その・・・今モモイ達はポイズン状態で、病院にいます。だから今アリスのパーティにはアリスとケイしかいません」

・・・なるほど。理解した。

彼女が私と一緒にいる間、妙に明るかったのはこのためだ。

彼女は寂しかったのだろう。

ここ数日間、この勇者はおそらく孤独に生きていたのだ。仕方がない。

ケイ「・・・やりますか?」

アリス「え?」

ケイ「ゲームです。やりますか?」

アリス「・・・・はい!」

・・・決めました。

私は王女の鍵になるのでもなく、アリスを見守るのでもなく

彼女の隣で、共に歩んでいくことにしました。

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しばらく色々な(クソ)ゲームをやり、遊び疲れたアリスは私の隣で眠りにつく。

ケイ「・・・寝てしまいましたか。」

私はアリスをソファに運び、毛布をかける。

すると、扉がガチャリと音を立てて開いた。

ケイ「!」

私は先ほどのゲームのように、最寄りの段ボールに隠れて様子を伺う。

「アリス〜・・・あ、いたいた」

白衣を着た女。・・・何者だ?

私の記憶に彼女は存在しない。

いや、いる。アリスが見たから絶対いるのだが、なんとなく違う雰囲気がする。

「ちょっと痛いけど・・・・」

彼女はアリスの横に膝立ちになると、腕から針状の何かを取り出した。

そしてそれを・・・

ガッ!

気がついたら私はすでに動き出していた。

白衣の女の右手を掴み、持っているものをアリスから逸らす

「・・・!誰!何するんだよ!!」

ケイ「王女に、アリスに危害を加えようとすることは許しません」

女は暴れて私の脛を蹴ってくる。

「おい離せ!離せって言ってるだろ!!!」

これくらいの弱い蹴り、私には効かない。

彼女の右肩に手刀を下ろすと、すかさず体を使い、地面に頭を叩きつける。

ひるんだ

この一瞬のひるみこそ、アリスが言う勝利の方程式だ。

私は彼女を持ち上げ・・・

ケイ「ここからいなくなれェーッ!!」

窓外に放り投げた。

ケイ「はぁ・・・はぁ・・・」

アンドロイドであるにも関わらず、肩で息をしてしまう。

それほどまでに激しい戦いだった。

ケイ「・・・まずいですね。色々と」

先ほどの戦いでコントローラーをひとつ踏み壊してしまったし、他にも大切そうなものを複数破壊してしまった。

ケイ「・・・ですが、気になりますね」

突き破った窓を見ながら、私は今までのことを思い返す。

あの時よりやたら少なかった生徒。

エンジニア部の隣にできていた、放射能標識が扉に描かれた部屋。

モモイ達の動向。

そして見覚えのあるあの白衣の女。

ケイ「・・・王女。一体私が眠っている3ヶ月程の間に、何があったというのですか・・・」

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