第二子ご懐妊
なんやかんやあって藍染が仮出所した感じです。
仮出所後の話です。
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「おめでとうございます。ご懐妊です」
真っ先に思った事は、娘を連れてきてなくて良かったということ。
そして次に思ったのは、なんとなく予想はしていたけど、ホンマに当たるとはなぁ。
それが自らの妊娠を告げられた平子の感想だった。
ほんの数ヶ月前。
現護廷隊では対処しきれないほどの事態に襲われ、再び制限付きではあるがあの男が無間から出された。
そこで素直に協力してくれてはい解決。になればよかったのだが、そんな可愛らしい素直な性格をしていたらそもそも無間になんぞ入っていない。
一時的に制限はあれど自由の身になるのだから、それを報酬として見ればよかったのに、藍染は一つだけ総隊長である京楽さんにある要求をしてきた。
昼行灯なフリをした食わせ者な総隊長は、うちが断らない事を知っていてそれを告げた。
『ただ一人、平子真子だけをここに連れて来る』
混乱や嫌悪よりも真っ先に、なんで?という言葉が頭に浮かんだ。
「……」
検査を受けた四番隊から五番隊の隊舎へ戻る道中、うちは平らな腹を撫でながら、只管どうしようと延々考えていた。
子供は産むのは絶対だとして、これは別に悩んじゃいない。
誰になんと言われようと譲るつもりはないし、もし反対されたなら現世に行ってまた喜助ンとこにでも世話になるしかないが、まぁそれはいい。いやあんまよくはないが。
問題は。
「……産休って、とれるんか」
隊長に復帰して幾年かは経つが、まだほんの数年だ。
正直最近の尸魂界の制度を調べていないからわからない。
というか、こういうのを調べる事になるとは全く思ってなかった。
この間嫁に行った娘になんて言おうか、とかも考えてちょっと気が重い。
なんて言えばええんや?妹か弟できるで!仲良うしてや!ってか?
下手したら娘の子供と近い年齢になるで???いやまだ孫なんて影も形もないけど。
なんて少しの現実逃避をしていたら、隊舎に着いてしまった。
このまま廊下を歩いて、執務室に着いたら元気で優秀な副官が仕事をしながら待っているだろう。
「……うん。まだええか」
隊舎前で一人呟く。
あの優しい副官に告げるのは、まだ先でいい。
ここ数日で訪れた下腹部への痛みは歯を噛み締め耐えて。
この子が姉のように元気に生きてくれますようにと、ただ願った。