第七サンクトゥムを吸血鬼レイサが刈り取る話
キヴォトス各所で虚妄のサンクトゥム攻略戦が行われるしばし前――。
7本目のサンクトゥム、本来であればC&Cの04が接敵するはずのそこに降り立った影が一つ。
常ならば騒がしいトリニティの吸血鬼。
その青い眼を紅に染め、どこか抜けていた表情には一分の緩みさえもない戦う者としての顔を知る者は
彼女がちょっかいをかけていた黒猫を含めて今のキヴォトスには誰もいないだろう。
立ち塞がるのは色彩に染められた数多の自動機械、聖女たちの複製、そして一際大きな3つの影。
ゴズ。
本来ならばスランピアにあるべきLibrary of Loreは色彩に塗り潰されて本質を失った怪猫の魔術師は、
しかして最早ガワだけの別物とは言え既にダミーを展開したその脅威に変わりはない。
だが、それさえも吸血鬼の表情を動かす事は無かった。
背負った愛銃も構えず、己の胸に右手を当てぞぶりと埋没させる。
突然の自傷行為にも動揺することなく距離を詰めてくる色彩の尖兵たちを前に、
何かを探すかのように右手を動かしそして何かを掴んだかのように引きずり出す。
否、掴んでいた。
血のように赤く染め上げられた、明らかに吸血鬼の中に収まりきらない長剣がずるりと姿を現す。
かつて彼女が己の不義によって失った1本目の愛剣でも、湖の乙女に返却した二本目の愛剣でもない。
人間としての彼女の命を奪った、彼女の娘が簒奪した剣こそが今の愛剣。
彼女自身を鞘として収められていたソレは、数百年の合間に彼女の血に染められた魔剣と化していた。
剣を正眼に構えれば立ち昇るは赫い極光。
このキヴォトスにおいては有り得ないはずの必殺の体現に初めてゴズたちに動揺が走る。
彼女とてキヴォトスでこれを振るう気は本来なかった。
透き通った青春物語というテクストが揺らいだ今のキヴォトスでなければ、
これを振るう事はそのテクストに亀裂を刻み込みかねなかった。
彼女含めて生者のいない、これを生きて観測するもののいないこの場でなければ、
テクストが揺らぐ今のキヴォトスでもこれを振るう事は危険だった。
だが、魔剣の封は既に解かれたのだ。
赫き光は臨界に達し、魔剣は全てを薙ぎ払うのを待ち構えるばかり。
「クラレント――」
叫ぶは魔剣の銘と、
「ブラッド■■■■ーッ!!」
血を吸う鬼に堕ちた今の彼女を表す言の葉。
横薙ぎに振るわれた光はダミーごとゴズやその他の軍勢を飲み込み、
その勢いのままにサンクトゥムを伐採した。
レイサ
過去が某セイバーの人寄り。
円卓は割れるし国は滅びるし娘を殺すし殺されかけた。
クラレント
レイサの兜にめり込んだままだったのを、元々レイサのものだったのでそのまま所有。
レイサちゃんの血液に浸されていたのですっかり真っ赤っ赤と化した。
最後のアレは某モーさんのアレと読み方そのまま。
吸血鬼ななんとか王こそどんなにとぼけていてもレイサの本質。