立つ鳥跡を濁さず
「お、お待たせしました…。」
私はまた、あの店で働いていた。
これからアビドスを去り、最低でも2人で生きていくには資金が必要だった。
既に純潔を失った上、孕まされてもしまったのだ。
愛用の品や家まで売り払い、最早失うものなど殆ど無い。
後は私の尊厳なんていうちっぽけなものを捨てればいい。
そう、それだけ…それだけでいいはず…なのだから。
「遅ぇぞ、何やってんだアバズレが。」
「ひっ…!?ご、ごめんなさい…!」
しかし、それでも明確に後悔していることが一つあった。
それは、店長に妊娠した旨を悟られてしまったことだ。
店長からすれば避妊の心配が要らなくなった私は、生膣内射精フリーの最高の商材。
気がつけば私に振られる業務はそればかりになっていた。
故に今日も私は媚薬を飲まされ、裸同然の衣装を身に纏い、火照った身体でお客様の下へ向かう。
「ったく…ほら、さっさとここに座れ。」
「…はい。」
お客様が手で叩いて指し示した場所は、当然の様にお客様の膝の上。
そこにはグロテスクな見た目の、明らかに平均よりも大きな殿方の剛直が、屹立していた。
「失礼、致します…」
お客様が腰掛けるソファに足を掛け、お客様のお身体をガニ股で跨ぐ。
このまま座ればその剛直が私の中に入る状況。
ここに至って私は、今の状況を完全に理解する。
(う、嘘……こんなの、入らない……!?)
大き過ぎるのだ。その反り返る剛直が。
今まで見たどのモノよりも大きく、長い。
思わず怖気付く私。だが、お客様はそれを赦さない。
顎で私に『早くしろ』と告げていた。
「っ…!」
私は意を決して腰をゆっくりと落としていく。
ここで逡巡し続ければ、目の前の乱暴そうなお客様は何をするか分からない。
その恐怖が勝ったのだ。
だが、理由はそれだけではなかった。
(これだけ大きければ、もしかして…)
脳裏に浮かぶあまりに短絡的で外道な考え。
媚薬で茹だった頭では深い考えなどあるはずも無く、下心を抱いたままお客様の剛直と私の秘部がにちゅ、という水音と共に触れ合う。
「ふっ……う”……うぁっ………!!」
みち、みちみちみち…
ゆっくりと秘部が押し開かれ、剛直を私の肉が包み込んでいく。
普段感じている膨満感は更に酷くなり、私は自分が呼吸できなくなっていく事を感じる。
しかし、その行動は緩慢が過ぎた。
「いつまで待たせる気だ、いい加減にしろ。」
「え…?あ、待っ…!?」
お客様は私の両膝裏を抱えて持ち上げる。
そんな事をすれば何が起きるか。
それは────
「ぎあっっっ!?!?」
「ふぅ……初モノじゃないにしては中々良い締りじゃあないか。」
串刺しに他ならなかった。
「ぁ………が………ひぁ………!」
一気に押し広げられきった膣肉。
膨満感は限界を越え、息を吸うことすらままならない。
視界は明滅し、膨らみだしたお腹は更にその剛直の形に浮き上がる。
本来であれば、こんなことをされれば激痛に泣き叫んだことだろう。
だが私は、そうはならなかった。
「お…んお”ぉ…!げぅ…へ…へぁ…?」
「な、んで…?こん、な…気持ち、良…!?」
「んいぃ……い……イ”、グぅ……!!」
今回のお客様のモノで、私は気づいてしまった。
以前にされた実験で得た再生能力が作用してしまっていると。
引き延ばされ、裂けた膣肉はその都度再生していく。
それに人の身体に標準的にある適応能力が働き、私の膣肉を性交渉に適したものへと変えてしまっているのだ。
端的に言えば私は、『使われる度に最適化されるオナホール』になってしまっていた。
「具合は良いが腰もロクに振れんか。まあいい、好きに使わせてもらおう。」
「ひぎゅっ!?あ”っ、あっ、んぁっ、おぉ…!!」
ごずん、ごずん、と身体ごと持ち上げられ、その剛直に自身の内側を抉られる。
次第にその音はぶじゅん、ぼじゅん、ずりゅん、と粘性のある水音を更に伴う様になった。
こちらを全く気遣わない、あまりに乱暴な扱い。
それはまさしく『物』の扱い方だった。
だというのに私の身体は肉悦に震え、あろう事か幸福感まで感じてしまっている。
媚薬の効果もあっただろうが、下の口からここまでの汁を垂れ流していることがその証左だろう。
「ん……ぁ………ふぅっ……!」
しばらく抽挿が続いていると、私にも慣れが出来てきた。
お客様の胸におっぱいを押し付ける様な形で体重を預けていた私が視線を軽く上げると、お客様は私を見てもいなかった。
どうやらこの店に連れ立って来た他のお客様と話をされている様だ。
しかし、その油断がいけなかった。
お客様と私の目が合ったのだ。
「ほぅ、こいつは…おい、そろそろ出すぞ。」
「ひぐっ!?う”、んお”っ、おぉ、おほぉぉぉ…!!」
途端に激しくなる抽挿。
先程までの、私が慣れてきたと思っていたものはただの前座に過ぎなかったことを思い知らされる。
内臓が飛び出すかと思うほどの突き上げが始まったからだ。
「げうっ、ひぎゃっ、んぎぅっ、え"ぅっ!?」
断続的にぼぢゅん、ぼぢゅん、と肉塊が肉袋を穿つ。
それと同時に、私の喉から勝手に出てくる短い悲鳴。
衝撃と凄まじい快楽で私は気絶する。
だが、その時間はほんのわずかだ。
次の突き上げにより嫌でも覚醒させられるから。
故に、私は気絶と覚醒を繰り返し続ける。
そして、正しく認識できていなくても、この出来事が脳に記憶という形で焼き付いていく。
それはさながら、焼印を焼き付けられたかのように。
何もできず、足を引っ張るだけの無能な自分が行き着いた果て。
それは、『自分が何かを成す』のではなく、『自分で何かを成してもらう』事なのだと。
…こんな事になるのなら、私は最初からここでお金を稼ぎ続けていれば良かったのかもしれない。
「っ…!しっかり受け止めろよ…!」
「がっ、ぐあっ、げっ、まっ、っでぇっ…!!」
お客様のその言葉に、反射的に制止の言葉が出る。
だが、私ごときの言葉が、誰かに届くはずもなかった。
「あ”っ!?げううぅぅ!?!?」
胎に感じる凄まじい熱。
それはどぐん、どくんと脈打つ様に広がり、私を内側から灼く。
あの日、あの時、何のロマンスも無い、トイレという不衛生な場所を想起する。
この胎の────子を宿すこととなったものを。
「げ……ぁ………ぐ、ふっ………………」
抽挿が止み、漸く私は気絶することができた。
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「……………」
誰もおらず、星明りだけが足元を照らす夜道を歩き、もうすぐ売り払う自宅へと向かう。
足取りは重くない日など無かった。そして特に、今日はいつもより酷い。
あの後私は貫かれたままで、起きたらまたお客様が始めるという繰り返しだった。
結局お客様とは6回もすることとなり、就業時間で膣内に何かが入っていない時間の方が短かったのだ。
おかげで今は、”何かが入っていないという違和感”が凄まじかった。
…ああ、本当に、気持ちが悪い。
「ぁ…」
アビドスの校舎が見える位置まで帰ってきた。
だが校舎内には明かりは無く、皆自宅へ帰ったのだろう。
誰も居ない、閑散とした校舎。その光景に、私は恐怖を感じた。
「早く…早く居なくならなきゃ…」
膨れた腹を摩りながら、独り言つ。
私は本当に、最低の無能だ。
子をおろす勇気が無くて、あわよくばお客様に、なんて思ってしまった。
いくら媚薬で茹った頭だったとは言え、本当に、最低だ。
落ち着いた頭で考えれば考える程、自分を蔑む点が増えていく。
子持ち学生を抱えられるほどアビドスに余裕は無い。
ましてや、足手纏いなど以ての外だ。
こんな穢れた私は、皆さんに相応しくない。
だから早く。一日でも早く。
「………ぐすっ。」
寂しい。
胸が氷水に満たされているかの様な冷たさを感じる程に、寂しくて、悲しい。
どうして私には知恵も力も無いのだろう。
それらがあれば、こんなことにはならなかったのかもしれないのに。
「赦してください、皆さん…最後は…迷惑をかけませんから…」
アビドスの校舎にそうポツリと呟き、私は背を向けて歩き出す。
路面の砂に、小さな雫を残しながら。