私のあだ名が『裸エプロン』になった話

私のあだ名が『裸エプロン』になった話


私が列強の兵器ジークを破壊し、ロゼを救出してから数日が経った。


「…レイ、先日は命を救っていただきありがとうございました。」


私の部屋に入ってきて早々そう言って、ロゼは深く頭を下げた。


「いや、別にそんな……。」


私は慌てて彼女に頭を上げるよう促した。


「…寛大な処置になるように嘆願までしてくれたと聞きました。感謝してもしきれないです。」


確かにロゼの言った通り、彼女の処遇は彼女の境遇と私の嘆願を鑑みて『捕虜』という形にはなっているものの、特に拘束などはされておらず、基地内の機密区画以外は自由に行動する事が許される程の甘いものだった。


「貴女に受けた恩を返すため、私に出来る事があれば何でもします。」


ロゼは真剣な眼差しでこちらを見つめてくる。

何でも、何でもかぁ…何かお願いしないと梃子でも動きそうにないし、ロゼと仲良く

なりたいという気持ちもあるしここは一つ。


「じゃあ、お腹減ったしロゼの手料理が食べたいな?」

「…手料理?そんなもので良いんですか?」

「うん、ここ最近ずっとレーションばかりだったから美味しいものが食べたいんだ。」


それもあるけど、本当は女の子同士で一緒に美味しいものを食べるっていうのに憧れてただけだったり…。


「…分かりました、腕によりをかけて作ります。」

「あ、そうだ!料理するときに使って?」


私はかつて料理にチャレンジして失敗して以来、部屋の奥底に仕舞い込んだエプロンを取り出して手渡した。


「……っ⁉︎わ、分かりました…貴女が望むのでしたら…。」


ロゼは何故か顔を少し赤くして俯きながらエプロンを受け取り、一緒に食堂へと向かった。


「あの…レイ、エプロンを着けるので後ろを向いててもらっても良いですか?」

「ん?いいよー。」


言われた通りに私はくるりと回ってロゼに背を向ける。


「……どうでしょうか?」


しばらくすると声をかけられたので振り向くと、そこには……

何故か裸エプロンのロゼがいた。


「な、なな、なななんでそんな格好を…?」

「…エプロンとは裸の上に着るものでは?かの国で学んだ資料にはそう記載されていましたが……?」


彼女はキョトンとした顔でそう言う。

列強の常識学習用の資料はどうやら取捨選択出来てなくて変なのも混ざっているらしい。


「…貴女に求められるとは思いませんでしたが、決して嫌とかではなく……」


ゴニョゴニョと呟いているロゼの言葉を聞いているうちに、ついつい可笑しくなってしまって笑い出してしまった。


「ふふっ、あははっ!……ロゼ、エプロンはね……」


私は軍内で変な噂が囁かれる前に初めての友達であるロゼへ、エプロンの正しい使い方を教え始めるのだった……。


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