神木家と夏祭り
8月某日 神田明神納涼祭に僕たちは来ていた。
元々夜には家族で行く予定だったが、
アイがこの祭りの様子を伝えるレポーターとして参加するのでその様子を見に行かないか?
と子ども達に提案したところ大変乗り気に。
本来の約束した時間よりも予定よりも早めに家を出て、アイにはサプライズとして会場に来たのだ。
だが思っていた以上の人混みで顔が引き攣ってしまった。
アイに会うまでが大変だぞ、これ。
「おお…なかなかの人混みだね…アクア、ルビー。お父さんの手を絶対離さないように。」
「ならパパ、肩車して!私は上からママ探すから」
「ルビー、父さんは体力無いから無理させるなよ」
「アクア、お父さんだって鍛えているからね?毎日コツコツ筋トレしているからね?だからその訝しげな目線はやめなさい。
…ルビー隊員、君にはヒカルロボのパイロットを命じます。さぁ、お乗りください。」
わーい!と喜ぶルビーを持ち上げて首に乗せる。大変ご満悦な様子で足をぶらぶらさせている。肩に当たって痛い。
「パイロット!カッコいいかも!!お兄ちゃん良いでしょ〜?」
「いや、ただの肩車だろ。父さん、甘やかすと碌な大人にならないぞ、コイツ」
「世の中全て悟った気になってるヤレヤレ系になりそうなアクアには言われたくない!」
頭上と足元で喧嘩する我が家の双子達。
仕方ないので同じ目線になって貰おう。
「こらこら、喧嘩しないの。
さ、アクア隊員も背中は任せます。お乗りください」
「え、ちょ、うわ⁈」
左腕でアクアを抱き抱えて背中に乗せる。
子ども達2人と合体した僕は無敵だ。
ちなみにアイを抱き抱えると最強のアルティメットカミキロボになる。
命名者はアイとルビーだ。
なお僕の負担を無視するものとする。
「アクア隊員、ルビー隊員。ママが居るか探してくれない?僕はほら、この人ゴミを縫って向かうからさ」
「了解です、隊長!」
「了解、父さん…隊長の方が良い?」
「隊長の方がテンション上がるね。お父さんも男の子だから」
子どもの頃からこういう遊びしたこと無いから余計に。
あとアクアもノリに合わしてくれるのありがたいね。
「「「あ”っっづ”」」」
現在カミキロボは疲弊していた。メインパイロットのルビー隊員の要望聞きながら出店に並んで飲み物やたこ焼き、鯛焼きなどを買って食べながらアイが居るであろう境内に向かうが流石に人混みを避け切るのが限界が来た。
我らの双子もグテーンとしている。可愛い。けど可哀想なので買ったジュースを上げる。
「パパも飲まなきゃダメだよ?」
「父さん全然飲んで無いよな?筋肉無いから熱中症には弱いし」
「大丈夫大丈夫。持って来た水筒で水分補給してるから。それにしても…多いね」
見渡す限り人人人…思い付きてやる物じゃ無い。少しだけ賢くなれた気がする。
「父さん、俺を降ろして良いよ。父さんの疲弊が心配だ。何処かで休憩しよう」
「そうだよ。私達背負ってしんどくないの?」
「いや大丈夫。アイに会えば任務完了だし…」
こちらを心配する2人の心遣いは嬉しいが、父親としてカッコいいところを見せたい。
アイが居るであろう場所に行けば、後は家族で緩やかに回るだけ。そう思えばやれる。
「ほうほう、私に会えば任務完了ですかヒカル隊員」
「マ…お姉ちゃん!」
「アイ!」
「可愛い私の隊員達!合流任務おめでとう!!いやーさっきルビーからLINE貰った時はビックリしたよー
ヒカルも無茶な思い付きするよね。
合流出来ない可能性あったよ?」
「面目無い。TVで映る君の浴衣姿を肉眼で目に焼きつけたくてね。凄く似合っていたから」
突如後ろから現れたアイに背中のアクアと首のルビーを奪われてしまった。カミキロボからただのカミキヒカルに合体解除。
同時に、ニヨニヨ笑いながら僕の肩を軽くパンチするアイ。見たかった浴衣は既に着替え終わっていてオフ用の姿だ。少し残念。
「わ、汗ダクダクだね…ヒカル、この子達の着替えは?」
「抜かりないよ。リュックに入れているし。
アイ、ルビーの着替えはお願いして良い?アクアは僕が着替えさせてくるし」
「オッケー♪じゃあ5分後にここね」
「ああ5分後に」
アイはルビーを連れてロケバスに向かう。おそらく斉藤社長も居るし、なんとかなるだろう。
僕は僕でアクアを連れて近くのトイレへ向かう。
「アクア、上だけ着替えよう。風邪ひくし」
「そうだね、確かに着替えたかったからありがたい。
…父さん」
「なんだい?」
「カミキロボのパイロット席今度ルビーと交代していい?僕も違う景色見てみたい」
「勿論さ!何時も遠慮気味だけどドンドンやりたいこととか言いなよ?お兄ちゃんだから、て我慢しなくて良いし」
話をしながら素早く着替えさせ、僕も着てきたシャツを脱いで洗い物用のビニール袋に入れてリュックに直す。子どもと出かける際は着替え一式入れた鞄と洗い物用の袋は必須だ。
「遠慮してるつもりは無いけどなぁ…」
「してるしてる。ルビーいないところでこっそりお願いしているあたりとか、ね。
君は我儘しなさすぎて不安になるからもっと我を通しなよ、アクア」
「…わかった。頑張るよ」
「よし!着替え終えたしお母さんのところに行こう。何食べたい?」
「無難に…たこ焼きかな」
「僕はゲソ焼きだね。あるかな?」
自分の欲しいものを言ってくれるアクア。
少しずつで良いから我儘言ってくれて良いんだよ君も。
戻るとアイとルビーが待っていた。
アイがルビーの髪の毛のセットを変えてあげた様だ。可愛らしい。
「じゃあみんなで回ろうか!カミキロボ、分離フォーメーション!!アクア、パパの左手!ルビー、ママの右手!私はヒカルの右手!!」
「「「フォーメーション!(…僕もやらなきゃダメかぁ…」」」
アクアは少し恥ずかしそうだけど小さく応えてくれた。
家族横一列に並んで手を繋ぐ。
やりたかったことの一つだ。
「さてさて、みんな!花火が上がるまで食べたり遊んだりしよう!」
「「おおー!!」」
「おー」
思い出に残る良い夏祭りになりそうだ。