砕けた宝石

砕けた宝石


「ようやく、押さえられた」

母と子、アイとアクアの燃え盛るような激しい情事はスマホのカメラのシャッター音で唐突に幕を閉じた。

「ママ、アクア。見てよこれ。凄く綺麗に撮れてるでしょ?」

そう言ってルビーが突きつけるスマホの画面には、あられも無い二人の姿が収められていた。

一糸纏わぬ姿、傷一つ見当たらない完璧な体を惜しげもなく晒して兄の上にまたがり、結合部から白濁を滲ませながら腰を打ちつける母親の姿。

そして、蕩けた顔を浮かべて自らの体を貪ってくる雌から必死に目を逸らして、目元に涙を浮かべる兄の姿。

「凄いスキャンダルだよね。今を駆ける天才親子が、裏では男女の仲だなんて。これ、どこに流せば良いのかな?」

右手で杖をつきながら、空いている左手で器用にスマホを操作し、どこかにメッセージを送るようなフリをする。普段のアイとアクアなら、ルビーの行動がただの演技、ハッタリだと見抜けただろう。

だが、情事の直後の火照った体と、禁忌を犯す姿を見られた罪悪感に蝕まれた二人の脳では、冷静な思考などできるはずもなかった。

「待っ、待って!ルビー!」

毛布一枚巻きつけてスマホを奪おうとアイの腹を、ルビーは杖で突いてベッドに押し戻す。突然の衝撃で過呼吸気味になったアイを、ルビーは冷たい光を帯びた目で見下ろしていた。

「アクアもさ、黙ってないで何か言ったら?」

「……すまない」

「それだけ? けがらわしい……」

アイに無理矢理迫られていた立場だと言うのに、言い訳一つ漏らさずに人形じみた美しい顔を涙で濡らし続けるアクアを前にして、ルビーも多少なりと思うところがあった。

ただ一方で、アクアの口角が僅かに吊り上がり、歪んでいた事を彼女の目は見逃さなかった。否、見逃せなかった。

アクアは喜んでいたのだ。母親との狂った関係を、誰でも無い自分の肉親に暴かれた事を。そして、これを機にこの関係を精算できる事を願っていた。

……アクアだけ逃す訳ないじゃん。

「二人とも、最低だよ。家族として恥ずかしい」

ルビーはおもむろに杖を投げ捨て、倒れるようにしてベッドに仰向けに寝転がった。

「だからさ、私も最低になってあげる。アクア……お兄ちゃん、私も抱いて?」

アイとアクアの端正な顔が急速に青ざめ、壊れるように歪んでいく。この場で兄の呼び方を変えることに、どんな意味があるのか。ルビーはその効果をよく理解していた。

ぷちぷちと、一つ一つ外れていくルビーシャツのボタンは絞首台への階段のようだった。一つ一つ、一段一段。

「よせ、ルビー、やめるんだ」

「ルビー! やめて! 兄妹でこんなこと……!」

「自分の子供を犯してる母親と、母親とヤッてる兄の言葉なんて聞きたくない」

シャツのボタンを外しきり、ブラジャーも外してトップレスになると、今度はスカートのファスナーに手をかけた。

ルビーが生まれたままの姿になるのに、数分も掛からなかった。ツンと重力に逆らうお椀型の胸。そこから伸びる引きしまった体のライン。秘部を隠す、整えられた逆三角形のヘアー。

母親譲りの美しい裸体を惜しげもなく晒し、自分の魅力を誇示するかのように、青くなったままの二人に見せつける。

「でも私、ここまでしてもママみたいにお兄ちゃんの事、襲えないんだよね……足が一本、ダメだから」

ルビーがそう呟いた瞬間、アイはヒュッと過呼吸を起こしかけた。

ルビーの体は誰が見ても完璧だった。たった一か所を除いて。太ももの辺りにまっすぐ伸びる白い線。何針も塗ったであろう切り傷の跡。

それは、アイの命を守った代償。

「ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……」

「星」の消えたアイの瞳から、雫が垂れてベッドのシーツに染みを作る。その謝罪は彼女の犯したミス、「どれ」に対応するものなのだろうか。

恐らく、全てなのだろう。

「だからさ、お兄ちゃんが私の事を犯すの。お兄ちゃんが自分の意思で挿入して、自分の意思で腰を振って、自分の意思で種付けするの。それなら寝転がるぐらいしか出来ない私でも、お兄ちゃんと出来るでしょ?」

そう言ってルビーは放心状態のアクアの腰に、足を絡めた。ずっと守り続けてきた未通の一本筋を見せつけ、指でサーモンピンクの中を開くまでする。にちゃりと粘っこい水音がして、下の口から涎が垂れた。

「ルビー、頼むから……こんな事もうやめてくれ……」

「そう……お兄ちゃんはどこまで行っても、ママが一番なんだね」

羨ましい。妬ましい。

「良いよ。抱いてくれなくても。お兄ちゃんが一番大切な物……ママの事を壊してあげるから」

今度はアクアの方が動悸を起こし始めた。胸元を苦しそうに押さえて咳き込む兄の姿すら、何故か今のルビーには愛おしくさえも思えた。

「でもやっぱりしてほしいな……そうだ、ママ。ママと一緒ならお兄ちゃんの事犯せそうだよね」

アクアが言葉の真意に気がつく前に、彼の体はがちりと拘束された。虚な目で「黒星」を浮かべたアイが、アクアのことを羽交い締めにしたのだ。

「アイ……何して……」

「ごめん……ごめんね……アクア」

「そうそう。上手だよ、ママ」

動けないアクアの腰に、ルビーはさらに足を絡めて、彼の言葉に反して固く反りたった肉棒を自らの秘部へとあてがった。

「二人とも、やめてくれ! このままじゃ、俺は……また……!」

アクアの懇願は、ルビーの耳にもアイの心にも届かない。やがて、アイが柔らかな乳房を押しつぶすようにしてアクアの背中に体重をかけるとーー

ぶつん

「……う……づ……いた……あぁ……」

それは形容し難い痛みだった。溶けた鉄を流し込まれているような、内臓を刃物で引き裂かれるような。

ルビーの秘部にはアクアの肉槍が深々と突き刺さっていて、結合部から滲んだ血が互いの性器を汚していた。

不意に、自分の胸にぽたぽたと水滴が垂れてくることに気がついた。視線を結合部からあげると、予想通りというか……アクアがまた涙を流していた。

「また俺は……ルビー……何で俺は……ごめんなさい……ごめんなさい……」

アクアもまた、目に「黒星」を浮かべていた。綺麗な瞳だと、素直に思う。

光は何もかも照らして焼き尽くすが……闇は全てを飲み込み受け入れる……

「そんな顔しないで……アクア。一緒に気持ちよくなろう?」

少しするとアクアを羽交い締めにしたアイが、彼の体を無理矢理動かし始めた。背中に体重をかけたり、反対に引き戻してみたり。そうやってアクアにルビーの事を無理矢理犯させる。

「二人ともごめんね……」

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