知らぬ存じぬ誰かの心

知らぬ存じぬ誰かの心




夢、夢、夢か。

ないな、考えたこともなかったけれど。

そんな人生ではなかったし。

生き急ぐしかできなかった。


人もいなければ場所もない。

悲観するわけではないが、少し違った環境にいた。

そう思っている。

将来、そう...将来のことなんて、考える余裕もない。

何かを失って失いたくない、そんな毎日のような気だった。


もし、何か宝物ができたらどうしよう。

大きな夢ができたらどうしよう。

大切な誰かができたらどうしよう。


守る?

蔵う?

助ける?


分かるはずもない。

知られぬことならば知る由もない。

夢なんてものを抱く余裕もない。

それだけじゃない。



もう、夢を見るには遅すぎた。

人生も、時も、何もかも。

虚無感を埋めるものは何もない。

それは、かつて存在し消えた僕の心そのものなのだから。


埋めてくれる人に会う?

それとも埋める代わりを見つける?

それが夢たり得る?



そんなわけがない。

それに、埋まらないから何なのだ。


それが、今の僕がかつての僕に手向けられる傷であり、花であり、唯一の証だ。



じゃあ、仮に埋める何かができてしまったら?


その時は、全身全霊で守る他ない。

人であれ物であれ、大事に守り、人であれば幸せを、物であれば存続を。



分かってる、分かってますよ。

それが一生物の傷になることだって。



でも、そうだな。

もし、傷になり得ることがあったら、

人であればその人の意思とは裏腹の行動を。

物であればその物とは裏腹の破壊を。


あ、勿論自分がやれる限りの範囲で、

やればいいかな。



その未来が、来ないように祈る他はないけれど。

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