真新しい手記・41
新作だー!\太陽万歳!/
執筆お疲れ様です…!
『恐れ』
前回のあらすじ
・ローとドフラミンゴの再会。
・詳しくは前話を参照頂きたい。
頼む。詳細はちょっと…書けない…
今回は前回に引き続きロー視点の物語。
語り部も引き続きローが務めます。
参りましょう。
【月夜を疾走る】
・前回の物語にて、ローはドフラミンゴより託された鍵を握りしめながらヤーナムの夜を駆けてゆく。
走る、走る。
己に託されたものへ、秘匿の元へ。
掌に握るは、人を焼く血が滲む鍵。
その血に焼かれる痛みすらも、置き去りにして。
「ロー!!無事か!」
気付けばローは、片腕に気を失ったシュガーを抱いた鴉羽纏いしの女狩人…狩人狩りに腕を掴まれていた。
「……狩人狩り」
・狩人狩りは口を開く。
「そちらは危険だ」
「シュガーの能力が解け、獣化した者達が道を塞いでいる」
「待機中の狩人達が相手をしているが…あの数では分が悪い」
狩人狩りの言葉に、ローも我に返る。
ローは上層の渡り廊下から孤児院の中庭を見渡す。
階段を飛び降り抜け道を目指して駆け抜けようとした「そこ/場所」では、獣達を相手に数人の狩人が奮戦していた。
「何があった」と、ローが問えば、
「CP9を名乗る男がシュガーを気絶させ、連れ去ろうとしたところを聖歌隊員が阻止したと、そう聞いている」と、狩人狩りが答える。
「CPが…!?狙いは秘儀か?」
「…そのようだ」
「初めは交渉を持ちかけてきたそうだが……結果はこの通りだ」
「クソッ!!」
世界政府側の機関からの聖歌隊…シュガーへの襲撃に、「シュガーの気絶」という最悪の事態が発生した事による「獣の病」を押し留めてた「楔」の決壊。
結果、聖堂街上層に獣に加えて獣化した者達も溢れるという事態となった。
思わずローも悪態をつく。
・ローは掌を焼く水銀の鍵をひとまず懐にしまい込み、鬼哭を引き抜く。
天竜人の血を引く獣を治す術は、まだ確立されてはいない。
「ロー」
狩人狩りが、ローを呼ぶ。
なんだ、と言いかけたローの言葉は、喉の奥に引っかかり消えた。
いつの間にか昇った赤い月。
狩人狩りの姿を照らすその光は、狩人狩りの静かを湛えた表情と、己の血で染め上げられた鴉羽の装束を浮かび上がらせる。
「狩長殿は、お前に全てを託したのだな」
ごほ、と彼女が、狩人狩りが言葉の後に血を吐き出す。
それは彼女が、臓器に損傷を負っている事を表していた。
・早く治療を、と顔に出ていたのであろうローを、狩人狩りは「…治療はいい」と制す。
「血に酔った狩人達が迫ってきている」と、彼女はローに伝える。
「血に酔った…?どういうことだ」と疑問を呈するロー。
それもその筈。狩人達が血に酔うことがないように、そうなる前に「聖血」を抜き取り管理していたのは、紛れもなく自分自身…「奇跡の医療者」の仮面を被ったロー自身なのだから。
「拝領の時期からは考えられないことだが…」
「私が会場に駆け付けた時点で、件の獣を狩った者達のほとんどが正気をなくしていた」
そう告げる狩人狩り。
「獣一匹相手にしただけだろうが!一体どうなってる!!」
ローの吼えるような言葉達が、夜に響く。
会場に乱入した狩人といい、対処にあたった連中といい、何かがおかしい。
・混迷する事態の推移に憤りを隠せずにいるローに、狩人狩りは更に告げる。
「それと…上層に放たれていた赤目の獣……悪いが狩らせて貰ったよ」
「!?」
「あいつらもう復活していたのか…!」
ローもルフィも、CP9の手により上層に放たれた赤目の獣達を、倒しはしたがトドメは刺さずにその場を後にした。
しかしそれは、なにも狩人狩りに後始末をさせるが為ではない。
こんな事を望んでそうした訳ではないのだ。
【彼女の目覚め】
・狩人狩りとローのやり取りの最中に、気絶していたシュガーが目覚める。
シュガーに「どうなってるの」と細い声で訊ねられたローは、息を詰まらせた。
どうして伝える事が出来ようか。
自分達が守ってきたものが、こんなにも簡単に崩れ去ってしまったことを。
「赤い月が昇り、(シュガーの)能力が解けた者達の多くが獣化している」
「数名の狩人が狩りを進めているが、じきに正気を失った者達も入り乱れることになるだろう」
狩人狩りがありのままの現状を伝え、
「まだ獣化せずに生きてる連中もいる」
「逃げるぞ、シュガー」
ローが生存者を集めて共に撤退しよう、とシュガーへと伝える。
しかしシュガーは、
「だめ。CPのやつが秘儀と…私達の探求を狙ってる」
…と、ここから撤退は出来ないと言い出す。
「そんなもの、くれてやればいい!」
「…だめ。私達は……聖歌隊だから」
「シュガー!」
言い合うローとシュガー。
不抜の意志を見せるシュガーに、焦るロー。
その姿を横に、狩人狩りは血を吸った羽外套を引きずり大勢を整える。
狩人狩りは、彼女は隕鉄より生まれし双刃を構え、嫌な音を立てながら肺に息を深く吸い込む。
「……ここは私が引き受ける」
「シュガー、隙を見て研究室に向かってくれ」
「ロー、お前は早く、狩長殿の示した場所に」
【鴉と星と。成すべきこと】
・先の狩人狩りの言葉の通り、血に酔った狩人が何人も迫ってきている。
彼らは獣性が高まり、限界を超えて膂力を引き上げられた連中だ。
中庭になだれ込んできた血に酔った狩人達は、暴れる獣も未だ戦う狩人達も、孤児院へと逃げ込もうとする子供も見境なく追い立てようとしていた。
こんな状況で戦線に突っ込めば、ローであってもタダでは済まない。
それは、既に負傷している狩人狩りには尚の事で。
「そんな体で何ができる!!!」
「死にてェのか!?」
叫ぶローに、狩人狩りはただ一言、
「"まさか"」
そう答えた。
その声は獣の唸りと狩人共の喚き声の中で、嫌にはっきりとローの耳に届いて。
「あの方の慈悲に触れた夜から、死を望んだことなどあるものか」
苦しげに言葉を吐き出した彼女の、その胸元にはもう、美しい赤色はなく。
彼女が後生大事に身に着けていた"悪い血"を弾くという「銀のブローチ」は再び石を失い、代わりに「慈悲」の名を持つ刃が、捻り込まれた血の赤を鈍く反射している。
それは古工房に残されていたものと同じ、血の性質を武器に付与するコラさんの欠片。
銀のブローチにはめ込まれていた石。
赤い赤い、その石を砕き己の武器に捻り込む。それが彼女にとってどんな意味を持つのかなど、ローは考えたくもなかった。
「死は、たまらなく恐ろしい」
「だからこそ、彼らには私が必要なんだ」
鴉羽の外套を引きずり、彼女は歩む。
「勝手に「恐れ」を失くした連中の為に、お前が死んでやる必要なんてない」
ローは吐き捨てるように言葉を投げるが、それでも彼女の歩みは止まらなかった。
天竜人の末裔でもなければ、"奇跡の医療者"の力で獣化は癒せる。
衝動に任せて仲間を狩るような連中に、命をかけてやるほどの価値があるものか。
そう内心に零すローを知らずか、或いは知りえても尚か。
狩人狩りは、ローの師であった彼女は青白い輸血液を腿に刺して、月のように静かに、笑う。
「…盲目は誰をも獣に変える」
「恐ろしい絶望のなかでもただ、目を開いて歩みたまえ」
嫌だ。とローの心が叫ぶ。
なんでお前もそんな顔で笑うんだ。
「…っ!」
「どいつもこいつも勝手なことばかり言いやがって!おれだって戦える!!」
ローは叫ぶように言葉を吐く。
ローとて無法者として海を渡り、七武海にも昇りつめたのだ。
鬼哭と共に、師である彼女に教わった業で悪夢すら狩ってきたのだ。
あの静かな月の夢で、いとも容易く首を落とされた遠いあの日の自分とは違う。
「ああ知ってるとも」
「お前は既に私より強い」
「だったら…!」
「駄目よ」
狩人狩りに尚も言い詰めようとするローを、シュガーが「駄目」だと遮る。
シュガーは怒りと悲しみの中で尚、強い目をしていた。
「あんたは生き残った職員の人達と、子供達と一緒にここを出て」
シュガーの言葉を聞きながら、ローの心は荒れ乱れる。
分かってるのだ。ローにだって本当は。
輸血液の手持ちもない自分に、今彼女を、狩人狩りを治してやる力も時間もないことも。
あの正気を失くした狩人連中が獣化したとして、「狩り」ならば狩人狩りの彼女のほうがよほど優れていることも。
赤い月の昇る夜に、誰かが生き残りを守らねばならないことも。
「もう行きたまえよ」
「"我ら"とお前の隔たりこそを、あの方は愛したのだから」
目にも留まらぬ速度で狩人達の懐へと潜り込んだ影が、歪んだ双刃を煌かせる。
己の師は、己の師となった彼女はその頃から卓越した"加速"の使い手だった。
血と炎の臭いの中で、凪いだ灰の瞳に光が宿る。
きっと、コラさんもあんな目をしていた。
忌まわしい噂と恐れをこの街に残して眠るあの人も。
あんな目でどうしようもなく人間を殺して、殺して、そして祈っていた。
「来たまえ、諸君」
「鴉羽の狩人の、忌まわしい夜の有り様をご覧に入れよう」
聖堂街上層に、今、鴉羽の双刃が翻る――
素敵な物語をありがとうございます…!
前回に引き続きローに試練が降り注ぎ、遺志が託されておる……
血を吐きそうな思いをしつつ、大変に素晴らしい物語を堪能させて頂きました…!
もうね、皆の死亡フラグがすごぉい…
狩人狩りちゃんもシュガーちゃんも死ぬんか…?死んでしまうんか…?
ワンピ側のネームドもブラボ側のネームドも、そうじゃない人達までバッタバッタと死亡フラグのバーゲンセールで乾いた笑いしか出てこない…!
そうだよここはONE PIECEでありフロム・ソフトウェアなんだよ…人は、死ぬぞ(戒めの心)
こうしてまた託されてローは、この後にウタちゃんと合流するのか…そして孤児院の生き残り達をウタちゃんとエーブリちゃんに託して、月前の湖に…?
狩人狩りちゃんもシュガーちゃんも、信念を覗かせる台詞回しが大変に良き…
ローの「血に酔った狩人達の為なんかに狩人狩りが犠牲になる必要なんて無い」みたいな台詞にゾクリと来てしまったり。
身内びいきな発言かもですけど、でも当たり前の感情だよね。大事な人がさ、大事な人自身を傷つけるような奴らの為になんかしてやることなんてないって思うのは。ローにとって大事なのは狩人狩りちゃんだもの。
彼女達はこのまま、己の信念に殉じローに遺志を託して物語から退場してしまうのだろうか……