真実
先代デボラさん概念あれから11年。配信活動のおかげで私は結構幸せ。
「んーー…」

でも最近はファンの人たちからの海賊の話が気になるようになってきた。どれも酷い話ばかりだけど、別にショックは受けない。海賊のやることなんてあの日、赤髪海賊団が教えてくれたから。家族でも平気で捨てるし……その友達だって平然と!!
「はァ」
1人でほっつき歩いてるから考え事ばっかりになるんだ。帰って作曲でもしよう。他のことを考えなくて済むし。
「?」
「きゅうッ?」
電伝虫だ。目があったこの子、映像が入ってる。
「………?」
何で外に電伝虫が?私とゴードンが持ってるのしかいないはずなのに。
「……」
何が入ってるんだろう?野生の電伝虫だったら映像があるなんておかしいし、中身を見ればわかるかな。
*「この映像を見ている者、聞こえるか!?」
「ッ!?」
*「ウタという少女は危険だ!!」
*「あの子の歌声は!!世界を滅ぼす!!!」
「……!?」
映像の声、怪物の話をしてた。まるであれが私のことみたいに…
「!!!」
そうだ。そうだった…!確かあの時私は!!
「あ……」
エレジアを滅ぼしたのは私。この映像でエレジアが燃えてるのは…
*「うわァアアアア!!」
声の持ち主は怪物に……“私”に殺された。
*「きゅうッ!」ぼてッ
*「……ッ!!」
「ッ!!」ウップ
デボラさんだ。顔からあんなに血を流して…!
*「うゥ…くうッ…!」ズズッ
*「きゅ?」
血だらけの顔でこっちに来る。見える方の目は血走ってて…歯を食いしばってて…怒ってるなんて小さな気持ちじゃない。
*「んゥ……!あァアア…!!」ズリ...ズリ...
手を伸ばして何かを伝えようとしてる。ああ言ってたのを聞いてるし…私だ。絶対私のことだ。
「きゅうッ」ソソクサ
映像はここで終わり。思い出した。確か楽譜が置かれてて、それを私…!
「はァ…!はァ……!!」

あれは私がやったこと。つまりシャンクスは…!!
「———-ッ!!!」
ガタッ!
「ウタ?……外出したみたいだな」

「〜〜〜〜!!!」

気づけば部屋の隅で、物陰にうずくまってた。そのおかげでゴードンには気づかれなかったらしい。
「ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンシャンクス」
わかってたはずなのに。物心ついてた時からずっと一緒だったのに。なのに私はあんなことを忘れて!!!
「〜〜〜〜ッ!!!」
みんなに謝りたい。何もしたくない!もう逃げたい……!!ここから消え…
バサッ
「…?」
何この本。私の部屋にこんなのあったっけ。
【 私はデボラ。しがないギタリストだ。常日頃から各地を旅してギターを奏でる日々を送っている。どこへ行くにしても、特に理由は無い。海風気任せ波任せ、それが旅というものだ。】
これは……デボラさんの日記だ。私に殺された……エレジアでの友達。
「……」
読んじゃダメだよね。こんな人殺しが読んでいいわけがない。でも……読んでみたい。中身が気になる。デボラさんの人生が知りたい。
「…ゴメンナサイ」

(読み進めていく)
「ふ〜〜ん……。…へへ」
デボラさん、そんな理由でエレジアを出たんだ。ちょっと意外。
「すごいなァ」
毎日日記をつけてたんだ。旅先や海での過ごし方とか、海賊に一杯食わせてやったって話とか、本当に旅に慣れてたんだね。憧れちゃう。
「……」
そんな人を…殺しちゃったんだ私。あんな酷いことをして。
【 海賊船が来た。私は一抹の不安を覚えたが、杞憂に終わった。その者たちは物腰穏やかで、しかも小さな娘を連れていた。〜中略〜 その子は生意気なところはあるが、とても優しい心を持っていると感じた。海賊船に乗っているのに何故そんな子になったのか不思議だ。】
「……」
エレジアのページになった。あの時はそう思ってくれたんだね。でもそれは誤解だよ。
【 暇な時間が出来たのか、彼女はまた私のところへ来た。〜中略〜 どうやら『父親』たちからたくさん愛を受けて育ったようだ。昔からそういうのに恵まれなかった私には羨ましい限りだ。〜中略〜 彼女も歌を披露したのだが、たまげたよ。あの子は音楽の神様でも憑いてるのだろうか?】
「違うよ……私は怪物……人殺しの怪物……」

音楽の神様だって。シャンクスも私の歌に「みんなを幸せに出来る」って言ってたっけ。私その歌でエレジアのみんな殺しちゃったんだ。それでシャンクスを信じもしないで。
【 彼女は明日ここを発ってしまうようだ。名残惜しいがそれはお互い様だ。私もすぐにこの船でここを発つから、あの子がどうしようと今後会うことは無いだろう。……いや、あの子も家族たちと冒険してるんだから、どこかで会えることを期待したって良いはずだ。うん、絶対会える。
ただ、せっかく今夜はあの子がパーティーで歌を披露してくれてるのに、それに直接立ち会えないのが残念だ。旅の準備をもっと早く進めておくんだった。】
その船ですぐに出発すれば良かったんだよ。私の歌なんか聴こうとしなければデボラさんは殺されなくて済んだ。
【 くそ、身体がうごかない。声も出ない。気持ちを書き殴ることしか出来ない。『アレ』が出てきてすぐに私はそこへ向かって走った。あの子が心配だったから。そしたら飛んできた瓦礫に当たってこの有様だ。血もすごいし、もう助からないだろう。相棒をもう連れ歩けないなんて残念だ。】
ああ……私なんかを心配して船を降りてたんだ。そのせいであんなことに……!
「———ッ!!」

私が話しかけなきゃ良かったんだ!ちょっとでも仲良くならなきゃ……きっと今だって世界のどこかにいたはずなんだ!!それを出来なくした私を恨んだからこの電伝虫にも…!
「……?」
最後のページになったけど、ここだけ字が汚いし色が赤いしで、目を凝らさなきゃ読めない。もう読みたくないのに、いつの間にかそのページを食い入るように読んだ。
【あの怪物は言い伝えにあった魔王だ 間違いない。ウタはあの楽譜を 歌ってしまったんだ。楽譜は封印されてたはずな のに、誰があの 子のところ に。せっかく歌を 楽しんでたのに台 無しだ 。】
「え…」
何この言い方。恨んでないの?歌ったのは私だよ?
【こんなことをいうやつが いた。 あの子の歌声が世界を滅ぼす ってな。 ふざけるなよお前。 彼女にも 歌声にも 罪は無い。 それをあの 子が聞いて みろ。歌うの
をやめ たら こころが こわれた らどうする。 あの歌ごえはみ みんな をしあ わせに できるんだ。】
あの映像のあと……ってこと?全部聞いてたのにそう思ってくれたの?じゃあ映像で手を伸ばしてたのって…!
「!」
その後にも何か書いてある。涙でまだよく見えないけどシャンクスたちのことだ。
【 あんたに は あ んた を おもって くれて る父 おや たちがいる ど うか しあわ せに なってくれ。こん なことで とまらないでく れ きにするな うんが
わるかっただけ だか(ここで文章は止まった)】
「あ〜〜〜〜!!!!」

何もかも察して、私はみっともなく泣き喚いた。それがゴードンに聞こえないわけが無く、すぐ駆けつけて話を聞いてもらう事になった。