真人♀凌辱孕ませSS 1話『澱』

真人♀凌辱孕ませSS 1話『澱』


――気持ち悪い。気持ち悪い、気持ち悪い。


「真人は俺のこと愛してるよな?」


それは幾度となく繰り返させられた『儀式』だった。

それは問いかけという形を成していながら、俺に許された答えは一つしかなかった。

それはまるで、人間が意思疎通のために築いた文明、言語の意義を冒涜するかのような問いだった。

「……ああ、愛してる」

俺が舌先に乗せた言葉が、ぐずぐずに黒く融けて、俺の魂に澱のように積み重なっていく。

――これをあと何回繰り返させられたら、俺の魂は虎杖の『愛』に穢され尽くして死ぬのだろう。


「はぁ はぁ はぁ」

人間の生ぬるい肌に触れられるのが、こんなに気持ち悪くて不快だなんて、俺は今まで知らなかった。知りたくもなかった。

ヒトのぬめった生殖器官が俺の肉体に入り込んでくる。それは俺達呪いの持たないモノだ。

気色の悪い『愛』なんてものを嘯きながら、その実ただの肉体的な快楽のために、ヒトとヒトがまぐわり、殖えるためのモノ。

それが、俺が俺を虎杖に玩具として与えるために形作った肉の穴に侵入してくる。

その行為をされるのは、まるで剥き出しの魂に爪を立てられ、無遠慮に引っ掻き回されるかのような不快感を常に伴っていた。

「あっ あっ」

俺は虎杖にのしかかられたまま身動ぎすらできない。

深く突き挿れられるのを避けることも、痛みを和らげるために体勢を変えることも、俺の意思では叶わない。

――元の体ならこんな風に力負けすることはなかった。


虎杖はこれ見よがしにしたいのか知らないが、いつも俺の掌を握り、指を絡めてベッドシーツに縫い付けてくる。

掌に触れる感触に、俺の呪いとしての本能はほぼ自動的に、生まれ持った術式を行使したがって焦れる。

――俺の術式はもう使えない。

『無為転変』。俺の生得術式は虎杖との間に結んだ縛りで、自身の命を補償する代償として自分自身の体を虎杖のオモチャに改造したのを最後に失くした。

そもそも術式が使えたところで俺は虎杖の魂には触れられないが。

「あッ、ん」

――あまり上の空でもいられなかった。

今は少しでも目の前のことを考えずにいたかったが、そうもいかない。

反応が悪い時。拒絶する素振りを見せた時。虎杖の気分によって、俺はいつ殴られるか分からない。

痛いのは嫌だ。怖い。

たとえ殺されないと分かっていても。

――この体では痛みに耐えられない。

今の俺は傷をすぐに治すこともできず、長く魂が痛みに苛まれ続ける。

それがどれだけ辛いことかならもう、知っていた。


「――ん、い゛ッ」

思った傍から、だった。

腹の奥を抉る肉棒の先が不意に肉の内壁を引っ掻き、思わず引き攣った悲鳴を喉の奥で鳴らしてしまった。

反射的に身を固める。

悲鳴を上げたら殴られる。痛いのが来る。怖い。

痛いのは嫌だ。怖い。怖い。怖い――!!

虎杖の顔を見ることはできなかった。目の前が滲んでぼやけて見えなくなる。

「ふっ、う……あ、うぅう……!」

殴られる。泣いたら殴られる。そんなことは分かっていた。けれど溢れる涙を止めることができない。

「あ゛ッ」

――痛みが来た。腹の中に。内側から強く抉られた。

「あ゛っ あ゛、あ゛っ」

中を強く突かれる。突かれ続ける。

肉体を苛む苦痛の波が大きくなる。魂が虎杖に圧倒される。押し潰されそうになる。侵食される。穢される。魂が犯される。

だから俺は縋るように、助けを求めるように、この手に触れる掌を握りしめていた。他でもなく俺を凌辱する虎杖に、縋っていた。


――俺はしばらくそうされて、それで、終わった。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

虎杖が身を起こして、それで俺の身体も手首も魂も縛めから解かれ、ベッドの上で仰向けでいるまま、俺は忘れていた呼吸を思い出すように何度も息を吸って吐いた。

――殴られなかった。ただその安堵が全身を包んで、必死に震える息を吐き出した。


「――真人」

「ひっ」

名前を呼ばれ、息が止まる。勘違いの安堵をしたツケを払わされるのだと震え上がった。

「いッ……」

髪を掴み上げられる。乱暴に顔を上げさせられ、そして。

「んっ……!」

――口付けられた。ねっとりと口内を舐られ、舌を絡められる。

拒否したら殴られるのは知っている。正しいのは身を任せること。いや、それだけじゃ足りない。

「ん、んっ」

自ら舌を絡ませ、積極的に、甘えるように口付けを返す。

虎杖の機嫌を取るために、必死になって。下品に虎杖の口の中を舐めた。互いの粘膜を舐り合った。吐き気がした。

「ぷは――」

唇が離される。もう息切れが、ひどかった。

虎杖は――、

「――おやすみ」

そう言って手で俺の髪を掻き回した。

――ああ、やっと、これで、今日は終わりだ。


緊張の糸が切れた。それと同時に、肉体が触覚を正しく思い出したらしい。

冷えた感触。自身の体に視線を落とすと、肉の穴に吐き出された白く濁った欲望――魂の素が垂れて滴っていた。

――本当に、気持ちが悪い。

Report Page