真の記録

真の記録

先代デボラさん概念




あれから11年。配信活動のおかげで私は結構幸せ。


「んーー…」


でも最近はファンの人たちからの海賊の話が気になるようになってきた。どれも酷い話ばかりだけど、別にショックは受けない。海賊のやることなんてあの日、赤髪海賊団が教えてくれたから。家族でも平気で捨てるし……その友達だって平然と!!


「あ」


つい指に力が入っちゃった。紙が破れなくて良かったけど、これ以上書けなさそう。次の紙を使わなきゃ。


「…無い」


ストックが切れたみたい。頭に浮かんでるうちに作詞を済ませたいのに。




ゴードンの部屋に来た。いつも頼めば持ってきてくれるからあると思うけど。


「あ、やっぱりあった」


 バサリ


「ん?」


これって……日記?


【 私はデボラ。しがないギタリストだ。常日頃から各地を旅してギターを奏でる日々を送っている。どこへ行くにしても、特に理由は無い。海風気任せ波任せ、それが旅というものだ。】


これは……デボラさんの日記だ。赤髪海賊団に殺された、エレジアでの友達の。


(読み進めていく)


「面白いな〜」


デボラさん、毎日日記を付けてたんだ。旅先や海での過ごし方とか、海賊に一杯食わせてやったって話とか、本当に旅に慣れてたんだね。憧れちゃう。


【 海賊船が来た。私は一抹の不安を覚えたが、杞憂に終わった。その者たちは物腰穏やかで、しかも小さな娘を連れていた。〜中略〜 その子は生意気なところはあるが、とても優しい心を持っていると感じた。海賊船に乗っているのに何故そんな子になったのか不思議だ。】


「……」


エレジアのページになった。本当に不思議だよね。あんな奴等の船にいたのに、そんな風に言ってくれるみたいに育ったなんて。


【 暇な時間が出来たのか、彼女はまた私のところへ来た。〜中略〜 どうやら『父親』たちからたくさん愛を受けて育ったようだ。昔からそういうのに恵まれなかった私には羨ましい限りだ。〜中略〜 彼女も歌を披露したのだが、たまげたよ。あの子は音楽の神様でも憑いてるのだろうか?】


「そんなんじゃないってば…」


羨ましいだって。あいつらとの日々なんて私は忘れたいよ。全部嘘だったんだから。……すぐにデボラさんもそれがわかっちゃうんだよね。


【 彼女は明日ここを発ってしまうようだ。名残惜しいがそれはお互い様だ。私もすぐにこの船でここを発つから、あの子がどうしようと今後会うことは無いだろう。……いや、あの子も家族たちと冒険してるんだから、どこかで会えることを期待したって良いはずだ。うん、絶対会える。

 ただ、せっかく今夜はあの子がパーティーで歌を披露してくれてるのに、それに直接立ち会えないのが残念だ。旅の準備をもっと早く進めておくんだった。】


「…え?」


デボラさん、船に乗ってたの?でも遺体は確か街の中に……何で?それなら逃げられたんじゃないの?


【最後のページを読んだ】





「……どういうこと?」


魔王?トットムジカ?赤髪海賊団じゃないの?それに『私の歌声が世界を滅ぼす』だなんて…そんな力あるわけ…。


「うーーーん」


いくら外をほっつき歩いてもわかんないし、ゴードンに聞いてみようかな。デボラさんの日記のこと何か知ってるかも。


「?」


「きゅうッ?」


電伝虫だ。目があったこの子、映像が入ってる。


「………!」


もしかしたら、これを見たら意味が分かるのかも。この日記の意味、『世界を滅ぼす』の意味が。


「……」


怖くなってきた。私が見ちゃダメだって、私の勘が言ってる気がする。でも、見なきゃいけない気もする。何か知らなきゃいけないことがあるように思えるから。…よし、見よう。



*「この映像を見ている者、聞こえるか!?」


*「ウタという少女は危険だ!!」


*「あの子の歌声は!!世界を滅ぼす!!!」


映像の声が怪物の話をしてた。まるで私のことみたいに…

「!!!」


そうだ。そうだった…!確かあの時私は!!


「…このことなんだよね?」


思わずデボラさんの日記に話しかけた。きっとこの声のことを書いたんだ。


*「うわァアアアア!!」


怪物の……“私”の手で声の持ち主は殺された。


*「きゅうッ!」ぼてッ


*「……ッ!!」ゾクッ


「ッ!!」ウップ


デボラさんだ。まだ生きてる。顔からあんなに血を流してるのに…!


*「うゥ…くうッ…!」ズズッ

*「きゅ?」


這いずって、手を伸ばして…電伝虫を取ろうとしてる?


*「んゥ……!あァアア…!!」ズリ...ズリ...

*「きゅう!」ビクッ


映像を見ながらもう1度最後のページを読んだ。デボラさんが何をしたかったのか知りたくて。


「きゅうッ」ソソクサ


電伝虫がデボラさんから逃げて映像は終わった。最後の字が荒い部分は、きっとこの後に書いたもの。


【あの怪物は言い伝えにあった魔王だ 間違いない。ウタはあの楽譜を 歌ってしまったんだ。楽譜は封印されてたはずな のに、誰があの 子のところ に。せっかく歌を 楽しんでたのに台 無しだ 。こんなことをいうやつが いた。 あの子の歌声が世界を滅ぼす ってな。 ふざけるなよお前。 彼女にも 歌声にも 罪は無い。 それをあの 子が聞いて みろ。歌うの

 をやめ たら こころが こわれた らどうする。 あの歌ごえはみ みんな をしあ わせに できるんだ。 あんたに は あ んた を おもって くれて る父 おや たちがいる ど うか しあわ せに なってくれ。こん なことで とまらないでく れ きにするな うんが

 わるかっただけ だか(ここで文章は止まった)】


「…………大丈夫」


あんな目に会ったのに、本当のことも知ってたのに、そう思ってくれてたんだ。電伝虫に手を伸ばしてたのも、きっと私がこれを見ないためだ。見たら私が立ち直れないって思ってくれたから…!


「大丈夫…!大丈夫だから…!!」


私平気だよ!ずっと誤解してたのは辛いけど、心を壊したりなんかしないから!もうシャンクスたちを恨まなくて良いんだから!


「私は…赤髪海賊団の音楽家、ウタだよ!!」


シャンクスにこう言いたい。胸を張ってみんなが好きだって伝えたい。ゴードンに話してみよう。全部知ってるって。私は大丈夫だって。

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