百の魔性を殺せ

百の魔性を殺せ


いずれ機構殺しになるビーマの話

一騎打ちが終わった。

……卑怯な手でアイツに勝った。


死にかけているアイツの傍に近づいて皆に向かって宣言する。


「これで戦争は終わりだ!」


戦士たちの歓声が響く。

……しかしすぐに止んだ。


「いいや?まだ終わってないぞ風神の子」


左腿に激痛が走る。

──紫色の異形の腕が俺の左腿を掴みへし折った。


思わず上げかけた悲鳴を殺して武器をその腕の持ち主に向ける。


そこには異形が立っていた。

額には長い二本の角が生え、左腕を中心に紫の鱗で覆われている。

とても人間とは思えない姿だった。

だがこの異形を見て俺は確信した。


こいつはドゥリーヨダナだ。


精神はドゥリーヨダナでは無いかもしれない。

肉体も人間だったアイツとは違う。

でもコレは確かにドゥリーヨダナだった。


「お前」


「……ユッダ?」


声をした方を見る。

アシュヴァッターマンが信じられない者を見る目でドゥリーヨダナを見ていた。


「やあ久しぶりかアシュヴァッターマン。それとついでに風神の子。そして初めまして、カウラヴァとパーンダヴァの皆さんとクリシュナ」


「私は人類殺戮機構・ユッダと申します」


そう言ってドゥリーヨダナは……ユッダと名乗ったそいつは芝居がかった様子で頭を下げた。


「……人類殺戮機構?何を言っているんだ!?」


クリシュナが焦った顔で問う。


「あ?そのまんまの意味だよクリシュナ。……お前も私たちも遅すぎたんだ」


どこからかまるで魔獣のような呻き声が多数響いてくる。


「死者の数はもう少しで足りた。でもチンたらやりすぎたな。大地の女神サマ……プリトヴィー様はお怒りだ。私たちを無理やり起動させて、全ての人類の殺戮という使命に書き換える程にな」


「弟たちも可哀想だよなあ。せっかく人間のまま死ねたのにカリの姿に転生させられて人間を殺戮させられるなんて」


遠くから人の悲鳴が聞こえる。


「まあ要するにだ。世界を救いたくば百の魔性を殺せ。それが貴様らに課せられたグランドオーダーだ」


「じゃあな半神と化身。覚悟が決まったら私たちを殺しに来い」


「……今から私が呼ぶカリたちを全て殺せたらの話だがな」

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