白濁湛える地の朔月
藤丸立香が本を読んでいる。彼が今いるマイルームには、デスクの明かりと常夜灯の微かな光、それと静寂だけが満ちていた。
───そんな静寂を破る、ドアの開閉音。立香は来たか、と思いながら本を閉じ、椅子を回転させて振り返る。
「待ってたよ、美遊」
その言葉に、俯く彼女……美遊・エーデルフェルトこと朔月美遊は幼い身体をびくりと震わせた。
「もしかしたら来ないかもって思ってた。…正直とても嬉しい」
その言葉で顔を上げた美遊は、羞恥に悶えるような表情で立ち上がった立香を睨む。しかし、向けられる赤い瞳からはいまいち棘が感じられない。
「あ、あなたが来いって…! それに、あなたを野放しにしていたらイリヤが…!」
「恋人と愛し合うのはそんなにおかしい?」
立香は低い声で静かに笑いつつ美遊に近づき、赤いミニスカートから覗くすべらかな太腿に手を這わせた。
「っ…! ぁ…」
「緊張してる?」
「そ、そんなこと…!」
そのしどろもどろな反応が、美遊の緊張を雄弁に語ってくれる。立香はそんな美遊を安心させるように口を寄せて囁く。
「今日は、イリヤとクロが部屋の前で見張りをしてくれてるんだ。だから事情を知らない他の人はここに来ない。オレも休暇取ったし、これでじっくりヤっていける」
そう呟きながら、立香が服を脱いでいく。薄手のインナーに隠された逞しい肉体が美遊の視界を専有し、美遊の表情を蕩けさせていく。
…それは、処女を奪われた瞬間を思い出した美遊の身体が、呆気なく発情した証だった。
「ぁ……ぅあ…♥」
「昨日は『激しくされるのが好き』っていっぱい叫んでたけど、多分こういう風にされるのも好きだよね?」
「ぅ、あ…♥」
立香は宝物を扱うような手つきで美遊を抱きしめ、その足を再び撫でていく。手は次第に太腿から尻に移動していき、最後には秘処に触れた。尻の側から秘処に触れるそれが、美遊を否応なく昂ぶらせていった。
男に尻を揉まれている。それどころか愛撫まで。その事実に、美遊の息はどんどん荒くなっていった。美遊の秘処から溢れる蜜は、もう立香も知る所だろう。
…そもそも美遊は、「こんな風にされるのが好きだよね?」という立香の言葉に反論していない。
───つまりはそういうことである。蒼い蝶は、とっくの昔に悪い獣の虜だったのだ。
そんな飛んで火に入る夏の虫そのものの美遊に、立香がキスをする。あまりに自然な形で舌が絡み合う中、美遊の両腕が両腕の背中に回された。二人は、年の差に負けずに愛し合う熱々カップルそのものだった。
「ん…」
「んくっ……ぷはぁっ…♥」
銀色の糸を伴いながら、二人の唇が離れる。だが、これで満足する美遊ではない。美遊はクロ以上、イリヤ未満の性欲を持っていた。
「…“立香お兄ちゃん”。今日もいっぱい、セックスしよ…♥」
和服をはだける美遊がそう告げ、それを聞き届けた立香が彼女をベッドへと誘う。美遊に自分の“愛”を植え付けるために。
───そして数分後。神稚児を産み落とす子宮に真なる主が帰還し、美遊は今度こそ“藤丸美遊”となった。
立香の“愛”が美遊の“愛”と結合し、着床して“愛の結晶”となるまで、後…。