生きる

生きる




 助けられたはずの命だった。

 僕と同じガンダムパイロット。生き方を選べない弱者。理不尽な世界で、なお足掻いて戦っていた、僕とは正反対の人間。

 でも本心では死ぬのが怖いと泣いていた年下の少女・・・ーー僕と同じ。


「生きてていいんだって言ってくれる大人がいたら、違ってたのかな・・・」


 誰かがガンダムなんかに乗るなって、彼女達を逃していたら。

 いいや、逃げて生き延びられるなら、きっとそうしていた。彼女達の前には、初めから一本のレールしか敷かれてなかったのだ。

僕ら強化人士と一緒で。


 この世界は歪で、いつだって僕らに優しくない。どんなに抗っても祈っても何も変わらない。

 だから僕は、ここに、この人の下に戻ってきた。

目の前で死なせてしまった鏡写しみたいな子に、無駄死にだったと思ってほしくないから。


「ねえ、エラン様。世界を変えてみせてよ。僕らみたいな弱者が、理不尽に奪われたりしない世界を見てみたいんだ」


 誰より優れていながら、ペイルという籠に囚われて羽ばたくことすら許されない人。

 テロを起こしてもトップをすげ替えても、どうにもならない世界の仕組みを、この人ならば変えられる。

そう、信じる。


「どういう風の吹き回し?自分だけ生き残れればいいって言ってた人間の言葉とは思えないんだけど」


「・・・逃げてばかりじゃ死んでるのと一緒だって、言われちゃったんだよねぇ」


 僕は生き延びることだけ考えてきた。

人並みの生活なんて夢のまた夢だから、死なないよう立ち回ることに己の心血を注いで、綱渡りみたいな生き方をして。

 けれど、それで手に入れたものってあったかな。

命はある。でも、それしかない。


 もしも必死に足掻いて生きてたら、最初から僕の言葉は彼女に響いたんだろうか。死地に赴く彼女を引き止められただろうか。

 今更遅いって思われるかもしれないけど、進まなきゃ取り零すばかりで、僕の手には何も残らないから。


「だから、僕も力を貸すよ。その代わり、ガンダムの呪いの犠牲になる不幸なやつが、生まれない世界にしてほしい」


 僕はちゃんと生きてるって、彼女に胸を張れるように。

ただ死んでないだけの僕とは、お別れする。


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