現地の協力者②

現地の協力者②


虚圏


 その場の全員を乗せた生物の2倍以上はあろうかという砂の巨人――ルヌガンガが破面達を見て言った。


「今し方“虚夜宮”より侵入者アリとの報が入った。よもやぬしらの如きゴミ虫が侵入者共と通じておろうとは……」


 怒りが収まらない様子で言葉を続ける。


「許せぬ。ぬしらまとめて砂漠の砂にしてくれる!」

「イヤあの違うんス! ネルたつはホント……っ」


 違わないだろう。私達をここまで連れて来たのも、情報を漏らしたのも事実だ。

 星十字騎士団なら「知らなかった」では済まされない。虚圏も同様なのだろう。

 内通を疑われた破面が目に涙を浮かべて両手を振るが、巨人は聞く耳を持たない。

 破面の背後から一護が躍り出た。


「のいてろ」

「へ?」

「月牙……天衝!!!」


 放たれた強烈な一撃は、弧を描いて巨人の頭部を斬り裂いた。

 縦に真っ二つに裂けた砂の上半身を前に「よし!」と一護が肩に斬月を担いだ。

 あんぐりと口を開けた破面達が、一斉に一護を指差して騒ぎ出す。


「あああ〜〜〜!!!」

「イキナリだ! ふいうちだ!! ズルっこだ!!!」

「ワルモノ〜〜〜!!!」


 ワァワァと騒ぐ声に、一護が口を曲げて振り返った。


「ウルセーな、いいだろ助けてやったんだから。大体、真ッ正面から斬ってんだから不意打ちじゃねえ……」

『まだだよ、一護。構えて』


 砂の巨人は真っ二つになったまま崩れる様子がない。銃を構えて見詰めていると、巨人の切断面が引き寄せられるように元の形に戻っていく。


「不意打ちして尚反省無し……侵入者……益々許せぬ!」

「何だよあれ!?」

「あたり前だァ、ルヌガンガ様は砂だもの」

「“砂だもの”じゃねえよ!! あいつオマエらも狙ってんだぞ! のんびり構えてんじゃ……ねェッ!?」


 巨人が振り下ろした拳の衝撃で体が宙に浮いた。かろうじて拳を避けた蛇のような生物は慌てて踵を返す。

 「く……っ」と声を漏らした一護が必死の形相で私達を振り返った。


「くそっ! 何とかなんねえのか!!」


 霊子の炎で滅却すれば、どうとでもなるだろう。だけどあれは侵攻でも使う筈だ。今は出来る限り使いたくない。


「石田!」

「ムリだね。弓じゃ穴があくだけだ」

「チャド!!」

「砂相手じゃムリだと思うが……やってみるか?」

「カワキ!!!」

『彼らを囮にするのは? 私達より地の利がある筈だ』


 私は銃を持つ手とは逆の手で、破面達を指し示した。

 私達の目的は井上さんの救出だ。破面の命は勘定に入れる必要は無い。こうも惰弱で愚鈍では、どうせ長生きしないだろう。

 現地の協力者はまた拾って来ればいい。


「ヒドイ! 人の心が無いスか!?」

「容赦無い! 涼しい顔で何て事を!!」

「怖いでヤンス〜! ワルモノ〜〜!!」

『助け合いだよ。“仲間は助け合え”と父がよく言っていた』

「却下だ却下!!」


 良い案だと思ったけれど、一護は一考の余地すら無く却下を叫んだ。

 お人好しの護衛は骨が折れる。


「逃げるぞ! 作戦タイムだ! とりあえずあいつから離れろ!!」

「バワー! 回れバワー!!!」

「逃 が す か!!!」

「う……おおおおッ!?」

「蟻地獄だ!!」


 すり鉢状に抉れた砂に石田くんが叫ぶ。破面を抱えた一護が「わかってるよ!!」と叫び返した。

 私だけなら撤退出来るけれど――……。


「ネル!! あいつ何か弱点とか無えのかよ!?」

「わわっ……ワルモノに教えるワケにはいかねっス……!」

『話せないのなら口は要らない?』


 使えない者は捨て置いて先に進むべきではないかと思ったけど、私の案は一護には受け入れ難いのだろう。

 一護が破面の頬を抓って怒鳴りつけた。


「アホか!? このままじゃオマエらも砂に呑まれるか、キレたカワキにぶっ飛ばされるぞ!!」

「み……水!! 水っス!!」

「水!? 砂漠で水!?」

「そそ……そっス! 水っス!!」

「そんなもんどこに――」


 万事休すだ。血装と違って、霊子の炎は明確な制限を受けていない。

 一護を生かして帰せなければ、私が処断されるのだ。使うしかない。

 ――そう考えた時のことだった。


「次の舞“白漣”」


 吹き付けた冷気で巨人が凍てつく。修行中に何度も目にしてよく知っている技だ。

 砂丘の向こうから黄土色の外套を纏った人影、見慣れぬ外套の下は黒い死覇装。


「ルキア……! 恋次……!」


 尸魂界はこの件から手を引いた筈。追手か、増援か……。

 私は隠し持ったゼーレシュナイダーの柄に指をかけて、近付く死神達を見遣った。


***

カワキ…「生きるか!? 死ぬか!? 虚・破面混合大センバツ大会」開催原因はコイツかもしれん。他人に厳しく、弱者にはもっと厳しい。命を何だと思っていると言われても仕方がないカスの思考回路。


ネル…カワキへの好感度が謎に高くカワキの膝に乗るチキンレースを開催していた。死神より自分を抱っこしてた女の方が遥かに危険人物だなんて孔明の罠。ここら辺の出来事で人でなしなことは理解した。


【余談】

Q:俺達は一体何だったんだ!!!(byリルトット)

A:仲間だ。我々は仲間同士、助け合い、蘇り、前へ進む。(by陛下)

父親の教育が効いてるカワキ。仲間同士の助け合い=コレ。今後の成長に期待。

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