現パロリーマン

現パロリーマン


・導入だけ

・続きはエロ

・そういう薬はただのイメージです

【二人で過ごす夜にマンネリを感じていませんか?】


 そんな安っぽい売り文句に目を留めてしまったのは、自分がまともな愛し方を知らないと自覚しているからだろう。過去には夫婦となった相手と子供をもうけたこともあるけれど、彼女が亡くなってからはだいぶご無沙汰だった。もう一生誰かと夜を過ごしたいなど思わないだろうと信じていたのに、数ヶ月前ひょんなことから出会った彼とそういう関係になるとはおれも予想していなかった。同性だから快楽は目に見えるが、20も歳の離れた彼が心から満足しているかについてはいささか自信がない。


「たまにならこういうのも悪くねェよな?」


〜〜


「買ってしまった…」


 “大満足間違いなし★★★燃え上がる夜のお供に”という謳い文句が添えられた蛍光ピンクの箱を開ければ、小指ほどの長さの透明な液体が入ったビンが現れる。この手の知識が疎いため店員さんに勧められるままにこれに決めてしまったが、今更パッケージの裏面をひっくり返して馴染みのない成分が並んでいるのを眺めた。断っておくが、カイドウと過ごす夜に不満があるわけではない。口に出すのは小っ恥ずかしいが、私は充分愛されているし満たされていると思う。…だからこそ、不安になるのだ。本来自ら濡れることも受け入れる機能を持たないそこを拓いて彼の太すぎるものを捩じ込むのは大変な労力を要する。真面目な彼が私を気遣ってセーブしているのではないかと思ってしまうのも仕方のないことだろう。

 彼と出会った時のことは昨日のように思い出せる。酔い潰れて私の自宅前に倒れていた男は、格闘家のような体格なのに心根は酷く繊細でとても澄んだ目をしていた。家にあげて世話をしたらすっかり懐かれてしまったが、何があったのかは一向に語らない。私で良ければ相談に乗るとは言っているのだけど「ウォロロロ、お前といる間は他のことは考えたくねェよ」と笑うばかり。

 彼がそれで納得しているなら私が口を挟む権利はないと知りつつ、一人で抱え込みがちなカイドウの本音を聞けるかもしれないと思えばこのくらいの羞恥は安いものだ。


「…これなら気付かれないか?」


 蓋を開けて舐めてみればほんのりと甘苦いが、数滴ならば分からないだろう。玄関の方から音がしたのを確認してカイドウの帰宅に合わせて蒸らしていた茶をカップに注ぐ。1滴でも効果は保証します!と書かれたラベルを半信半疑で眺めながら、常人より頭一つ以上大きな彼を思い描いて両方のカップに5滴ほどを加えた。


〜〜


「お疲れ様。気持ちを安らげるハーブティーを淹れてみたがどうだろう?」

「ただいま。ウォロロロ、さすが気が利く」


 酒じゃねえのか…と少しだけ落胆したけれど、この前深酒をしてドルトンに迷惑をかけたことを思い出して押し黙る。歳若い恋人は事あるごとにおれの体調を心配するので、今日くらいは素直に従ってやるのもいいだろう。茶には詳しくないし好んで飲むこともないが爽やかな鼻に抜ける香りは悪くなかった。


「そうだ、菓子をもらったんだった。お茶請けに出そう。職場のおばあさんなんだが高齢でも元気なご婦人でね…あと梅干しが好きだ」

「おれはあまり甘ェのは…」

「確かクッキーかなんかだったと思う」


 ドルトンがキッチンの方に消えていく、目の前には一口付けただけの湯気の登るティーカップ。

 魔が刺した、というのはこういうことを言うのだろう。おれは買ってきたばかりのものの封を切る。「あれ?ここに置いたような…どこやったかな」と独り言を聞きながら目薬くらいの大きさしかない小瓶を取り出すと、半分ずつをそれぞれのカップに注いだ。

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