現パロ 学パロの未来 十年後

現パロ 学パロの未来 十年後


※前話よりさらに色々ひどいので何でも許せる方向け。

途中の野球描写は適当なので流してください。

誰が誰を好きという描写がありますが、親愛のつもりで書いているのでCP表記はありません。



人物設定


足利尊氏:足利家のグループ会社の社長。

画家としても高い評価を得ていて、テレビに出ることもある。


高師直:尊氏の秘書。気分屋な尊氏を完璧にサポートする出来る漢。


足利直義:検察官。仕事はとても忙しいが充実している。


高師泰:直義の秘書というか護衛。たまに柔道の大会に出場しては優勝している。


新田義貞:関東の某球団に所属するプロ野球選手。

ヒーローインタビューが事故るのをネットの皆に楽しみにされている。


楠木正成:出版社に就職後、推理小説家としてデビュー。

トリックが難解な本格ミステリーを執筆していてマニア受けが凄い。

今回ネタ出しに詰まったので、自分の高校時代の話をモチーフにした

青春小説を出したらプチヒットした。


※正成の書いた小説内容:

転校生の主人公『橘』は学業優秀で読書が好きな女の子。

『橘』は名家の御曹司『桜庭』とひょんなことから親しくなり

その友人でサッカー部のエースストライカー『柳ヶ瀬』に勉強を教えることになる。

タイプが違う二人との楽しい日々に心をときめかせる『橘』だったが、二人にはそれぞれ

別に親しい女の子が居た。『橘』の恋の行方は…?



足利邸にて



楠木「ええと…皆には本当にすまないことをして…」

尊氏「謝ることなんてないぞ、正成。久しぶりに会えて我はとても嬉しいのだ!」

直義「まずは座って乾杯しましょうか」

師直「(でかいため息)」

師泰「ほら兄者も座った座った」



楠木「改めて話をさせてもらうが…」


楠木「この新作小説は高校時代をモデルにしていて…というか

主人公は拙者というアレな小説でござる」

尊氏「読んだらすぐにわかったぞ。この『桜庭』は我っぽいな?と思わず師直に聞いてしまった」

師直「『桜庭』は尊氏様、その幼馴染の『白梅』は直義様、サッカー部の『柳ヶ瀬』は新田、

家庭科部の『杉守』は俺、双子の弟は師泰、そのままではないか。

何故こんなものを書いてしまったのか」

楠木「どうしてもネタが出てこなくてダメ元で出したら、予想外なことに編集が通して

…しかも不思議とヒットしてしまった」

直義「話として面白いからヒットしたのはわかりますよ。

結局どちらとも付き合わないあたり、リアリティもありますよね」

楠木「『キャラ攻略できなかった乙女ゲー』とは散々言われたでござる。

でも実際付き合っていないし?」

師直「付き合うことがあってたまるか…」

師泰「女子はこういう話好きなんだな。散々思わせぶりにしといて何もなしかよ、と思ったが」

楠木「昔から複数の異性との恋愛と失恋話は、鉄板ネタであるから…」

師直「ネタにしても勝手にモデルにするな。しかも性別を変えて恋愛話など失礼にも程がある」

楠木「それは弁解しようのない落ち度でござる。本当にすまぬ」

尊氏「でもこれ正成から見た我だと思うと凄く面白いぞ」

直義「確かに楠木先輩から見た私はこんな感じなのか、と思いましたけどね。

なんかツンツンしていて」

楠木「あ、それはキャラ立ての誇張で。『白梅』はクールなお嬢様キャラなので…というか

登場人物はおおげさにキャラクター化しているので、決して拙者の印象そのものでは

ないでござるよ」

師泰「俺はそんなに出てこねえが、サッカー部になっている以外はわりとそのままだよな」

楠木「師泰殿はそうかもしれん…あと義貞殿も九割本人でござる」

尊氏・直義・師直・師泰「え?」

楠木「え、いやわりとそのままでござろう?」

師泰「うーん?もっとぼやっとしてたような?」

尊氏「確かに怪我をしたとは聞いていたが、ここまで悲壮感あったか?」

師直「こんなに志が高いタイプだっただろうか?」

直義「楠木先輩が勉強を教えるのに苦心していたイメージしかありませんが?」

楠木「物分りの悪さはナーフしているが、部活関連のあれこれは全部そのままで。

あ、でも他の人には話していなかったか…」

尊氏「あれ、何か二人の世界か?ずるいぞ、我も混ざりたかった」

楠木「だって尊氏殿は勉強にすぐ飽きて、どこかに消えていたし」

直義「(その光景がはっきりと想像できる)」

師直「(いつものという感じだ)」

楠木「二人で話す時間が長かったのは確かでござるな。

もしや拙者は、思っていた以上に信頼されていたのかも…?」

師直「その結果、勝手に小説に書かれたのか。新田も気の毒に」

楠木「…返す言葉もない」

尊氏「義貞にも単行本を送ったのか?」

楠木「送ってはいるが多分読んではいないかと。

今までもシーズンが終わってからお礼の手紙をくれていたでござる」

師泰「『柳ヶ瀬』の手紙話は事実ネタだったのか。

今どきスマホを使わないって、どこの古代人だよと」

楠木「視力が落ちたら困るからと、ほとんど使っていなかった」

師直「使い方がわからなかっただけじゃないのか」

直義「では勉強を教える主人公が『字が綺麗だな』と感心するシーンも実際あったのですか」

楠木「義貞殿は意外に字が綺麗だったので」

尊氏「正成は字が汚いものな」

直義「(兄上は人のことを言えません…)」

師泰「え、じゃあ他校の女子から告白されて断るのも?」

楠木「それは女学院の子にラブレターを差し出されているところに出くわしたことがあって。

受取拒否していたのでそんな感じに」

師泰「ええー、あいつそんなにモテていたのか!?」

直義「甲子園に出ていたし、結構知名度はあったのでは」

師泰「そう言われれば?でも全然女っ気なかったがなあ」

楠木「義貞殿はとにかく野球一筋でな。

正直覚悟が決まりすぎていて、昔の武士か何かかな?とは思っていた」

尊氏「スポーツ特待生だったし、野球を頑張っていたのはわかるんだがなあ…」

楠木「体作りのために食事制限をしているところも、早朝にトレーニングしているところも

全部そのままでござるよ」

尊氏「あ、そうか」

直義「どうしました、兄上」

尊氏「いや、『柳ヶ瀬』が甘いものは苦手だが、『杉守』の作るお菓子は美味しいと思うと

語るシーンがあっただろう」

直義「主人公はそれで敗北感を覚えて、という感じでしたね。…敗北感を覚えたのですか?」

楠木「そういうわけではない…」

尊氏「義貞は甘いものが苦手だったか?と違和感があったが、思い出したぞ。

昔大々的な法事があってそこで初めて義貞に会ったのだが」

直義「私は幼稚園の頃でしたか。そんなにしっかりとは覚えていませんが…」

師直「まだ我々が住み込む前の話ですね」

尊氏「そう、まだ師直たちは居なかった。

その法事の時、親戚のお姉さんが我らにお菓子の袋をくれてな。

『お家に帰ってから食べてね』と」

直義「あー普段食べないようなお菓子をもらいましたよね」

尊氏「そのときに義貞が『うちはこういうの禁止だから』と、お菓子袋をそのまま我にくれたのだ」

直義「え、そうだったのですか。それは全然覚えていないです」

尊氏「影でこっそり全部食べたからな。おかげでその日の夕飯が入らなくて…」

直義「兄上…」

尊氏「その時は厳しい家なんだなと思っていたが、今にしてみれば、あれは

単にお菓子が嫌いだったから我に押し付けたのでは、と」

楠木「多分そうでござる。好き嫌いを人には言わないようにしているようで」

師泰「苦手なのに兄者の作ったお菓子は食えたってこと!?マジかー!確かに美味いけどさ」

直義「新田先輩は師直のことをかなり好いていたのだろうか?」

師直「…好かれるような覚えはないのですが」

楠木「義貞殿は師直殿のことを努力家で偉いな、と言っていたござる」

師泰「おお、尊敬されていたんだな、兄者」

師直「…わからん、どういうことだ」

楠木「本人も自覚なしの努力家だから、相通ずるものがあったのかもしれぬなあ」

直義「あ、そろそろ試合始まりますね。テレビをつけましょう」



※お酒片手に野球の試合を観戦。なんやかんや試合も終盤に差し掛かる。


【八回裏ツーアウトながら一塁三塁、一打同点、長打なら逆転のチャンス。打席は四番に回ります。ここで敬遠策はあるでしょうか】

【いやー、勝負でしょうねえ。怖いバッターではありますが、満塁にもしたくないでしょう】

【四番新田、左バッターボックスに入ります。ライトスタンドからの応援の声が一段と大きく響き渡ります】


「すごい歓声でござるなあ…よくこんな中で平静でいられるものだ」


正成は昔の練習試合のことを思い出しながらため息をついた。

満員というわけではない球場でもあれだけの圧を感じたのに、超満員の球場のプレッシャーはどれほどのものか。

画面の中の義貞は鋭い視線をピッチャーに向けている。


「野次もすごいだろうにな。これを十年続けている義貞は本当にメンタルが強い」

「鈍感力というやつでしょうか。そこはちょっと見習いたいものです」


選手の一挙手一投足に球場内がどよめく。

尊氏と直義もグラスを持ったまま、画面に釘付けになっている。


【ファウル!ストレート155km!ピッチャーも熱のこもった投球です。カウントは2-2、次の勝負球は何でしょうか】

【低めの球で空振りを取りたいですね。ファウルで粘られ続けるのは良くないです】

【なるほど、キャッチャーも低めとジェスチャーをしています。セットポジション、第7球投げました!】


大きな打球音がスピーカーから響いた。


【打った、打った、大きいぞ、センター追っていくが足が止まる!入ったー!バックスクリーン直撃の41号!ホームラン王争いを独走する逆転スリーラン!!ピッチャーがっくりと項垂れています!】

【決して甘い球ではなかったんですがねえ。内角低めを上手く拾い上げましたね。これは打ったほうを褒めたいです】

【今ホームイン!新田は笑顔でチームメイトとハイタッチです!】


「うわー、えげつねえ。あそこ打たれたら投げる場所がないじゃねえか」

「正直嫌な選手でござる…何故関西の球団に入ってくれなかったのか…」

「それはくじ運のせいでは」

「監督が当たりを引けていたら良かったのにな」


口々に語り合う面子を尻目に、師直はテレビ画面を見つめていた。

チームメイトから祝福を受ける義貞の笑顔は高校時代と変わりない。

相変わらず何もわかっていないような顔だ。

『…師直はすごいな』

そう言われたことをふと思い出す。

『義貞殿は師直殿のことを努力家で偉いな、と言っていたござる』

何もわかっていなかったはずの義貞は、何故か師直の好きなものをわかっていて、そのくせ自分の好きなものも嫌いなものも、何一つ明かさずに走り去って行った。


【さあ、九回のマウンドに新田が上がります。新時代の二刀流はセーブ王も射程圏、守護神として立ちはだかります!】


「いつ見ても思うが、投球練習だけで肩を作るのおかしくないか?」

「守備は右投げだから、本当にそれだけで温めているのですよね」

「見慣れた光景ではあるが、やっぱりおかしいでござる」

「それで出てくるのが160kmの剛速球だから、相手はたまったもんじゃねえなあ」


テンポよく投げ込まれる球に打者は追い込まれ、あっけなく凡退していく。

ツーアウト、ツーストライク、鋭い白球がキャッチャーミットに吸い込まれ、主審の手が挙がった。


【ゲームセット!!試合終了!!最後は三振に斬って取りました!】


『すごいのはお前のほうだろうに。やはりお前は何もわかっていないバカだ』

師直はぬるくなった酒を一気にあおり、微かに自嘲の笑みを浮かべた。

『…そして俺も何もわかっていなかった訳だ』

怪我で挫折するも、リハビリと地道なトレーニングを重ねて復帰した不屈の選手。

小説を読んだ時は『作話の都合で随分盛ったな』としか思わなかった。

主人公の相手役であったから、そういうキャラクターにしたのだろうとしか。


「そういえば正成、この小説の続きはないのか?」


試合の興奮も冷めやらぬ中、唐突に尊氏が机の上の単行本を指差して言った。

「…続きが読みたいといった感想は来ているが、これで完結でござるよ。

皆を勝手にモデルにしたのが申し訳ないのもあるが…」


正成は目を伏せて一度言葉を切った。しばしの沈黙の後、続きを紡ぐ。


「最初は『ネタがない』から始まって…でもあの頃の皆を思い出すたびに、どんどん筆が進んで形になった。

高校時代が拙者にとって特別だったのは間違いない。

現実とは違う形にしても、その特別感を表現したくてな。

二度と戻れない手の届かないもの、一瞬の幻のような物語。

目指していたところまで辿り着けたかはわからぬが…」


「ふふっ、語りますね」


直義の言葉に正成は照れくさそうに笑う。


「あーもう酔ったかなあ…とにかくこの話はこれで完成しているので、続きは蛇足になってしまうでござる」


【放送席、そしてファンの皆さん、ヒーローインタビューです!本日のヒーローは投打に大活躍、新田義貞選手です!】


騒がしくも懐かしい高校での毎日。

あの今となっては幻のような日々をともに過ごした男は、液晶越しの遠い世界の住人となった。

隣り合っていた道は分かたれて、もうきっと近づくこともないのだろう。


『二度と戻れない手の届かないもの、か』


師直はひとつ息をついた。

テレビの画面は光が溢れ、酷く眩しかった。




おしまい


※だが蛇足が襲いかかる…

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