現パロ 学パロ 十年後 蛇足はまだ続く

現パロ 学パロ 十年後 蛇足はまだ続く


※会話劇+SS。なんでも許せる方だけどうぞ。

新田殿の弟捏造があります。

だんだん収集がつかなくなってきた。





数週間後、足利邸。



楠木「ああ…本当に集まることになるとは…」

新田「正成も久しぶりだな!会えてうれしいぞ!」

楠木「いや、どうやって連絡を取ったでござるか…?」

尊氏「知り合いのつてを色々駆使して練習中の球場に潜り込んだ」

新田「後輩が『あそこに凄いイケメンが居ますけど、俳優ですかね?』と言うから

見たら尊氏だった。あれは驚いたな!」

尊氏「義貞の目が良くて良かった。それで手紙を渡して連絡を取れるようにしたわけだ」

楠木「まだ、CSと日本シリーズもあるのにいいのだろうか…」

新田「全然構わないぞ。うちのチームは日程に余裕があるしな」

直義「グッズも頂いてしまって申し訳ありません。買い取るつもりだったのですが」

新田「ああ、いつも貰うんだが実家に送るの以外はしまいっぱなしだから。

欲しいやつのところに行ったほうがいいだろう」

直義「このこどもの日の限定版いいですよね。兜甲冑と二本の刀で本当に『二刀流』で」

楠木「(昔こういう犬の漫画があったような気が)」

師泰「前に犬絡みで週刊誌に撮られてたよな」

直義「ありましたね。『衝撃の現場、まさかの対面』て何かと思ったら」

尊氏「ロードワーク中に散歩のハスキー犬を撫でさせてもらっている所だったな」

新田「あの犬おとなしくて可愛かったぞ」

楠木「スター選手は大変でござるな…」

尊氏「あ、それでな、義貞。今日呼び出したのは訳があって…正成の新刊は読んできたか?」

新田「? 読んだぞ。いつものより難しくなくて読みやすかった」

楠木「…感想はあるだろうか?」

新田「色々あったのに結局付き合わないんだな、と」

師直「師泰と同じようなことを…」

楠木「ほ、他には?」

新田「他?ああ、この『柳ヶ瀬』って奴は俺みたいな境遇だと思った」

楠木「あー、大変に申し訳ないのだが、そのキャラは義貞殿を参考にしていて…

高校のときに聞いた話を勝手に書いたでござる。本当にすまない」

新田「? 別に謝ることはないぞ。特に何とも思わないし」

尊氏「…義貞はその『柳ヶ瀬』が主人公と『杉守』と、どちらと付き合うと思う?」

新田「? どちらとも付き合っていなかっただろう」

尊氏「いや、もしこの小説に続編があって、どちらかと付き合うとなったら…」

新田「? 『柳ヶ瀬』はサッカーのことしか考えていないから、どちらとも付き合わないのでは」

楠木「そう、それ、正解!!」

師泰「うわ、いきなり盛り上がりだした」

楠木「義貞殿は高校時代、何度も何度も教えても現国を理解してくれなくて…

どうしたら理解してもらえるか死ぬほど考えたでござる」

尊氏「結局あきらめていなかったか?」

楠木「あきらめてテスト問題を予測してその答えを丸暗記させたでござる。

それでなんとかしのいだが…」

直義「…思った以上に苦労していたのですね」

楠木「でもようやく、理解してくれるようになったでござるな」

師直「(本人だからわかるだけではないのか)」

新田「正成の本を読んで少しだけわかるようになったぞ。

普段の本はすごく難しくて、読むと熱が出るが」

師泰「普段のはマジで難しすぎるんだよ。というか基本的に主人公が皆頭良すぎる…」

楠木「そ、そうでござるか?」

師直「(自分基準で書いているのだろうな…)」

尊氏「え、ええ…では我だけが選ぶのか…?

正成は大切だし、直義は愛する分身だし、いやそもそも師直もな…」

新田「? 尊氏は何の話をしているんだ?」

直義「まあまあ、少し放っておきましょう。

せっかく新田先輩が来てくれたのですから、球界の話を聞きたいです」

楠木「そうでござるな。交友関係とかも色々」

新田「交友…今年のオールスターのときに〇〇と△△と連絡先交換したな」

楠木「あ、あの関西の球団の!?」

直義「でも新田先輩はスマホを使わないのでは?」

新田「メールとかは苦手だが、電話はする。メールはいつも弟に管理を頼んでいて」

直義「ああ、弟さん実業団に入ってましたよね」

師泰「大学生の時の箱根駅伝皆で見てたぞ。すげえよな、山登り」

新田「あいつは昔から箱根走りたいって言っていたからな」

楠木「それを実現させるのが凄いところでござる」

直義「選手同士で試合の話はするのですか?起用法とか采配について」

新田「するぞ。飲み会をするとだいたい最終的に愚痴大会に…」



※なんやかんやプロの世界の話を楽しく聞けました。



「はあ、わかってはいたが、プロの世界は大変でござるなあ…」


感慨深げな正成の言葉に、直義が笑う。


「楠木先輩だってプロじゃないですか」

「拙者は対戦相手とか居ないし…強いて言うなら編集が対戦相手だろうか」


プロットを却下された時を思い起こして、正成は軽い胃のむかつきを覚えた。

今回出した本は思った以上に売れてはいるが、もともとの路線とはまったく違う。

今更本格的な恋愛路線に舵を切れないだろうし、相変わらずネタ不足の危機は続いていた。

トリックに関するアイデアはまだあるが、根本のストーリーラインが決まらない。


「うーん、もうこの際、全部欲しい…欲しい…」

「なんだか尊氏殿が処理落ちしてはおらぬか?」


虚ろな表情でぶつぶつと呟く尊氏に、直義が耳元で声をかけた。


「兄上!起きてください!」

「はっ!…あれ、我は何をしていたんだったか」


直義の呼びかけに驚いた様子で、辺りを見回した尊氏が首を傾げる。


「皆が集まったからって飲みすぎなんですよ。水をどうぞ」

「??そんなに飲んだだろうか?」


直義からグラスを受け取る尊氏の様子に苦笑して、正成ははたと気づいた。


『今聞いた野球の話…そしてこの仲のいい兄弟…』


「あ、これだ!」


脳内に電流が走ったように、アイデアが湧き出てくる。

正成は慌てて手帳を取り出して、浮かんできた断片を記していった。


「それはネタ帳か。何か思いついたのか?」

「思いついた。次の話はプロ野球もので…」


さらさらと文字を記していた手を止め、尊氏と直義を見やる。


「本当に申し訳ないのだが、またモデルにしたいでござる」

「おい、楠木。あまり調子に乗るな」


殺気を出して睨みつけてくる師直に、慌ててぺこぺこ頭を下げながら正成は弁解した。


「いや、今度は恋愛とかそういうのではないでござる。いつもの推理小説で」

「我は別に構わないが、どういった話なんだ?」


正成は手帳の文字をペンで叩き、尊氏たちに示す。


「プロ野球のオールスターゲームで起こった密室殺人。主人公は直義殿」

「わぁ本当に字が汚い…えっ私!?」


直義がぎょっとしたように驚きの声を上げる。


「そうでござる。

直義殿は技巧派のピッチャーで同じ球団に兄の尊氏殿も野手で所属している。

イケメン兄弟として人気の二人はオールスターゲームに選出されて出場するのだが、

そこで密室殺人事件が起こる。それを解決していく話でござる」

「探偵役が直義か、ぴったりじゃないか。普段の仕事とも近いだろう」

「え、ええ…確かに捜査はしますけれど…」


興奮気味に語る正成の説明に尊氏はうんうんと頷き、直義は困惑している。


「あくまでモデルなので表面的な要素だけ拾わせてもらいたいでござる。

尊氏殿と仲が良いとか、頭脳的なプレーが得意だとか。駄目だろうか?」

「まあ、そのくらいなら構いませんが…」


許可が出たことに喜び、正成は手帳のページをめくった。

直義をイメージしたキャラクター設定をさらさらと記していく。

モデルが居るというだけでこんなにも楽に進むとは。


『知的クールで弟属性。それと…』


膝の上に『新田犬』のぬいぐるみを乗せた直義を見てうっすら笑みが漏れる。


『かわいいもの好き。これは『白梅』よりあざといキャラになりそう』


「そうだ、どうせならまた皆を出せばいい。選手として」

「尊氏様!」


声を荒げる師直を、尊氏がひらひらと手を振って宥める。


「いいじゃないか、師直。プロ野球選手なら格好いいし」

「そういう問題では…」

「義貞と師泰もいいだろう?正成の小説のモデル」


二人で話していた様子の義貞と師泰が振り返りこちらを見る。


「? そうだな、俺は構わないぞ」

「俺も別にいいぜ。自分由来のキャラって結構面白いよな」

「お前たちは…」


返ってきた反応に師直が大きなため息をついた。


「師直もいいよな?」

「…構いませんが…」


尊氏が、これで大分ネタになるだろう?と笑う。

本当に嫌そうな顔をした師直が正成を睨みつけた。


「作中で尊氏様や直義様を酷い目に遭わせたら承知せんぞ。

事件の巻き添えになるなどはもってのほかだ。

もし扱いに至らぬところがあったら、命はないと思え」

「肝に銘じるでござる。拙者も被害者にはなりたくない」


肩をすくめ、正成はキャラクター設定を書き連ねていった。



※新作小説の設定を考えてみよう!



楠木「尊氏殿はサードで…せっかくだし拙者も出そうかな。

昔の練習試合だとライトだったがどうしようか」

直義「楠木先輩はセカンドじゃないですか。頭脳的なポジションですし」

尊氏「隠し球を決めてそうだな」

楠木「お、いいでござるな。トリックプレーが得意な曲者で」

直義「きっと前作の読者は、あの純情な主人公とこのキャラのモデルが一緒とは

夢にも思わないのでしょうね」

楠木「それは言ってはいけないことでござるよ…」

尊氏「義貞は普通の外野手か」

楠木「流石にスイッチヒッターで二刀流にはできないのでな。

そうだ、ちょっと古風な武士っぽいキャラにしよう。

黙々とトレーニングを重ねる一匹狼のベテラン。

真っ向勝負が好きなので隠し球とかしちゃう拙者を快く思っていない。

拙者の方も『頭が固いな』と苦手意識を持っている」

直義「仲を悪くするんですか…と思いましたがライバル球団の選手ですものね。

オールスターだし」

楠木「学園ものだと皆仲が良くてもいいが、野球選手だと普段は敵であるからなあ」

尊氏「選手同士の仲が悪いのは昔の球界ぽい気がするな」

楠木「そうでござるな、時代設定を昔にしよう。携帯電話もなくて丁度いい」

直義「携帯電話はミステリーの大敵ですよね」

楠木「便利なことはもちろんあるが、クローズド・サークルを自然に作るのが本当に

難しくなった…あ、でも昔だと皆ヤクザな感じで仲の悪さがガチかもしれぬな」

尊氏「我は創作でも正成と仲が悪いのは嫌だぞ」

楠木「ええ…じゃあ尊氏殿はなぜか拙者を慕ってくれている感じに」

直義「兄上のキャラはあまり練習はしないけれど、成績はいいのだろうな…」

楠木「直義殿を真面目ないい子にしたいから、それとの対比でちょっと不真面目に…遊び好き

にしようかな。飲み歩いているところを週刊誌に撮られちゃうような。

だとするとやっぱり義貞殿とは相性が悪いか」

尊氏「師直は器用だし内野も外野もできそうだな。料理が特技だろうか」

直義「言葉がきつくてたまに問題になるとか」

楠木「料理が上手いは時代を考えるとかなり意外性があるかも。性格を傲岸不遜にすれば

なおさら。ここも昔らしく遊び好きにして…尊氏殿よりさらに派手な感じに」

尊氏「たまに我と一緒に遊んでいるのかもな」

直義「主人公はそれを不安に思っているのかもしれませんね。大丈夫かな、と」

楠木「じゃあ直義殿と因縁もつけよう。

以前デッドボールで乱闘寸前になってしまったことがある」

直義「ギスギスな関係になって来ましたね…」

楠木「師泰殿は豪快なパワーヒッターでファースト、ちょっと喧嘩っ早い。

師直殿と飲み仲間にしよう」

尊氏「試合前にも酒を飲んでいるとか昔ならありそうだな」

直義「酒癖が悪くて警察沙汰…とか。実際は泣き上戸よりなのですが」

楠木「柔道の心得があって相手を投げ飛ばすとかいいかもしれぬな」

直義「昔はやらかしても表沙汰になりにくかったから、結構際どいことが起きてそうですね」

楠木「確かに今より闇に葬られた事件は多いのだろうなあ。

でもそんな爛れきった球界にちょっと引きながら、頑張るのが主人公でござる。

球威はそんなにないが、抜群のコントロールと相手の戦術を読む頭脳で戦う直義殿。

同じ球団の兄の奔放な行動に頭を悩ませているしっかり者の弟。イケメンで女性人気が高い」

直義「少し照れくさいですね」

楠木「で、その兄の尊氏殿もイケメンで人気のある有力選手。練習嫌いで遊び好きだけど

弟思い。直義殿がピンチになるとすぐサードからマウンドに駆けつけてくる」

尊氏「結構実際の我に近そうだな」

楠木「オールスターの試合開始前に起こった殺人事件、容疑者として

ほぼ軟禁状態になる選手たち、一触即発のギスギス感の中、主人公は兄とともに

トリックに挑み、他の選手たちと親交を深めながら解決すると。

これはいける。間違いないでござるな!」




まだつづく

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